人魚姫
さざなみの音が耳に響く
寄ってく波は偽物で固めた人じゃない私を意識させる
海で泳いでいたことを思い出したら砂を踏みしめて進めない
こんなにつらいならいっそ
こんなにいとおしいからもう
私を泡にしてしまってよ
どこの“ヒメ”もシアワセの在り処を知り
そのフェロモンを追いかけるように
必然のようにそこへ向かうのに
私にはそれがわからず
ただ音も発せずただ立ちつくす
知っているよ
この私の魂の向く先を
わかっているよ
私、あなたから淘汰されるの
だって私は道具の使い方も知らないから
このナイフは突きさせない
ねぇ
もう私を泡にしてしまって
嗚咽も何も音は私の体からは出ずに
ただ
さざなみの音が
さざなみの、おとが、ひびく