27.2つの魂、1つの心(3)
プルートへ向かうラルクたちは、当然ながらワープ魔法を使った方が早いと解っているが、戦争を食い止めるためには、軍の大将を殺す事と王を殺す事だ。しかし二手に分かれるのは、安易な考えはない。
ネールへ向かうには、二国を繋ぐビーナスを通らないと国へは、入れない。その上にこの二国を繋ぐビーナスへの道は、1つしか無い。
そう考えたラルクたちは、歩く事にした。
「しかし、逃げも隠れも出来ない一本道で、どうやって大将を倒すん?」
「大将を殺すのは、あたしに任せて」
ビオラは、ニッコリ微笑みながらピースをした。
「あたしならパッと移動して、パパっと倒す事が出来よ。出来るだけ早く殺るから大丈夫ブイ」
「ビオラちゃん此処は、せめて真面目に言って」
「えへへ。ごめんね。
でも、あたしにしか出来ないと思う。あたしなら一瞬で行動が出来るし大将ぐらいなら見分けれる。あたしにやらせて」
その言葉にヨモギは、少しだけ考え頷き腰につけていたポーチからナイフを取り出した。
「ナイフだけど確実に殺れるか?」
「うん」
ビオラは、ナイフを受け取り深呼吸をした。それを見たナムは、耳をピクピクして、遠くを見た。
「んニャ!近くに沢山の足音が聞こえる!もしかして、ホヌ帝国の奴らだ!」
その言葉に反応して、ラルク達は、目を細めて遠くを見た。たしかに居るが、それは、想像遥かに超えた少人数だ。何百何千何万人とかを想像していたラルクは、言葉を失った。
「アレは、ひーふーみー…500人ぐらいだね」
「それだけ、国が汚染されているって事になるわね」
ビオラは、考えヨモギを見た。ビオラの視線を感じたのかヨモギは、目をそらし
「お前さんならパッと、パパっと出来るんだろ?」
ビオラは、その言葉の意味を理解してくるりと回った。
「出来るよ。でも先ずは、話をして、ダメだったら、ね。オーケー?」
「ああ」
そう言って、歩き出した。
兵士は、ラルク達に気が付き足を止めた。兵士の何人かは、ザックの存在に気が付き剣を構えるものもいる。
「ルティス王国の女王の代理として、ワシらは、此処にきた。我が国ルティス王国は、戦争を望んでない。だから、引いてくれ」
「望んでは、いないだと?なら何故“月読みのザック”がいるんだっ!」
「そうだ!お前は、前の戦争で我々エルフの命を多く奪った大罪人だ!」
「お前こそが、死ぬべきなんだ!」
エルフ達は、ザックに向けあらゆる暴言を言い始めた。ザックは、言い返すことも出来ず歯を食いしばり深呼吸をした。
「うるさいなー」
後ろの方から声がして、皆をかき分けるように現れたのは、いつぞやの女の子を風した人形ララだ。ララを見たナムは、顔色を変えこう言った。
「ララ!サラは、どうした!?」
「サラ?あ、ララちゃんの半分を持っていた人形ね。そんなの決まってるじゃない。ララちゃんは、1つになりたかったから返して貰ったんだよ。いらなくなったゴミは、ちゃんとゴミ箱へ捨てたよ。確か、燃えないゴミだったよね?」
「サラは、ゴミじゃあニャい!ララとサラは、2人で1つの人形ニャんだ!」
ララは、首を傾げてナムを見下ろした。かつては、コンバットとして人間の姿をしてたが、猫の姿になっている彼を見て、哀れな目で見た。
「ゴミよ。要らない物、必要無い物、役に立たない物、壊れた物…皆んなゴミ。ゴミは、ゴミ箱へ捨てる物だよ。
だから、ララちゃんは、綺麗にお掃除をする為にこうして、ここに居るんだよ」
そう言って、両手を上げてくるりと回った。すると、兵士の半分以上が、人形へと変わり、人形の隣に立っていたエルフは、驚き騒ついた。
「皆んな、お掃除の時間だよ」
ララは、不気味な笑みを浮かべてそう言った。