29.2つの魂、1つの心(5)
「どうして、みんなララたちをいじめるの!?どうして?勝手に作って、いらなくなったからって、壊れたからって、勝手に捨てて…ララたちも…人形にも心は、あるのに…
みんな……みんな消えてしまえ!」
そう言いララは、聞いたことがない言葉で、何かの呪文を唱え始めた。
「まずい!ララを止めろ!」
そうラルクは、言い走り始めたが、人形兵が行く手を邪魔をし前に進めない。ビオラも瞬間移動で行こうとするとこれもまた人形兵に邪魔をされてうまく行かない。
「ここは、私に任せて
全てを切り裂く風の刃、我が矛となり盾を切り裂け…ーーーーサイクロン」
人形兵は、ルリラナの魔法により何割か削ることが出来たが、開けたはずの道を塞ぐように人形兵は、埋め尽くす。
「範囲が大きい技や魔法で、連携技だ!」
「言われなくても解っているわよ!」
そう言って、呪文を唱え始めた。それを見たミウは、一歩前へ行き深呼吸をした。
「水月!」
「サイクロン!」
「ライトニング!」
ミウとルリラナ、ラルクの3人の魔法で、大きな台風が生まれ多くの人形兵を巻き込んだ。半分以上は、削れた。あと少し、あと少しで、ララの所へたどり着ける。
「ララ……ララ!!!」
ナムは、今の状況を見て、絶望と希望を両方見た。ララの呪文は、もうすぐ終わる。しかし、あと少しで、ラルクたちは、たどり着ける。たどり着いたら、ラルクたちは、ララを壊すだろう。胸が痛い。苦しい。
ナムの足は、自然とララの方へ向かって行っていた。
「ララ!!ララ!!!!もう辞めるんだ!もう、良いんだ!負けたんだ!
ニャムたちは、もうひとりじゃあニャいんだ!人間にニャらニャくても、ありのままのニャムたちを見てくれるニャかまがいるんだ!
一人でかにゃしまニャくても、一人で苦しまニャくても、ニャム達には、友達がいる。ニャかまがいる!それをもうララは、解っているはずだ!」
そう言ってナムは、走って、ララの胸に飛び込んだ。ニャムは、涙を流して肩まで登り頭を撫でた。
「よく頑張ったね。もう、大丈夫だよ」
その言葉を聞いたララは、崩れるように座り込んだ。実際にララの足は、ぼろぼろになりヒビまで、ある。
「ララ、サラ、ごめんよ。君たちが、人間にニャりたいって思いは、ニャムの思い。ニャムの思いが君たちに影響受けた。
ニャムは、もう人間にニャりたいって思わニャい。かニャしい記憶も、嬉しい記憶も忘れたりしニャい。ニャムは、ニャムでいたい。猫のままでいい。他の誰かにニャりたくニャい。
だから、だから、サラ、ララ帰って来てよ。もう、はニャさニャいから。何処までも一緒に居るから」
「うん。もう離さないでね」
ナムの頭を撫でようとしたララの手は、崩れ落ち彼女の顔は、優しい顔になって動かなくなっていた。それを見たナムは、涙を流し優しく抱きしめた。
「そこから離れろ!」
ラルクの言葉を聞いてナムは、ララの足元を見ると魔方陣が、現れていた。もう既に呪文は、成立していて、いつ発動してもおかしくない。しかし、肝心の術者であるララは、もう動かない。
「希望は、何時も心にある。心を忘れニャいかぎり希望は、消えたりしニャい」
小さくそう呟き喉を鳴らしながらララの頬を摩りミウを見た。
「ヴンダー」
ナムは、優しい顔でまた目を閉じたその時、ナムの体をつるのようなものに覆われそのツルは、ララの体も覆い尽くした。完全に姿が見え無くなり形しかわからなくなってしまった。
そして、白い花が咲き乱れ足元にあった魔方陣は、いつのまにか無くなっていた。
人形兵も動きは、止まり崩れるように壊れてた。
「ナム!」
ミウは、走ってナムのところへ向かったが、既に動かなくなったララとナムがいた。
「ナム、ナム……っ!そんな……どうして、君が……」
ミウは、しゃがみこみナムを優しく触った。白い花。ナムは、猫の妖精。花を咲かす力は、ないはずだ。
慌てて現れたビオラは、それを見て、目をそらした。
「妖精が死ぬ時、その者の心に刻み込まれた思いによって、花を咲かすの。ナムは、自分の命と引き換えに奇跡を呼び起こした。これは、幸運を呼ぶ者であるケット・シーでしか出来ない。
彼が咲かした花は、アサガオ。花言葉は“固い絆、あふれる喜び”だよ」
ミウは、その言葉を聞いて、アサガオを見た。アサガオ。ミウは、この花をよく知っている。色は、違うがナムとコンバットと3人で、よくこの花の前でいろんな話をしていた。
いろんな話し、たわいない話。将来の夢とか、明日何して遊ぶとか、今朝の話とか、ありふれた話した。胸が苦しい。頭が痛い。この思いは、よく知っている。
「……」
絶望したらダメだ。悲しみも苦しみも全て受け入れると決めたんだ。前みたいに記憶を切り取らない。忘れたりしない。もう二度とナムとコンバットを忘れたりしない。
「悲しみの記憶を背負って生きるんだ。大丈夫だよ。アークル。ボクは、もう大丈夫」
そう呟き息を整え目を閉じた。エルナ、コンバット、ナムを忘れない。彼らを忘れない。何度も絶望しようとも、何度も悲しもうとも、何度も、何度も大切な人が死んでも、記憶を捨てたりしない。
この苦しみを悲しみを捨てたりしない。
「ありがとう。ナム。君のお陰でボクは、前に進めた。君のお陰で、過去を取り戻せた。忘れたりしないよ。君の事を」
ミウは、アサガオを見て、ふとコンバットが言っていたある言葉を思い出した。
「だってボクらは、固い絆で繋がっているんだから」