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二人と幸せ

瑠璃ちゃんの高校の合格発表も済み、みごと俺が働いている高校への進学が決まった。いつものメンバーたちの無事合格したらしく、これで晴れて春からは高校生ということになる。

そんなわけで色々と準備をするものがあるのかと言われれば、そんなことはない。だって俺がほとんど準備したし。自分の学校のことだから、前もって準備するものから年間スケジュールまで全部頭に入ってるし。もちろん瑠璃ちゃんが自分で準備しないといけないものは自分で準備してもらったし、俺がやったのはその他のことだけ。

恭子も無事に就職先が決まり、春からは保育士として働くことになった。恭子の仕事が落ち着いてきたら、婚約することも視野に入れている。これは恭子にも言ってあることで、共働きではあるが、幸せに暮らしていきたいと考えている。

とはいえ、環境は変わるがほとんどが現状維持である以上、いつも通りの日常を送れるということが、なによりの幸せだと思っている。


「それは正親さんだけだよ」

「そうそう。正親だけは三回目の一年生の受け持ちでしょ? 私も瑠璃ちゃんも初めてだらけなんだから現状維持なんてムリムリ」


そんなことを得意げに語っていたら、両隣からツッコミを受けてしまった。

テレビもつまらなく、出かける予定もなく、特にすることもなかったので、なんとなく三人で並んで座っていたのだ。


「高校生活も保育士生活も、どっちもすぐに慣れるって」

「友達作んなきゃ!」

「瑠璃ちゃんならすぐに友達できる気がする」

「俺も」

「えへん!」


胸を張る瑠璃ちゃん。こっちのほうも成長してきました。

なんとなく、こういうところに目がいっちゃうと、成長したなーって思えちゃう。エロ目線じゃありません。親としての目線です。


「正親さんに授業を教わるのが楽しみなんだー」

「勉強が楽しみとか、さすが瑠璃ちゃんだね」

「恭子だって似たようなもんだったじゃん」

「まぁ正親の授業の時のたんびにワクワクしてたわ」

「正親さんの授業って面白いの?」

「いや、今みたいな感じ。結構先生の中では、やる気なさそうに授業してるよ」


あれ? 俺ってそういうイメージだったの?


「そうなの? でも楽しみだなー」

「まぁなんにせよ、合格してよかったね。恭子も就職が決まったし、これで夢の保育士ですが、何かコメントを」


恭子にマイクを向けるフリをすると、オホンと咳払いを一つしてから質問に答えた。


「えー、一応夢が叶ったわけですが、これからがドリームロードのスタートなんで、気合入れて頑張りたいと思います。まる」

「真面目だなー」

「夢は叶ってからが本番、って言うでしょ」

「確かに、そこで気を抜いて崩れてもダメだもんな」

「じゃあ私も勉強頑張る!」

「勉強だけが全てじゃないからね。私なんか高校三年間は正親に会いに行ってたようなもんだもん」

「恥ずかしいからあんまり言わないでください」


そんな会話をしつつ、おやつの時間が過ぎようかというこの時間。

こんなにのんびりとした時間を過ごすのはいつ以来かなと思いながら、これから始まる新しい出来事に胸を躍らせつつ、今まであったことを振り返りつつ、三人で笑いながらダラダラと過ごした。

右側には、俺の人生の中心となってきた瑠璃ちゃん。本当に瑠璃ちゃん中心の生活を送ってきた気がする。瑠璃ちゃんがいなかったら今の俺はいなかったかもしれないし、宝くじで当たった金なんかもう残っていないかもしれない。

そして左側には、そんな俺を好きになってくれて、瑠璃ちゃんの姉のような存在となっている恭子がいる。恭子も支えてくれ……てはいないか。むしろ俺が支えてきた気がする。まぁそれでも俺の中ではただの生徒から未来の妻へと昇格したのは、人生においてとても大きな存在だと思う。それに複雑な瑠璃ちゃんとの関係を受け入れてくれて、瑠璃ちゃんの母親になるという覚悟もしてくれている。それでも思うのは、恭子との子どもも欲しい。とは思っているのだが、互いに瑠璃ちゃんが気になってしまってそこまで踏み込めていない。恭子には申し訳ないが、じっくりと考えて話し合っていきたいと思う。


こんなことを心の中では思っていたりするのだが、実際に口に出せる日はきっと来ないのだろうと思う。恥ずかしいし。

その代わりではないが、両隣の二人の肩に腕を伸ばしてそのまま引き寄せた。


「俺は幸せ者だなー」


突然の行動に、不思議そうに顔を見合わせる瑠璃ちゃんと恭子だったが、何かニヤニヤして言った。


「私のことももっと幸せにしてよね」

「正親さんより幸せになるのが私の目標だもん。負けないからね!」


そう言って二人して俺の身体に頭をグリグリと押し付けてきた。

俺はその重みに幸せを感じながら、二人の肩に回した手に力を込めて、これ以上ないような幸せを味わった。

これからも人生いろいろあると思うが、この二人を幸せにするために頑張っていくことに決めた、そんな日だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いてもらえると嬉しいです。


これにて最終回となります。

このあとにはあとがき、番外編をいくつか、そして最後にもういっちょあとがきでおしまいとなります。

細かいことはあとがきにて。


それでは本編をお楽しみいただきありがとうございました。

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