二話 勇者様は女!?
見えるようになった(らしい)私の容姿を見て誰もが驚いた。
そうかそうか。私はそんなに魅力がないか。その目をくりぬいてやろうか。
「まぁ良い、勇者美麗。いや、ミレア。これからはそう名乗るがいい。」
見知らぬおっさんに名付けされました。…はぁ?って感じです。
ミレア…なんか綺麗だから良しとしよう。両親からもらった名前、美麗と対して変わらないだろうし。
それより。
「あの、ここは何処ですか?」
私がそう話し掛けると大臣であろう人達が目を飛び出でるよと言いたくなるくらい目を見開いて驚く。
すると、顔のよく似たアフロへアーのおばさん達が私に近付き両手を片方ずつ握られた。え、なに?
「まぁまぁ、ミレア様。勇者は代々この世界の記憶が宿ってるものですがね?」
「あらあら、ミレア様。貴女の場合、稀に見る記憶喪失で来てしまったんだわ。」
可哀想に、可哀想に、と私に苺とレモン味のキャンデーを渡してくる。
え、アメちゃんじゃないの?
取り合えず苺味から口に放り、国王様を見る。あ、フランってやつに流した。
「うーん…まっその内思い出すでしょ。ミレアを自室に送り届けてあげてよジョシュア、ルイズ。」
フランが素っ気なく先程の美少女、美青年に命令した。
美男美女に命令していいのはイケメンに限るんだぞ!…思えばフランも中々でした。
「さ、ミレア様。自室に向かいましょう。」
「私達が案内しますー。」
「あ、どうもー。」
二人に差し出された手を握り、歩き出すが一人の鋭い剣のような蹴り足によって妨害された。
流石は王家に従う使用人。蹴り足を交わした。私も勘がいいし、反射神経もそれなりにある。
ふっふっふ、お手叩き女王とは私の事だ!(お手叩きとは、じゃんけんをし、机にそれぞれの手を二番目に勝った順から置いて、最終的に一番目の勝者が隙を見て叩く遊び)
「ほぅ、俺の十分の五威力の蹴りを避けるとは。」
なんじゃこいつ。白く上品な服を着た、赤茶色の髪に緑の目をしたこちらも美少年が嘲笑うように私に笑う。
なんじゃこいつ。(二回目)
「なんですか、暴君さん。私に何か恨みでも?」
「ぼっ暴君!?失礼な事を言うな。俺はこの国、アレンデスタード王国第一王子だ!」
「だ、第一王子ですってぇ!?」
私は大袈裟に驚き、王子をみる。王子はふふん、と得意気な表情を浮かべて鼻を天高くお城の天井に向けた。
「貴方のように、暴君が王子な訳がない!魔族が敵なら人間を大切にしろー!女なんだから、顔に傷付いたらどうしてくれる!」
王子と分かっていながら彼の頬に中指を少し挙げたグーパンを喰らわせる。
それまたぐわーっと玉座の前まで飛ぶかと思ったら、両腕で受け止め1メートル後ろにずざーっと下がった。
何処かから、笑い声が聞こえた。