第10話 大人達の話し合いとコントロール
今回は前回より少しだけ早く更新できました。
是非読んで下さい。
シンやスコールが暮らす屋敷の中を三人の男性が歩いていた。ティーダ、クルド、ジェードだ。
三人は、とある部屋の前で立ち止まった。その部屋の上には『応接室』と書かれていた。
「クルド様、ジェードさん。旦那様達はこの部屋でお待ちになっています」
「ああ。行くぞ、ジェード」
「はっ」
ティーダが扉を開けると、中にはレオンハルト、レナ、マリアの三人がいた。
レオンハルトとレナが椅子に座り、マリアがその後ろに立っている。
「よく来てくれた、二人とも。さ、席に着いてくれ」
レオンハルトは二人が来たのを確認すると、自分の反対側の椅子を勧めた。
「すまないな」
クルドはそう言うと、勧められた席に座った。しかし、ジェードの方はクルドの後ろに立ったままでいた。
「おい、ジェード…」
「何か?」
「いや、別に良いけどよ」
レオンハルト側が同じ状態なので、クルドもそこまで言うことは無かった。
そして、扉を閉めたティーダがレオンハルトの後ろに来たところで、クルドが口を開いた。
「さて、と。全員揃った所で……。早速本題に入らせてもらうぞ」
その雰囲気は先程までの優しげな大人ではなく、厳つい空気を醸し出していた。クルドは懐から一通の手紙を取り出すと、
「昨日、ここから帰ってきた娘から渡されたこの手紙を見たときはビックリしたぜ。何せいきなり『明日、屋敷に来てくれ。』から始まってたからな。だけど、その後の文面を見て理由が何となく分かった。で、だ……」
クルドは、そこで一呼吸置くと、
「この手紙に書かれている事は本当なのか?」
レオンハルト達に向け、そう訊いた。
「ええ。全て本当の事です」
質問に答えたのは、ティーダだった。ティーダは質問に戸惑う事もなくそう答えたのだった。
「そうかよ……」
「しかし、信じられませんね。魔力量が測定不能(EX)で、それに八属性の魔法を扱えるようになるなんて。そんな馬鹿な事が出来る者は歴史上では……」
「千年前に起こった人魔大戦時に現れた、通称『無名英雄』か…」
「だけど、それは……!」
「おとぎ話…、だって話だろ」
声を荒らげたマリアの言葉に、レオンハルトが冷静に繋げた。
少し待ち、マリアも落ち着いたので、話が再開された。
「確かに、千年前、人間と魔人族が中心となり、他の種族をも巻き込んだ大規模な戦争である人魔大戦を収めるのに活躍した完全無欠、最強無敵のヒーロー。っていう話を俺も何度か聞いた事がある」
「しかし、その話は幾つもある。真っ白なローブを被った男だとか、反対に黒いローブを被っているとか、荘厳な鎧を纏った美少女とか、逆にきらびやかなドレスだったとか、色々な話が出ている。それこそ、国や地域毎に違っているからそれら全部を把握するのは、絶対に無理だと思う」
ティーダはそう言いながらやれやれと首を横に振った。
「そして、その多くの話の中で共通しているのが…」
「無限に近い魔力を保有している事と、多彩な属性の魔法を使っていた事ですね」
ジェードの言葉にレナが続けた。
「………そう言えば、レオン達の方は人魔大戦についてどこまで教えたんだ?」
少し何かを考える素振りをしていたクルドが唐突に質問した。
「え?う~ん、と。確か………、人魔大戦が起きた事位しか教えて無かったはずよ」
マリアは質問に思い出し答えた。
「どうしたんだ?急にそんな事を聞いてくるなんて」
レオンハルトは質問してきたクルドに逆に訊き返した。
「いや、何て言うかさ…。あのシンって子いるじゃん。あの子、少し気になるんだよな」
「気になる?」
「どう、気になるのですか?」
「いや…、あの子、子供っぽく無いんだよ。どちらかと言うと大人が子供になって無理矢理子供っぽく見せようとして奮闘している、ってのが近いって感じだな」
「ああ、成る程ね」
「ふむ、先程会った位でしか判断出来ませんが、クルド様がそう言うのなら、そうなのでしょう」
「良い例えだと思います」
「「??」」
クルドの例えに、男性陣は納得した様子だったが、女性陣はよく分かってないようだ。
「どういう意味なのでしょうか?マリア」
「さあ?私もよくは分かりません」
「あ~。こっちの二人には後で俺とティーダが言っておくから」
「頼む」
そんな二人に男性陣はやれやれと首を振った。
「つまりは、だ。あの子達にこの事を聞かれたら、よからぬ妄想を持っちまう可能性がある。そんな訳で『無名英雄』の事はなるべく伏せて、そう言う奴が居たって事だけ教えておけばいいって話だよ」
「まあ、一理あると思うが…」
「そんなに警戒しなくても大丈夫だと思いますよ。現にほら。今だって子供達で仲良くやっているようですし」
ティーダが外に耳を傾けるように促すと、外からは子供達の元気な声が聴こえてくる。
「むう。そうだろうか……」
「そうですよ。そう言えば、さっきから一体何をやって遊んで………!!」
ティーダが気になって庭の方の窓を開けた。すると、ティーダは何かを見て驚き固まってしまった。
「どうした?」
固まったままのティーダを不審に思ったジェードが尋ねた。
「い、いや…。取り敢えず外を見てくれ……」
「何だ?一体何があると……!」
ティーダに促されてジェードが外を見ると、ジェードもティーダと同様に驚き固まった。
「ジェードまで。一体どうした!」
「何が見えたんだ。ティーダ」
クルドとレオンハルトが二人の様子を見て怪訝な顔になった。そして、窓の前に行き、ティーダ達が見ている場所を見ると、
「………!」
「おいおい。何の冗談だよこれ…」
ティーダ達と同じような状態になった。
「あなた…?」
「旦那様まで……。あなた、一体何を見たと言うの?」
窓の外を見て固まった四人に対してレナとマリアが訊いた。
「いや…、これは見てもらった方が早い」
そう言うと、レオンハルトは自分達が見ていた方向を指差した。
女性陣その方向を見ると、
「な……。何ですって…!」
「はい!?」
二人も例に漏れず驚いた。しかも声を荒らげてだ。
六人は外に何を見てしまったのだろうか。
それは、時間を少し戻さなければならない。
◆◆
「ふ~む。それじゃ、何をしようか」
「そうですわね…」
「いざ自分で考えるとなると、何をするのか迷いますね」
「そうだな」
俺達は父さん達と別れた後、庭で何をしようか会議をしていた。まあ、実際は会議なんて大仰な物じゃないんだけど。
俺達はどうしようかと考えていると、
「よし!」
「おや?どうかしたのですか?スコール様」
スコール様が突然立ち上がった。
「魔法の練習をするぞ!」
「スコール様。ですから何の練習をするかを考えていたのですけれど…」
スコール様と俺達の考えていることは数段違っていた。
「あ、そっか。う~ん。んじゃ、取り敢えず他の属性のボール系をやってみようぜ」
「他の属性…ですの?」
「ああ」
首をかしげたエリザ様にスコール様は勢いよく頷いた。
「でも、私達はまだ『火』の属性しか教わってません。それに五大属性ならともかく、派生属性や二極属性は難しくはないのですか?」
そうなのだ。前に母さんに教わったのだが、魔法は属性毎に取得難易度が異なるのだ。一番取得しやすいのが、五大属性、その次に派生属性、そして一番難しいのが二極属性という訳だ。その難易度が高くなるに連れて消費する魔力も多くなるのだ。
「んー。大丈夫じゃないか?」
「そんなあっからかんと…」
明らかに何も考えてなさそうなスコール様の様子に俺はため息をついた。
「と、言うわけでシン。頼む」
「そして私任せなのですね!……はぁ、分かりました。やってみます」
「おう!頼む。出来たら木とシンが使えない闇以外の全部の属性をやってみてくれ」
「はぁ…。無茶な事を言わないで下さい。一応やってみますけど…」
「やってはみるのだな!」
アデリナさんのツッコミが入った。が、まあ、気にする必要もないだろう。しかし、全属性をか。やってはみるけど上手くいくか分からないな。実際、ファイアボールは直前に見本を見せてもらっていたから出来ていたが、見たこともない魔法を急に使うなんて、そんなゲームみたいな……。
「あ!」
「ん?どうかしたのか。変な声を出して」
「い、いや、何でもありません」
そうだった。俺には前世の知識があるじゃないか。すっかり忘れてた。前世で見た漫画やアニメ、それにやったゲームをイメージすれば、魔法の取得なんて簡単じゃないか。だけど、全部出すとなると、相当な集中力が必要になるな。さて、どうやって保つか。
そこで、俺の頭にまた一つ思い出される光景があった。それは昨日の夢だった。
そうだ。座禅だ。昨日の夢でやっていた座禅があるじゃないか。
確か夢では、精神力と集中力を鍛える為にやっていた。つまり、集中力を使うこれにはうってつけって訳だ。
やることが決まったら、後は実践するだけだ。
俺は夢の中でやっていたみたいに早速地面に座り、座禅の態勢に入った。
「あら。シンさんが今度は地面に座りましたわ」
「何をしているのだろうか」
「きっと何か良い方法があるんだろ。取り敢えず様子を見てみようぜ」
思い出せ。俺が前世で見ていたものを。アニメや漫画の登場人物達が魔法等をどんな風に出していたのか。ゲームのキャラクターを操作するときのエフェクトを。
俺は先ず最初にファイアボールをイメージした。これは一度やったので簡単だった。次にファイアボールの水版、ウォーターボールをイメージした。正直言って、何本ものアニメやゲームを見たことを思い出した今の俺にとっては魔法のイメージなんかは簡単な事だ。俺はイメージの中でファイアボールの近くにウォーターボールを出現させた。その調子で土、風、と五大属性をきちんとイメージし、次いで氷、雷の派生属性のボールもイメージ出来た。最後の二極属性は俺の適性の光のライトボールのイメージを出現させた。
そして、最後にそれらを表に出す。射出するのではなく、展開して浮かび上がらせるだけだ。
「出てくれ。ファイア、ウォーター、アース、ウインド、アイス、サンダー、ライトボール!」
その瞬間、俺が唱えた順に魔法が出てきた。全てが掌サイズで、俺の周囲に展開された。正しく、俺のイメージ通りだった。
「おお。出てきた。しかも、本当にほぼ全部の属性を出すなんて」
「おおぅ……!?」
「すごく綺麗です」(パチパチ)
スコール様が興奮した声を上げて、アデリナさんが驚きの声で、エリザ様は感動の拍手をしていた。
「おお。これを俺が出したのか……」
俺も自分の出した七個の魔法を見て思わず素の状態の声を出してしまった。
「俺?」
「あ、い、いや…。何でもありません」
「…まあ、いいか」
スコール様に不審がられたが、すぐに注意が魔法の方にいったので、特に追及される事は無かった。ふう…危なかった。
「よし!じゃあ次は俺がやってみるか」
「大丈夫ですの?スコール様」
「これは結構な集中力と想像力が必要になりますよ。そう簡単に出来る物では…」
「大丈夫大丈夫。シンの見本があるし、闇のボールは自分で想像出来ると思うし、集中力は気合いで何とかするさ」
気合いで何とかなるものじゃないと思うけど。だけど、スコール様なら気合いで何とかなる気がする。何故か分からないけど、確信めいたものを感じる。
「さてと。んじゃあ……」
スコール様は立ったまま手を前に伸ばし、目を閉じた。
そして、
「出てこい。ファイア、ウォーター、アース、ウインド、アイス、サンダー、ダークボール!!」
スコール様が唱えると、スコール様の周囲に俺のとほぼ同じ色のボールが七個出た。違うのは、俺の白のライトボールの所が黒のダークボールになっているところだけだ。
「ハァ……。どうだ。凄いだろう」
「凄いですわ」
「シンとほぼ同じ…」
「凄いです」
どんな所が凄いって、いくら俺が先に魔法を出していたとしても、俺のように事前情報も無しにここまで出来るのが凄い。恐らく、スコール様は俺以上に魔法のセンスがあるのだろう。
「さらに…!」
スコール様はそこから手を真上に挙げた。すると、スコール様の展開した七個の魔法が上空に昇り、
「ハア!」
両手を勢いよく降り下ろすと、七個の魔法が縦横無尽に動き回り始めたのだ。その一つ一つが高速で動いている。しかも、どれも一度も他の魔法に当たっていない。
「どうだ!さっき出す時に考えたんだ」
「成る程。こういうのも有りですか。では私も…」
そして、俺はスコール様がやった事を早速試してみた。
先ずは、俺の出した魔法を上空に昇らせた。その後、それら一つ一つを動かしてみた。
(こ、これは……。予想以上に難しいぞ。操るのだけでも相当な集中力が必要だ)
俺は動かしながら、そんな事を考えていた。実際、難しいのだ。動かすのだけでも神経を使うのに、それ以上に魔法が他の魔法に当たらないようにするのが面倒だ。
だが、それでも数分動かしている内に慣れてきた。驚くべきは、俺の順応能力ってか。
そして、慣れてきたついでに隣で操っているスコール様に気になる事を訊いてみた。
「スコール様。私はこれ等を計算して操っているのですが、スコール様はどのようにして動かしているのですか?」
「ん?勘だよ」
「勘…ですか」
あれを全部勘でやっているのか。恐ろしいな。
「あの……、お嬢様。勘で動かしているスコール様も凄いのですが、全て計算しているシンも相当なのではないでしょうか」
「ふふ。そうですわね。本当に面白い方達です」
後ろでやっている会話を聞きながらも、俺達は魔法を動かしていた。
ありがとうございました。
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