9.孤独な女王(3)
噴水広場についた二人は、辺りを見る。すると、大きな建物の壁に魔方陣らしきものから魔物が次から次へと沸き立つように出てきている。ふと、何だかの違和感を感じたラルクは、首を傾げ魔方陣をみる。
「ん?これは……」
「どうした?さっさとやれ」
「ああ」
ラルクは、手を翳し深呼吸をする。
「開かれた魔の門よ、我が声に応えたまえ」
ラルクの手から柔らかい金色に光が見え赤く輝いていた魔方陣は、金色に変わった。それを確認したラルクは、ホッとした顔をする。
「静かなる大地に戻り、青き空と共に閉ざしたまえ…ーーーー」
その言葉を応じるように光は、消え壁に書かれた魔方陣は、まるで黒いペンのような物で書いた落書きにしかみえない。
「終わったのか?」
「まーな。後は、ここを書き直してっとよし、終わりだ」
ラルクは、少し考えている途中で、ルリラナ達が来た。
「ルリラナ、魔方陣の形式は、何だ?」
「六々星よ」
「…ロクロクセイ?」
始めて聞く言葉にトラードとミコトは、首を傾げる。それを見たラルクは、ため息をはき
「魔方陣の名前だよ。
正式名【六王命星】と言い召喚陣の本来の名前。一から十までの数字が増えるほど召喚できるものと魔力が弱くなる。しかし術者よりも強い魔力を持つものにより書き換えられることもあるってこと。説明は、以上さっさと行くぞ」
そう言ってラルクは、考えながら城へと向かっていった。
ふと、ミコトの足が止まり振り向いて目を細めて街を見る。
「この魔力は、まさか…!」
青ざめた顔で、街を見ていた瞬間ゴーレムが現れた。ミコトは、走りだし振り向いて
「魔方陣は、ばら園の中心にある!ラルクたちは、それを消してくれ!」
「ミコトさんは!?」
「俺は、あいつを殺す!」
そう言ってミコトは、軽々と屋の上に軽やかに飛び乗りその場を後にした。ゴーレムを1人で、倒せるのだろうか?あんな大きな魔物を国を守る王女1人で、倒せる事ができる訳がない。ラルクは、考えた。
「………トラード、ルリラナは、ミコトと一緒にあれを倒して行ってこい」
何か思い付いたのかラルクは、微笑みながら
「俺は、強いだろ?だからミコトを助けてやれ」
「ラルクさん!」
ごめんな。トラード。ラルクは、トラードが呼ぶ声を聞かず振り向かずに走ってばら園へと向かった。
ばら園についたラルクは、辺りを見て魔方陣を探しさっきと同じように消した。
「よし、終わった」
周りは、多くの魔物。此処で死ねば良いんだ。皆に迷惑かけずに死ねる。生きたいとずっと願った事なんてない。怖くなんてない。やっと死ねる。
ラルクは、剣をしまい目を閉じた瞬間銃声が聞こえた。
「何やってるんだ!?お前バカか!?」
この声は、サンだ。目をあけると必死の顔で、ラルクを見ていた。何故か涙が出そうにった。
「お前か」
「お前かってな!どうして武器をしまってるんだよ!?死にたいのか?あ?」
そうだよ。死にたいんだよ。
「死にてーよ。生まれたその瞬間から嫌われて憎まれて、終いには、世界を壊す龍王の欠片が俺の中にあるんだぜ?笑えるよな?」
サンは、ラルクの胸ぐらを掴み睨み付け
「笑えねぇーよ!だけどな、それでも生きるんだよ!生きて、生きて、生き抜くんだ!どんなに苦しかろうが、どんなに悲しかろうが、世界が壊そうが、生きることから諦めるな!」
生きることから諦めるな。その言葉を聞いて、ラルクは、目をそらす。初めて聞いたその言葉。そうか、ミコトもサンにそう言われたから側に置いてるんだ。だから大切に思ってるんだ。
「生きて良いって良いのか?」
「当たり前だ」
生きたい。でも世界の運命がこの手にある。
「サン、もし俺が世界を壊す龍王になったら俺を殺してくれ」
「だーかーらーこそは、龍王にならないことを考えるところだぜ?前向きに気楽に考えろよ。バーカ」
何度もバカと言われても気にしなかった。初めて言われた。生きて良い。バカでも良い。そうだよ。絶対に龍王なんかにならない。この心臓は、自分のものだ。この心臓があるかぎり生きている。
「それよりもあのデカイのは、なんだよ!?他の奴らは?ってミコト様は!?」
「そのデカイ奴と戦ってる」
サンは、少し考えラルクの目を見る。
魔物は、減った所からきっと召喚陣があったのだろう。そして、その途中からゴーレムが現れた。ミコトのことだ一人で戦うことを選ぶ。それを無視して、このラルクは、ミコトを守れとか言ったのだろう。そして、わざとこうして死のうとした。
「お前…」
何故、世界を壊す龍王の欠片が体の中にあるのかは、知らない。でも、ラルクは、世界を守るため、そして、ミコトを守るために死のうとしたんだ。
ラルクは、腕をくみ颯爽と歩いていった。
「俺たちも行くぞ」
「お前に命令される筋合いない!」
そう言って違う方向へ向かう。ラルクは、ため息をはき手を出す。
「ミコトを助けたいなら俺から離れるな。方向音痴」
「んな!っ~~~!あぁぁ~!!もう!解った!男が二人で手を繋ぐって言うのは、キモいけど…今回だけだからな!」
そう言ってラルクの手を握る。そして、ラルクは、少しだけ考える。手を繋いで、戦えるかだ。サンは、銃の使い手そして、ラルクは、魔法と剣だ。遠距離攻撃であるサンと至近距離攻撃であるラルクとは、全く逆といっても良い。かと言って、魔法は、集中して呪文を唱えないとならない。走って、隣で銃声が聞こえるなか落ち着いてできるわけない。
「………………………
…………………………………
………俺を死んでも守れ!」
「誰が守るか!アホ!」