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蝿はタオの机の上を移動している
「こっちに来て そして右に曲がって ゆっくり向きを変えて」
タオは蝿に語りかける そして蝿はその通りに動く チェスの駒のように
蝿は自分の思考とタオの言葉を区別していない
蝿はタオが言うままに2本の足を上げたり、旋回したりする
長い時間はやらない 混乱して早く死ぬことが多いからだ
タオは他の生き物の思考に入り込むことができた とても小さい頃から
そのことはタオしか知らない
時計の見方がわかるようになった4歳の時、タオはリビングの円形の水槽にいる金魚を時計の針と同じ位置に移動させる遊びを始めた
3ヶ月後に金魚の知性的な行動に気づいた人たちによって金魚は地元の新聞で紹介された
今でもその写真は母親の電子ピアノの上に飾られている
レンズを見つめるタオを母親は微笑みながら見つめ金魚は水槽の右端に集まっている 時計は15時を指している
タオは蝿に語りかけるのをやめた
蝿はしばらく部屋を飛び回ったあとで空に飛びさった