6.願い事を叶えるためなら(6)
やっとたどり着いた蕀の森。漆黒の蕀の棘は、大きく鋭く触ると大ケガをするのでは、無いかと思うほどだ。
ふとザックは、違和感を感じ辺りを見る。
「この蕀の森の中から魔力が感じるんよ」
「魔力?」
誰か居るのだろうか?いや空から入ることは出来ない筈だ。ラルクは、考える。
「エルフ!」
後ろを振り向くと、ユアが立っていた。ユアの手には、斧を持ちラルクたちを睨んでいた。
「そこをどけ!この先にある花は、誰にも渡さない!アリスを救うために此所に居るんだ!ここまで着たんだ!エルフ何かに渡してたまるか!」
「…………」
ザックは、少しだけ考えた。大切な人を守るためなら何でもやる気持ちは、痛いほど解る。だが、ユアは、間違っている。
「それが、本当にアリスっていう奴の願いなん?本当にアリスは、そんなこと願っとるん?」
「………そうさ。アリスは、もっと生きたいと願っている筈だ。自由になりたいと思っている筈だ!」
もっと生きたい。自由になりたい。そんな風に思っている筈だ。アリスを救って、守って一緒に生きて背中が曲がるまでずっと、ずっと隣で笑って欲しいんだ。
「アリスの願いじゃない。それは、お前の願いじゃ」
「!!!!っ…………!そうだよ!俺の願いだ!アリスが居なかったら生きる意味なんてないだよ!」
ユアは、崩れるように座り込み大粒の涙を流していた。
生きる意味がない。かつてザックも同じように思った事がある。でも、ある人のお陰で、生きる意味を教えてくれた。
願いを叶える花レインボーローズ。願いを叶える為の条件。
「じゃったら死んでも良いって言うか!?」
「死ぬ?どうしてそうなるんだ?」
ラルクの言葉にザックは、目そらし静がに言った。
「レインボーローズは、願いを叶えると引き換えに命を奪う花じゃ。この世に生まれなかった生きてなかった事になるんじゃ…存在を奪われて、それでお前は、幸せか?アリスは、幸せになるんか?」
願いを叶えるか自分の命が大切か。ユアは、考えたが答えは、一つしか無かった。
「俺は…っ!俺は、願いを叶える為ならこの命を投げ出しても良い。なんだってやるしなんだってなってやるって決めたんだ。
アリスが俺なんか忘れて、アリスが生きることが楽しいって思って、幸せになって明日を生きることが出来るなら、死んでも良いんだ」
たった一人の女性を助けるために死ぬことが出来る。ラルクは、目をそらし少しだけ考えた。
「ルリラナ、光の魔法使えるか?」
「エルフ!何をするつもりだ!?」
「なにもしないしどちらにしてもこの蕀が邪魔だから消すだけだし、この中になにかいるって思うだけだ」
ラルクとルリラナは、呪文と唱えると空から稲妻が蕀に向けて堕ちてきた。すると、何百年ずっと消えることもなく棘でさえこちらに向けていた蕀は、消えていくのです。そして、やっと日と光を浴びることができたバラの蕾たちは、一生に花を開き始め辺り一面白いバラが咲き乱れたのです。
「キレイ…」
琥珀色に輝く白いバラの花畑の中に一際目立つ七色に輝くバラが佇むように咲いる隣で、オレンジ色の髪をした女性が眠っていた。
「人間ですよね?」
何故、こんな所に人がいるのかは、解らない。人間が入ることも出来ない筈の蕀の森で、眠っている女性を見たザックの顔色は、変わり動揺しているようにも見えた。
「どうしてこんな所に居るん?」
「知っている人ですか?ザック」
「ああ。知っている。けど、こいつと出会ったのは、ワシが二十歳の時。どうしてこんなにもあの時と変わってないん?」
ふとユアは、レインボーローズを見ると花は萎れ少しずつ枯れていくのです。ユアは、慌てて花を摘もうとしたがすでに完全に枯れ落ちてしまったのです。
「花が!!俺の花が!アリスを救うための唯一の手段が!アリスーーー!うああああああああ!!!!」
ユアは、大粒の涙を流し崩れ落ちるように座り込んだ。ミウは、走って背中を撫でだ。
「希望は、何時も心にあります。大丈夫ですよ。心を捨てない限り希望は、消えたりしません。強い心を持ってください」
ずっとずっと側に居たかった。よぼよぼのじいさんになってもアリスがお婆さんになっても側に居たかった。ずっと横にいてほしかった。
「何時も側に居たかったんだ。ずっとずっと…死ぬまでずっとだ。強い心を持てば良いのか?アリスは、助かるのか?教えてくれて…俺は、これからどうしたら良いんだ?」
生きている意味が解らない。アリスが居なかったら生きる意味なんてないんだ。
救えないって解った瞬間の絶望が胸を締め付ける。