19.目覚めた力、奪われた力(1)
やっとたどり着いた目的地の一つの小さな島についた。ビオラは、山を指し
「あそこに女神がいるよ」
ラルクは、目を細めて山を見つめ考えた。初めて見たのに懐かしく思う不思議な感情と頭痛と不安が何故かラルクに襲い掛かる。長い船旅で疲れているのだろう。そう思い大きな伸びをした。
「ラルクさん、顔色よくないですけど…体調が良くないのでは?」
「あ?ああ…んー平気だ。このぐらい」
大丈夫。そう言い聞かせ平気な顔で、皆の後を歩いていた。しかし、山を登るにつれ胸騒ぎがし気分も良くない。胸が締め付けられるようにもやもやとした物がつっかえている気分だ。
「ラルくん、何あったの?体調が悪いの?」
「…っ痛…!…頭が…痛いだけた…」
「え?頭が…?」
座り込むラルクのところに慌ててビオラは、所へ行きおでこを触ると手が火傷するのではないかと思うほど、暑く燃えていた。熱があり、顔色が悪い。しかし、ラルクは、それでも立とうと歩こうとするが思うように体は、動いてくれなかった。それを見たビオラは、ラルクの背中をさすり心配そうに
「休もうよ。こんな熱で、もし魔物に襲われたら大ケガだよ!」
「はぁはぁー…はぁはぁー…大丈夫だ…俺は強いから…このぐらい…」
「でも…」
明らかに平気では、無いぐらい解る。しかし、ラルクを休ます場所も自分達を身を隠す魔法も使える魔法道具もない。ビオラは、考えた。
「解った。ラルくんは、この薬を飲んで」
「薬?」
「熱を下げる薬。これを飲めば楽になるから」
ラルクは、ビオラに言われるまま薬を飲んだ瞬間に意識が薄れ倒れてしまった。
「ゴメンね…ラルくん」
そう言ってみんなを呼び事情を話した。ルリラナは、顔を真っ青にして倒れているラルクをじっと見つめ座り込んだ。
「ザックくん、ラルくんを背負って運んでくれる?」
「解った」
そう言ってザックは、ラルクを背負いビオラを見た。戦えるのは、ビオラにトラード、ミウにルリラナ。ザックは、何故か不安になりトラードを見る。
「大丈夫なん!?トラード!」
「え?僕は、大丈夫ですけど…?」
「女、3人を守るんじゃけん!確りせんといけんよ!」
そう言われたトラードは、3人を見つめ少しだけ考えた。
ミウは、ホウキが武器で、水を使った攻撃と魔法を使う。ルリラナは、弓と魔法。百発百中で、狙ったものは、外さない天才。ビオラは、謎だ。これまで、武器も見たことない、戦ってたところも見たことないトラードは、顔を真っ青にして、ザックを見た。
「ぼ、僕だけ前衛タイプじゃあないですかっ!?ど、どどどどどどどうしましょう。3人を僕は、守れるでしょうか」
「っ………!大丈夫よ。もし、あんたが死にそうになったら私が助けてあげるわ。感謝しなさい」
そう言ってルリラナは、立ち上がり心配そうにラルクを見つめ頬を叩き歩き出した。
「ルリラナちゃん無理をせんかったから良いじゃけどな…」
「はい」
山。小さな島。彼処に女神がいる。救いの女神が居る。この島に来てから不安が離れないミウは、ラルクを見つめ考えた。
「……」
「どしたん?ミウ」
ここに来て、ラルクの力が強くなっている気がした。しかし、眠った瞬間に落ち着いた。
ラルクの力。ザルクルフの力。龍王の力。ラルクの中に眠る龍王の心臓は、少しずつ彼の体を食い荒らしているのだろうか?本当の彼を知っている者は、要るのだろうか?
ラルクは、いったい何者なのだろうか?
「あの、ラルクの両親とかは?」
「ラルクは、捨て子らしいけど、詳しく知らないわ」
「そうですか。ありがとうです」
捨て子と言うのは、普通だ。ハーフとなれば誇りが高いエルフにとっては、異端にしか思わない。殺すよりまし、育てるよりもましと言う考えで、ラルクは、捨てられたのだろう。動物のように簡単に捨てられたのだろう。
そう話していると、目の前には、小さなお城が見えてきた。ビオラは、にっこり微笑みながら
「あそこだよ」
そう言った瞬間、ラルクは、目を覚ました。