7.孤独な女王(1)
ラルクたちがやっとたどり着いたネールは、賑わう城下町。多くの貴族が住む街でもある。新鮮な果物に野菜が並ぶ出店は、ビーナスとは違うことが一目でわかる。まず目につくのは、大きな城。トラードは、驚きながら城を眺めていた。
「大きいお城ですね」
「あれがルティス王国のシンボルで、今は、確か女王様がこの国を守っているだったな」
ルティス王国の唯一の王族は、一人しかいない。約3年前に王様が死んで一人しかいない王女が女王として、国を守っている。今現在は、その王女により貧しかった町も豊かになり平和になった。
「確か王様が死んだ理由は、王女が殺したって言う説とか、王女は、ハーフだとかと言う変な噂があるですが、逆に王女のお陰で世界は、平和になったって言う人もいるんですよ」
「孤独な王女様って言うのってそう言うことね」
ふと辺りを見ると兵士が慌てる様子だ。何かあったのだろうかと不思議そうにラルクは、みていると白のローブを着た女性が、兵士に見つからないように隠れている事に気がついた。
「なにやってるんだ?」
「隠れているだ…って貴様は何者だ!?」
ラルクの声に驚く女性は、後ろを振り向く。女性にしては、背は高い。しかしスタイルも顔も見とれてしまうほど美しい人だ。少し見とれていたラルクを見てルリラナは、少しふくれながら
「旅人よ。旅人。っで?何で兵士から隠れてるの?まさか、悪党とかじゃあないわよね?」
「残念ながら違うな。寧ろ俺は……ーーいや此処で話している暇はない。アイツを探さないと」
キョロキョロ辺りを見て女性は、隠れながら歩く。明らかに怪しい人だ。ラルクは、ため息をはき女性の近くに行った。
「誰を探してるんだ?俺たちも手伝うぜ」
「見ず知らずのやつに世話になる必要はない」
「だったら兵士を呼ぶぞ」
此処で兵士呼ばれたら困る女性は、少し考え腕を組む。旅人に紛れていれば、違和感はない。エルフ二人に人間が一人と言う組合わせは、目立つがそのお陰で、カモフラージュになって堂々と道を歩く事が出来る。それに彼らは、自分が何者か解っていない。女性は、仁王立ちでラルクの前にたち
「私の名は“ミリア”だ。この街の何処かに居るお前ぐらいのスモークピンクの髪の色の男を探してるんだ」
「人探しですか?」
「ああ。アイツはかなりの方向音痴で、直ぐに道に迷うだ。春茶葉を買いにいくと言って13時間以上かかってるからな」
13時間も何故ミリアは、ほっといたのだろうか。そして、13時間もどうやって道に迷うのだろうか。疑問に思いながら少し歩く。ふと、いてるところであらゆるお茶屋がる事に気がついたラルクは、ミリアが言う春茶葉を探してみた。が何処にもない。不思議に思ったラルクは、腕を組む。
「春茶葉ってあるか?」
「残念だけど春茶葉は、高級品だからうちには置いてないだよ」
「ふーん」
どうやら春茶葉は、高級品らしく一般には、出回らないらしい。っと言う事になるとミリアは、何処かの貴族だと解る。
「何で春茶葉を好むんだい?私は、秋茶葉が好きなんだけどね」
「知り合いが、春茶葉が好きだから買っていこうと思っただけどな。残念だ」
「へー春茶葉をね」
お店の人は、驚いた顔で言った。そんなに春茶葉が好むのが珍しいのだろうか?好みなんて人それぞれだ。寧ろ紅茶に興味ないラルクにとってどれも同じだと思った。そう考えていると服の裾を引っ張られる感覚がしたから振り向くとミリアが不機嫌そうに立っていた。
「なにやってるんだ?人探しを手伝ってくれるじゃあなかったのか?」
「あー悪い。んじゃあ、ありがとうな、お姉さん」
そう言ってラルクは、その場を後にした。
ミリアが辺りを見て少し考える様子を見せる。
「どうした?」
「名前聞いていなかったなって思ってな」
「あー…ラルクだ。ラルク・ヴェルク」
「僕は、トラード・カンロスです。そして、あそこでふくれているのが、ルリラナ・ハルルです」
ミリアは、ルリラナを見る。何か納得したのかにっこり微笑みルリラナの所へ向かった。
「何よ」
「ーーーー」
ミリアは、ルリラナに何か言いある店へ入っていった。
ルリラナは、初めは、驚いた顔をしていたが、立ち去るミリアを睨み付けベンチに座り込んだ。
ラルクは、目をそらしトラードをルリラナの近くに居るように指を指す。トラードが頷いたのを確認してミリアの後を追った。
中に入るとどうやら此所は、レストランのようだ。ミリアは、目を細めて見ているとスモークピンクの髪の色をした人がいた。大きなパフェを立って一人でもうもくと食べている事からもしかしたら違うかもしれないと言う気持ちもなくミリアは、ムッとした顔で歩き始めた。
「サン!サン・タクティク!なにやってるんだ!?」
「っは!みみみみみミコト様!どうしてここに!?」
サンと言われる男は、驚いた顔でミリアを見る。ミリアは、深いため息をは辺りを見る。サンの言葉に驚いた周囲の人たちは、膝まつき始めた。ラルクは、首をかしげミリアをみる。
ミコト。確か女王様の名前もミコトだったはず。そうなると兵士から隠れている理由もなんとなく解る。
「サン」
「はい!」
「外では、ミリアと呼べと言った筈だぞ」
サンは、ハッとした顔でミリアいやミコトを見る。王女である彼女の名をお城の外で言うことは、混乱になる。いや既になっている。サンは、慌てて土下座をして
「こんな哀れな俺を踏みつけてください!」
「俺はそんな趣味はない」
そんな冷たい目を察知したのか立ち上がりミコトの手を握る。
「ミコト様無礼と承知の上頼みごとをしても良いでしょうか!?」
「方向音痴の貴様を一人で歩かす事は、出来ないからその白銀の髪の色をした青年と手を握れ」
ミコトは、サンの手を振りほどき顔をそらす。
「お前誰だよ!?」
「帰るぞ!サン」
「はいー!」
サンは、子犬のようにミコトの後を追いながら歩いていった。