30.幸福の鐘(1)
ナムとコンバットとミウは、二人と一匹の出会い偶然だった。ミウが、まだ神子になる前に二人と一匹は、出会った。
幼いミウいやジュランが、散歩をしていると一軒のお店を見つけた。水色の屋根のお洒落なお店。ガラスから見えるのは、目がない人形だ。不思議に思ったジュランは、お店のかなに入ると、あらゆる人形が置かれているが全て目がない。
不気味もあったが、不思議な事に美しさも感じた。
「いらっしゃい」
奥を見ると帽子を被った男の子が椅子に座り人形を作っている。ジュランは、人形を両手に持ってこう言った。
「どうして、ここにある人形は、目がないの?」
「ん?あー……目には、魂が宿るって言われているんだ。僕の人形は、買ってくれた時に目をつけるんだよ」
そう言いながら男の子は、人形を取り元に戻した。人形の他にも綺麗な小さな服や靴下に靴。鞄まで、あらゆる物が人形と同じサイズの物が飾れていた。ジュランは、一つ一つ見ていると当然男の子は、目の前に立って、顔をじっと見た。
「な、何?」
「君って、透き通るような肌だし、髪も青空の様な色をしているね」
「ありがとう…」
「人間じゃあないでしょ?」
ジュランは、首を傾げ数秒考えた。それをまた男の子も首を傾げた。
「種族の話しをしてるんだけど?」
「そういう事か。てっきりボクが、宇宙人とか動く人形とかホニマーとかだと言われるかと思ったよ。
ボクは、人魚だよ」
そう言うと、ジュランの肌をペタペタ触り納得したのか少しだけ考えた。
「へぇー……人魚も人間と同じ肌質なんだ。鱗とか尾びれとか……って言うかどうやって足を生やしたの?あ、そうそう人魚って何を食べるの?やっぱり魚?陸に何しに来てるの?絶滅したって噂だけど…生き残り?あ、もしかして人間よりも生きる?ほら、鬼族だって、長寿って言うし、見た目は子供だけど、実は、100歳ぐらいとか?いやいやそんな訳ないか……それから……ーー」
質問責めに言われたジュランは、始め戸惑ったが突然に冷静になり鳴り止まない質問に笑顔で、こう言った。
「うざい。質問は、一つだけにしろ」
「んな!?……ごめんなさい……
じゃあ、名前は?」
「ジュラン。君は?」
「コンバット」
それがコンバットとジュランの初めての出会いだった。それから毎日ジュランは、コンバットに会いに行って、色んな話をした。人形を買うわけでもなく作るのでもなくただ会いに話に行っていた。別にジュランがコンバットに会いたい訳でなく、コンバットがジュランに会いたいから、あらゆる口実をつけて、来てもらおうとしていた。何故なら彼は、人形以外に話す人もいないので、始めて自分と同じであろう年齢のジュランがお店に来たて、声をかけられた事が嬉しかったのだろう。
それから数日立ち、コンバットとジュランは、お店を休みにして、古い教会へと足を運んだ。
「ジュランの親ってどんな人?」
「解りません」
コンバットは、ジュランの言っている意味が解らなかった。エルナとは、誰なのかも気になり首を傾げジュランを見ていた。
「死んだらしいく、親の親友がエルナに預けたらしいけれど、約束した日が近いのに行方が全く分からないらしいからギルドに頼んだって言ってた」
少しだけ悲しい目で、少しだけ見える教会を眺めているジュランを見て、コンバットは、目をそらし手を握った。
「ぼくも親は、いないよ。人形師として、育ててくれていたおじーも去年に死んだ」
「じゃあ独りぼっち?」
「うんん。違う。おじーが、ぼくの為に人形を2体使ってくれたんだ。サラとララ。ぼくの髪の毛の色がラベンダー色だからララは、サクラ色。ぼくの瞳の色が、レモン色だからサラは、オレンジ色なんだっておじーが言っていたんだ」
そう言って、にっこり微笑んだ。すると何か思いついたのか、近くに咲いていた花を積みジュランの頭に飾った。
「そうだ。今度、サラとララに合わせてあげるよ」
「いいの?」
「良いよ」
「約束だよ」
コンバットは、うなづきたどり着いた教会を眺めて、鐘を見た。それを見たジュランは、少しだけ聞いたことがある事をコンバットに話した。
「この教会についているあの鐘って、祝福の鐘って言われているんだって。でも、建物の構造的に鐘を鳴らす為の紐なくさらに彼処に行ける場所さえ行けないらいしけど、ある出来事だけなるらしいよ」
「ある出来事?」
ジュランは、コンバットから握った手を離しそのまま空へと伸ばしながらクルリと円を書くと水が噴き出た。水は、噴水のように高く上がったが落ちる瞬間には、水は、霧へと変わり虹がほんの少しだけ見えた。
「“マリカが、産まれた時に鐘は、鳴る。世界を守る神子が、生まれた日に鐘は、鳴る。祝福の鐘が鳴る時、守りの神アークルが目覚める”
と言う古くからこの街に言い伝えられている言葉が、あるらしいけど、知らないの?」
「知らない。おじーは、教えてくれなかった」
コンバットは、俯いて目を逸らした。それを見たジュランは、少しだけ考え辺りを見て何かを見つけたのか、走ってそこへ向かい座り込んだ。ジュランの不思議な行動にコンバットは、首を傾げながらしばらく見ていた。
「何をやっているの?」
「四つ葉のクローバーを探してる」
「クローバー?雑草だよね?そんなの探して何があるの?」
意味が分からないと思いながら地面に座って眺めていると、何処かしら猫の鳴き声が聞こえた。コンバットは、不思議に思いちらりとジュランを見て、少しだけなら離れても良いそんな事を考えながら声が聞こえる方へ歩いて行った。
猫の声は、教会の地下にある牢屋から聞こえる。ドアにある小さなのぞき窓を見ると、猫が閉じ込められていた。
「誰だよ。こんなイタズラしたやつは」
大きな錠の鍵は、掛かっている事から何者かがこの猫を閉じ込めたのだろう。しかしながら、普通の人間の子供であるコンバットには、鍵を開ける術がない。鍵が無ければ、壊せばいい。ちょうど針金を持っている。手先が器用なコンバットならピッキングは、簡単に出来るはずだ。しかしながら、聖なる教会でピッキングをしてもいいのだろうか?そんな事を考えたコンバットは、ジュランならこのドアを壊す事が出来るだろう。そんな事を思い付き走ってジュランがいる庭へと向かった。
「ジュラン!」
「コンバット!何処に居たの?探したよ」
「来て!」
「えぇ」
突然に居なくなり突然に慌てて何処かへ連れて行こうとするコンバットに意味が分からなくて戸惑いジュランは、困った顔で、手を引かれ案内をされた。
「何処に行くの?」
「牢屋」
「牢屋?どうして?」
「猫が閉じ込められているんだよ」
やっとコンバットが言いたい事が分かったのかジュランは、先へ急ぐコンバットの握り返そうとしたが、足が空回りド派手にコンバットもろとも階段から転げ落ちた。
「イタタタ」
「はう〜……もうちょっとで、死ぬかと思ったよ」
「それは、ぼくのセリフ」
ジュランは、立ち上がり服についた埃を叩き辺り怪我をしてないか見た。コンバットは、立ち上がってすぐに牢屋の中の様子を見に行った。
「ここに居るの?」
「うん。ほら」
身長の小さいジュランにとってドアののぞき窓から中へ見る事が出来ない。ジュランは、背が高いコンバットを見て少しだけ膨れて、ドアに耳をあてすました。
僅かながら猫の声らしき聞こえる。ジュランは、考えた。
「魔法で何とかなるかな?」
「出来ない。ボクの魔法は、まだ未熟だからドアが壊れる程の威力が無い」
「ええー……じゃあジュランを呼んでもこの子は、助からないのかな?」
しょんぼりしているコンバットを見てジュランは、錠をみた。金属製で、丈夫そうだ。簡単には、壊す事は、出来ないだろう。
「一か八か、この錠を破壊してみる?」
「出来るの?」
「やってみないと解らないよ」
そう言ってジュランは、錠を引っ張ってみるとポロリと簡単に壊れコンバットとジュランは、お互いを顔を見合わせ首を傾げた。
「空いていたのかな?それとも元々壊れていたのかな?」
「いやいやいや。君が壊したんだよ。ジュランって実は、ゴリラ並みの力があったんだね。女の子って見た目だけでは、無いだね!」
「嫌味?」
「いやむしろ褒めてる」
そういって、ドアを開けた。