6.おとぎ話から始まる旅たち(2)
「たしか、龍王って神様に封印される前に体をバラバラにして欠片になって世界に散らばった…だったけ?」
龍王の欠片のおとぎ話は、誰もが知っている。しかしなぜメデューサは、その物語と最後の言葉を言ったのか気になったラルクは、座り込む。
「そうか、そうなんだよな…」
「どうかしたの?」
「…………」
ラルクは、考える。
「俺、みこを探しに行ってくる」
「みこですか?」
「ああ。みこだ」
ザルクルフのおとぎ話が本当なら実際あった話なら世界を恨み、精霊と神を恨んだ龍王は、たぶんきっと世界を壊すだろう。その心臓が自分のなかにあるなら死ぬしかない。死んで、世界を守るしかない。
突然のラルクの言葉に戸惑うルリラナは、ラルクをみる。
「どうしてですか?」
「……ずっと考えていたんだよ。俺が、どうして此処に居るのか……どうして生まれたのかってな。もしみこがいるなら解るかなって…」
「…………だったら僕も行きます!ラルクさんが行く場所に何処までも着いていきます」
先に言われた。ルリラナは、考える。着いていきたい。ラルクの側に居たい。守りたい。
「私も…私も行くんだから!」
「ルリラナ…トラード」
誰も気づかれず死にたかった。二人を守りたかったから死ぬしかないと思った。でも、二人は側から離れてはくれなかった。ルリラナは、ラルクの手を握り目を見る。
「それに言ったでしょ?私がラルクを守るって」
「…………俺なんて守らなくて良い。お前は、お前の命を守れよ。ルリ」
素直になれば、楽なのに二人が必要なのに言えない。二人を悲しませる結末が待っていると解っていた。しかし、ルリラナとトラードへの答えは
「好きにすれば」
素っ気ない返事でラルクは、言った。
旅立ったラルクたちが目指す先は、ティス王国側のネールと言う王国の中心部の街へと向かっていた。しかし、過労と空腹でルリラナは、ふくれた顔でラルクを見る。
「お腹空いた。疲れた」
「ふーん」
「お腹空いた!疲れた!お腹空いた!疲れた!お腹空いた!疲れた!お腹空いた!疲れたっ!」
「うん。解ってる」
内心しつこいと思いながらラルクは、歩く。それをみたトラードは、から笑いをしながら歩く。
「ラルクさん。そろそろ休憩にしませんか?遅くなる前に薪とか集めて暖をとった方が、良いかと思いますが」
「此処は、目立つだろ?何時魔物が襲って来るか解らないし夜は、冷え込むし何時雨が降るかも解らないだろ?風避けと雨宿りができる場所を探してるんだ」
トラードは、再びから笑いをしてルリラナにリンゴを渡す。
「だそうです」
「~~~~っ!雨なんて降りそうじゃないわよ!私は、今すぐ休みたいの!」
ふくれた顔でリンゴを食べるルリラナ。ラルクは、あきれた顔をしてルリラナをみて、ため息をはき立ち止まる。
「俺が今から良いところ探してくるからお前は、此処に居ろ。絶対に動くなよ。良いな?」
「私、子供じゃあない!」
ラルクは、にっこり笑い歩き出す。そして、トラードの前に行きポケットから何かを取りだしトラードに渡した。
「これは、装備型魔法道具ですね」
「ああ」
トラードは、不思議そうにラルクをみて渡された装備型魔法道具を見る。
「青いのが結界、赤のが火、緑が木材だ。とりあえずこれで暖をとっとけ」
「ラルクさん。準備が良いですねと言いたい所ですが、初めから旅をするつもりだったのですか?」
「あー…………俺、何時追い出されても良いように持ち歩いてるんだよ。なにくせ理由をつけて追い出そうとしている奴がいるし、なんせハーフだからな」
ここまで考えていただなんて思っていないルリラナとトラードは、開いた口が閉じることは、出来なかった。トラードは、ラルクの目をみる。そして、渡された装備型魔法道具を返した。
「別行動は、ダメですよ。僕たちも探しますよね?ルリラナさん」
「え?…ええ!探せば良いでしょ!?探せばっ!」
リンゴをかじりながらルリラナは、スタスタと歩くが突然ピタッと止まり振り向き
「“私たち”があんたをひとりにさせないだから!絶対に何処までもどんな時でも私が、ラルクを守るんだからね!鬱陶しいって思っても良い!嫌われても良い!私たちが側に居るから…!だから、だから…!」
「ルリラナ…」
「って言うことをトラードは、言いたかった訳だからね!」
そう言って再び歩き出した。ルリラナの顔が耳まで真っ赤になっていた。ラルクたちにバレないように恥ずかしい気持ちを隠す様に先に歩く。照れ隠しの発言と行動が可愛らしく感じたラルクは、微笑みながら空を見る。
「ありがとうな」
でも生きる事は出来ないんだ。世界を破滅の危機をさせた龍王ザルクルフ。そんなことを二人に言えるだろうか?いや、言えない。死ぬとかよりも一番怖いのは、二人に幻滅させてしまう事なのだ。
ラルクは、考えた。考えながら空をみた。
「此処空の眺めが良いな」
「え?あ、はい」
初めて空を見て綺麗だなって思ったラルクは、にっこり微笑んだ。
「よしここで休むか」
しかし、このままで良いのだろうか?と迷いは、消えたりしなかった。