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枯れ葉  作者: 花染
4.戦争になっても
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35.幸福の鐘(6)

 沈んでいくコンバットは、ジュランを見つめていた。もうすぐ死ぬ。ジュランが、必死に助けようとしてくれているのも解っている。でも、ジュランを神子にしたくない。ナムが幸せになって欲しい。1人と1匹が幸せになるなら明日を生きられるなら。

 コンバットは、目を閉じて願った。


「アークル……救いの神アークル……どうかジュランとナムを守って下さい。ジュランがぼくのせいで悲しむなら自分を責めるならぼくと言う存在の記憶が無くなっても良い。ナムが独り寂しくない様にサラとララが側にいてくれたら良い。


 ぼくは、2人が幸せに明日を生きられるならこの命だって差し出しても良い……」


 そう願った瞬間、湖の底からエメラルド色に輝く亀が泳いできた。


「解った……その願い叶えよう」


 その言葉が聞こえた瞬間コンバットは、ジュランを見てにっこり微笑んで、深い眠りについた。


 エメラルドの亀をみたジュランは、一瞬で、あれがアークルだと解った。


「アークル……」


 アークルは、ジュランの元へ向かい目を見つめた。アークルの瞳は、優しく綺麗な瞳。ジュランは、涙を流しコンバットを見た。


「コンバット……」


 水しぶきと共に陸へと連れて行きエルナを見た瞬間、空へと飛んで行った。



 その頃ナムは、コンバットの帰りを独りで待っていた。ナムは、信じていた。絶対に帰ってくると信じていた。


「コンバット……許してくれるのかニャ?」


 酷いことを言ってしまった。そして、独りぼっちが嫌いなコンバットを置いて、逃げてしまった。必ず、帰ってくる。そして、ジュランも一緒にまた明日、いつもの様にたわい無い話をして、遊んで、好きな絵を描いて、冗談を言って、笑って当たり前の事をしたい。2人と一緒に居たい。


 ナムは、空を見て星に願った。するとナムの目の前にアークルが現れた。


「ニャ!」


 ナムは、驚き尻餅をついてアークルを見た。エメラルド色の亀から人の形に変わった。


「ーーー」

「願い?コンバットから?ジュランから?」

「ーーー」

「そんニャのいらニャい!!ニャムは、ジュランとコンバットと一緒に居たいだけニャのに……それだけニャのに……コンバットって解っているはずニャのに……どうして……」


 ナムは、座り込み流れ出した涙を拭いた。


「ーーー」

「それは、嫌だ。ジュランがコンバットを忘れるニャらニャムは、コンバットを忘れニャい。ジュランが、コンバットの死のかニャしみを受け入れるまで、ニャムがジュランのかニャしみを受け入れる」

「ーーー」

「それでも良い……例えニャムの姿がコンバットにニャってもニャムが本来の目的を忘れても……ニャムは、コンバットを忘れたくニャい」

「……解った」


 そう言って、アークルは、微笑みナムに魔法をかけた。ナムは、猫の姿を捨てコンバットの姿へと変わり力が抜ける様に寝転んでしまった。それを見たアークルは、コンバットが言っていたサラとララところへ向かいポケットからハートの形をしたザルクルフの欠片を取り出し2つに割ってはめ込んだ。すると二体の人形は、動き出しナムを守る様に座り込んだ。それを見たアークルは、悲しい目で外から見える海を見て


「ジュラン……貴様の願いを叶えることが出来なかった……せめての報いとして、我が側にいよう。


 マリカ…我は……ーーー」


 この世界を壊そうとした者を許す事が出来ない。



 そう言って、アークルは、光となって消えていった。




















 神子の儀式の数日前に遡る。1人で、湖を眺めているとエメラルド色の亀を見つけた。するとほんの少しだけ声が聞こえた。


「ーーー」

「ボクの願い?そうだなぁ〜……でもお父さんやお母さんに会いたいって言うのもあるし、ザックって言う人も会っていろんな話もしたいかな?好きなのものをたくさん食べたいし……」

「ーーー」

「そうかな?あ!そうだ!やっぱりこれかな?」

「ーーー」


 ジュランは、立ち上がりにっこり微笑んでこう言った。


「もし、ボクが神子になってもコンバットとナムの友達としてまた会いたい」


 その言葉を聞いたアークルは、にっこり微笑み湖の底へと消えていった。

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