13.未来探求者(2)
真夜中、綺麗な海を見ているビオラは、黄色の瞳の方の目を押さえ考えていた。片手には、ラルクが持っていた本。
「この本は、君が残してくれたんだね…カガリ」
「カガリ?カガリって誰よ」
後ろを振り向くとルリラナが立っていた。両手にマブカップに入った温かい牛乳を2つ持って首をかしげていた。
「あたしの友達だよ」
「友達?」
「うん!あたしにたくさんの出会いと力をくれた大切な友達」
そう言ってビオラは、悲しい目で空を見た。無数の星と白く輝く月そんな空を見て、深呼吸をした。
「君は、間違えないでね。君は、逃げないでね。あたしと同じようにならないでね」
そう言って、にっこり微笑みルリラナが持っているホットミルクを受け取った。ビオラの言葉に聞き覚えがあるルリラナは、ある人物を思い出した。
「それ、前にも言われた」
ミコトだ。初めてミコトと出会って、女王だと知らずに一緒にサンを探している最中に言われた言葉。
「“正しさなんて、人それぞれよ。それが正しいって思っても他人から見たら疑問に思う。同じに見えて同じじゃあない。一つだけの答えだけではなく、できるだけ多くの答えを知って、自分に合った答えを出すのが、合理的。そんな大人になるんだよ”
って何時も師範が何時も言ってたから大丈夫よ」
師範。ルリラナが尊敬する師範。どんな人だろうとビオラは、質問をした。
「強くて優しくて、時々厳しくて…甘党で…正義と言う言葉が似合う人よ」
「そっか…」
「でもあの人は、もう居ないわ。ラルクを残して、死んでしまったから」
ラルクは、忘れている。きっとアークルのせいだと最近になって解った。ラルクの瞳には、あの頃の面影もない孤独で、卑屈で、何処かトラードとルリラナを避けている気がする。
ルリラナは、何時もラルクを見ていた。トラードよりもずっと彼を知っているからこそ側に居たい。彼を孤独にしたくない。
「あの頃の記憶がラルクになくても、私は、知っている。だからラルクの悲しみや苦しみごと全部、私が受け入れて守るって、決めたから」
好きだから側に居たい。ここに居たい。強くなりたい。ラルクの足手まといになりたくない。
「だから、私は、後悔なんてしないわ」
その言葉にビオラは、驚いた顔で見た。そして、少しだけ考えた。
「そっか。うんうん!きっとルリちゃんなら大丈夫だね」
そう言って、マブカップを置いてにっこり微笑み手を握った。
「君に力をあげるよ。難しくて、厄介な力だけど、君を守る力だよ」
握った手から光が見えビオラの片手には、綺麗な花を持っていた。ルリラナは、驚いた顔でビオラを見た。
「知られざる生命の精霊…」
その言葉で、ビオラが持っていた花は、美しい女性となりルリラナをじっと見ていた。
「生命の精霊。君の新しいマスターだよ」
「ーーーー」
「大丈夫。きっと大丈夫だよ」
女性は、ビオラの言葉に頷きルリラナの近くへと向かった
「え?せせせせ精霊?」
「“知られざる生命の精霊”女性にしか召喚出来ない精霊。君の素敵なパートナーになると思うよ」
「私のパートナー?」
精霊の瞳を見るとても綺麗で、きらびやかだ。美しい彼女は、ルリラナをみる。そしてルリラナの胸の中へと入っていった。
「え?何?何が起きたの!?」
「手を離すよ」
気づけば光は、消えていた。戸惑いながら胸に手を当てるが何もない。苦しもしんどくもない。
「彼女には、名前がないの。だから、素敵な名前つけてあげて」
「名前…」
ルリラナは、考えた。初めての精霊。生命の精霊。女性しか召喚出来ない精霊。特別な人しか召喚出来ない精霊。
「エイム」
「エイム…心って意味だね。うん!良い名前だね」
「ありが…と…」
ルリラナは、力が抜けるように前に倒れそうになったが、なんとか踏ん張った。目眩がしただけなのだろうと重い体を動かそうとするとビオラが肩を持ち彼女を支えた。
「精霊と契約したからきっと疲れたと思う。ゴメンね無理させて…」
そう言ってルリラナを座らし、ザックを呼ぶとその場から離れた。
残されたルリラナは、何故か体が重いのに何でもできる気がした。精霊のお陰なのだろうか?強くなったような気がした。
「これで…足手まといにならなくて…すんだ…」
そう言ってルリラナは、意識を失った。