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枯れ葉  作者: 花染
1.我が主の心臓
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2.復讐と友情(2)

「ラルク・ヴェルク!勝負だ」


 ラルクが街を歩くと何時もこんな感じだ。理由は簡単だ。街の中で、誰もが彼を倒したことはないからだ。最強とは違う。ハーフエルフなのに彼は、強い。それが気に入らないのだ。


 ラルクは、少しだけ剣幕な顔で、少年を見る。


「お断りだ」

「んな!ハーフエルフのくせに生意気だ!」


 ハーフエルフは、関係ないだろう。っと思いながらため息をはく。とりあえずラルクは、持っていた飴を彼にあげることにした。


「此処は、魔法禁止区域って解って、俺に勝負しかけてるのか?あ?まー俺は、あれだ。ハーフエルフだから魔法を使わずにお前を倒すことは、簡単に出来るから安心しろ。ちょうどむしゃくしゃしているからお前を死なない程度にフルボコしてや自信は、あるけど残念ながら今俺は、お前に構っている暇はない。と言うか捕まりたくない」

「おーそうか」

「と言う訳で、じゃーな」

「おお。じゃーな…ちがーう!」


 少年は、ラルクを突き飛ばし睨み付ける。突き飛ばされたラルクは、危うく目の前にあった階段から落ちかけたがなんとか間逃れ冷や汗が出ていた。あと少しで、大怪我になっていた。いやもしかしたら死んだかもしれない。ラルクは、不気味な笑みで、少年を見る。


「そんなにお前は、死にたいのか?だったら殺してやるよ。痛みも感覚も無くなるまで、神経がズタボロになるまでたっぷりと可愛がってやるぜ」


 明るい笑顔で、言ってるものの目は、笑っていない。そんなラルクを見た少年は、危険を察知したのか一瞬体を震わせ変な汗も見える。彼の反応を見たラルクは、楽しそうに指を鳴らしゆっくりと歩く。


「さーて、いきますかーっと」


 ラルクは、思いっきり殴る用な勢いで、少年の目の前ぎりぎりで手を止める。当然、少年は、殴られると思い目を瞑るが、なかなか来ないと不思議に思い目を開けた。しかしラルクは、すでにそこには居なかった。言わば、逃げたのだ。


「ちくしょう!ラルク・ヴェルク!出てこい!勝負だ!勝負しろー!!!」


 と言う虚しい声が響くだけ。少年には、ため息と悔しさがじゅんわりとにじみ出るのだった。

 少年が、叫ぶ声を隠れながら見ていたラルクは、少しだけ鼻で笑い歩き出す。家に帰る前に買い物を頼まれていた事に気が付き市場に向かったラルクは、のんびりと歩いていた。


「見つけた我が主の心臓」

「???」


 すれ違い間際に聞こえた声に反抗したラルクは、不思議そうに辺りを見る。さっきすれ違ったのは、黒いローブを着た人。声からにして男だ。ラルクは、考える。“我が主の心臓”とは、何なのだろうか。闇取引をしている人なのだろうか。魔物の心臓?どれにしてもさっきすれ違ったばかりなのに黒いローブを着た人は、誰もいない。


「我が主の心臓ってなんだよ」


 歴史書にもなかった言葉。どの本にも書かれてはない言葉だ。ラルクは、考える。そうこう考えているうちにたどり着いたのは、果物屋だ。


「リンゴ下さい」

「1個100ガスタだ」


 100ガスタ。流石に高い。ポケットの中には、10000ガスタある。少しだけ考える。


「高い」

「だったら帰りな」

「へーこのリンゴってそんなに良いリンゴなのか?傷らだけで、色も悪い。所々痛んでいる物もあるぜ。こんな残念すぎるリンゴが1個100ガスタなんて、ぼったくりだぜ。お?もしかして見た目よりも味か?いやいや見た目も味も良いリンゴなら100ガスタ出しても良いぜ」


 わざとらしく大きな声で、棒読みでラルクは、言った。すると果物屋のおじさんは、焦りだしリンゴを1つ2つ…5つと6つ袋に入れる。


「6つで100ガスタだよ!なに勘違いしてるんだよお客さん」

「お!6つだったのか?俺の聞き間違えだったみたいだな。失礼」


 袋を受けとりにこやかに100ガスタをだし鼻歌を歌いながらその場をあとにした。


 やっと家に帰ったラルクは、笑顔でドアを開ける。


「ただいま」

「おかえりなさい。ラルクさん」


 ラルクは、さっき買ったリンゴが入った袋をトラードに渡しソファーに座る。


「こんなにたくさん買って…値段は、どのぐらいしたんですか?」

「その袋1つで、100ガスタ」

「安!」


 脅して、値切った何て言えない。いや初めから彼は、言う気はない。嬉しそうにトラードは、台所に向かって鍋の蓋をあける。匂いからにして今日は、カレーだ。


「カレーか」

「はい。ラルクさんの好みに合わせた激甘カレーですよ。すりリンゴと牛乳、生クリームを入れてっと出来上がりです」


 そう言いながら芯を取り除いたリンゴをフードミキサーに入れ粉々になったリンゴをカレーに入れ牛乳、生クリームを入れてひとにたちするまで煮込んでいった。別にトラードは、甘党ではない。ラルクのために合わせた甘さで、こうなった。これでもかと言う甘さなためにトラードとラルクは、別々に作っていたが、最近は、めんどくさいと言う理由で、激甘カレーだけを作ることにした。


「そろそろご飯にしますか?」

「ああ」


 ラルクは、借りてきた本を自分の部屋に置いて椅子に座る。出てきたカレーを食べてラルクは、微笑む。


「うん。美味しい」

「ラルクさん」

「ん?何だ?」

「メデューサを何時になったら殺しても良いですか?」


 トラードは、真剣な顔でラルクに言った。


「メデューサの髪って切ったらどうなると思う?」

「へ?どうなるって…」


 トラードは、想像した。ぶつ切り状態の蛇髪から滴れる赤い血。たぶんきっとメデューサの髪は、生きた蛇。ポタポタと白い蛇から血まみれの首なしの死んだ蛇。


「うぅぅ~…気持ち悪いこと言わないで下さい」

「いや、髪の毛の蛇もちゃんとさ生命があるのかなって気になってな」

「気になる場所が人と違いますよ。ラルクさん」


 いやまず、そんな話をしていない。


 トラードは、メデューサを憎んでいた。何故なら母親をメデューサにより殺されたからだ。右目もメデューサにより奪われた。


 復讐がしたいがラルクは、それを許しては、くれない。ラルクの許しがなくても行きたいのだが、トラードの良心がそれを止めるのだ。殺したいのに殺せない。それは、たぶん良心だけではないとトラードも解っている。


「トラード」

「はい」

「メデューサと戦うなら琥珀石があれば勝てる」


 確かに龍王の欠片である琥珀石があれば、簡単に勝てる筈だ。


「っと言っても金額的にねぇわーって思ってたから他の手を考えているつもりだ」

「つもりって」


 トラードは、苦笑いをしながらカレーを食べる。


「焦るな。トラード」

「ラルクさんは、解らないからそんなことを言えるんです」


 親がいない家族もいないラルクには、トラードの気持ちが解らないが、当然トラードもラルクの気持ちが解らない。家族であって家族ではない血の繋がりがない赤の他人を「家族だ!」って言ったって心までは解らない。


「解らねぇーよ。心なんて俺は、見えねぇーから、親に捨てられた俺には、親を大切に思っているお前の気持ちなんて、これぽっちも解らねぇーよ」


 ラルクは、立ち上がりうつ向いたままで言い歯を食い縛り部屋に向かった。


 トラードは、後悔をした。一番言ってはならないことをラルクに言ってしまった。メデューサが憎い。しかし、どこかしら今の生活に満足しているのかもしれない。幸せと言うのは、何かのだろうか。トラードは、考える。


「僕は、どうしたら良いですか?母さん」


 もし負けたらラルクは、悲しむだろう。独りぼっちになるだろう。でもそれでも心は、休まることが出来ないほどメデューサが憎いのだ。


「琥珀石…!琥珀石があれば勝てる」


 トラードは、思い出した。確かこの近くに琥珀石をコレクションをしている人がいる。その人から少しだけ、ほんのすこしだけ借りたら良い。


 トラードは、少しだけラルクの部屋のドアを見て、考える。そして、テーブルの上に置かれた皿を片付けて、その場をあとにした。

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