17.未来探求者(6)
海の中から海を眺めるミウは、考えた。ザックは、何時も心配していろんな物をくれた。いろんな話をしてくれた。お父さんとお母さんの話をしてくれた。
「ミウ!」
船から響く声と同時に大きな体が海へ落ちる音。見覚えがあるシルエット。あの大きなシルエットは、知っている。
「ザック…」
ザックは、慌てた顔でミウの手を掴み息をしようと上へと泳いで行った。ザックの背を見てミウは、涙を流しそのまま気絶をした。
ザックは、ミウを抱え辺りを見る。さっきの青年を目を細めて探すが何処にもいない。不安が過った瞬間、何か海から空へ飛び跳ねる影が見えた。
「流石って言った方が良いね」
さっきの青年だ。青年は、ザックを指しにっこり微笑んだように見えた。
「俺の名は、ディラン。俺は、お前をよく知っているようにお前は、俺を知っている。忘れたのか?月読みのザック」
「ディラン……」
血が騒ぐ。ディランと名乗る青年を何故かザックは、知っていると思った。何故だろうか?
「お前の罪は、消えたりしない。お前が存在する限り俺が消したりしない」
その言葉でザックは、あることを思い出した。ザックの顔色がみるみる変わり混乱しながらディランを見る。
「お前は…―――」
ディランは、不気味な笑みを浮かべ指を鳴らし魔方陣から現れた竜巻と共に消えていった。
「空を飛んでたな」
「はい。空を飛んでいましたね」
空を飛ぶ。きっと風の魔法。ラルクは、少しだけ考え海から戻ってきたザックとミウを見る。
「知り合いか?」
「……」
「ザック?」
「それよりもミウちゃんをベッドで休ませてあげてね。あとザックくんは、服を着替えよう、ね?」
そう言ってザックの背中を押してビオラは、ラルクを見てウインクをした。ラルクは、少しだけ考え何か納得したのか頷き
「そうだな」
「ザックくん。ミウちゃんをラルくんに渡して、君は自分の部屋にあるお風呂場へゴー!」
「…………すまん」
そう言ってザックは、ミウをラルクに渡し部屋へ向かった。ラルクは、少しだけ考えた。ミウとザックの気持ちを
もし両親を殺した人が身近な人で信じていた人だったら。もしなんだかの理由で、殺さなければならない状況だったならどうしたか。
「……ラルくん、部屋へ行こ?」
「あ、ああ」
気絶をしたミウの目から涙が見える。ミウのあの闇の魔法。神子である彼女が使った魔法とあの黒いオーラ。あれは、一体何だったんだろうか?
「にしても俺らのガン無視したあいつなんかムカつく」
「確かに、可笑しいですよね?」
「何が?」
ルリラナは、首をかしげトラードを見た。トラードは、ミウを見ながら
「あの人が朱獅子の目ならタコゲッソーで弱っているところを狙ってミウさんとラルクさんを捕まえ風のワープ魔法で、逃げると言うのが、簡単な方法だったのにミウさん仲間に誘い掛け、ザックさんをタブらかしただけ…彼は、どうしてそんな事をしたのでしょうか?」
「確かにな…」
ミウの力があれば龍王の欠片も直ぐに集まるだろう。しかし、最も重要な心臓をもつのは、ラルクのみ。心臓と言う大きな欠片でさえミウのアークルの力があれば簡単だ。しかし、何故ザックをあんなにも脱落するような言い方をしミウを絶望さてたのだろうか。
ラルクは、考えた。
「あの黒いオーラって何だ?」
「負の感情が形になって見えたの。
ほら、感情って悲しみや苦しみ、怒りや妬み、喜びや楽しみ…喜怒哀楽があるでしょう?
誰だってある感情だけど深く絶望して希望も見えなくて、何もかも信じたくないってなった時だけ見える物なの。あたしが言う“不幸”ってやつだよ」
困った顔でビオラは、言いやっとたどり着いた部屋の扉を開いた。
「ありがとう」
ラルクは、部屋に入りミウをベッドに寝かして、椅子に座った。
「ミウは、絶望したってことなんだな」
「うん。それもあるけどミウちゃんは、特別だから」
「特別?」
トラードは、首をかしげそう言った。するとビオラは、にっこり微笑みラルクとトラードの肩を持ち引っ張った。
「2人は、ザックくんをお願いね。
大人は、大人の事情があるけれど、今君たちに出来ることは、きっとそれしかないから、ね?」
「ちょっ!」
「要するに邪魔ってこと!」
そう言ってルリラナは、にっこり微笑み扉を閉め鍵をかけた。トラードとラルクは、何が起きたのか解らずお互いの顔を見合せ首をかしげた。