表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/89

発表

受験もあっという間に終わり、高校では卒業式があった。

まぁ特に変わったこともなかった。強いて言うなら『例年通りだった』と言えよう。普通が一番。

そんなこんなで日程の都合もあり、瑠璃ちゃんの卒業式には恭子と一緒に参加することができた。

受験が終わってからは、学校にいかなくてもいい日が増えたせいか、ウチに瑠璃ちゃんの友達が来る日も度々あった。とはいえ、いつものメンバーが遊びに来ていたのだが、たまたま居合わせた恭子の話によると、時々卒業を惜しむような会話が聞こえるらしい。やっぱり女の子三人は、それぞれ別の高校に進学することもあってか寂しいのだろう。

それもあってなのか、卒業式が終わった教室で、三人が集まって目に涙を溜めながら話しているのを見ることができた。ちょっともらい泣きしそうになったのは言うまでもない。

それをごまかすために、隣にいた恭子に話しかけた。


「恭子は中村とあーゆーのなかったよな」

「んー。なかったかな。高校って言っても二人とも家は遠くないし、香恵は結構サバサバしてるし」

「ってことは、恭子的にはウルッときて欲しかったってことか?」

「いやいや。私、あの時は正親の告白の返事を受け取ることで興奮してたってのもあるからさ」


興奮って。発情した猫じゃあるまいし。テンションっていいなさい。


「だからそれのせいで泣きはしなかったなー。そう考えると泣いておいたほうが青春したーって気がするよね」

「まぁな」

「正親はそういうのなかったの?」

「俺? 俺は、相手が宏太だぞ? ないない。微塵もなかったわ」

「あー……宏太さんならそーゆーの気にしなさそう」

「今現在も気にした様子はないしな。季節も時期もなんにも気にしないやつだから、卒業した次の日にウチに来たのはすごい覚えてるよ」

「想像できるわー」


そんなこんなで別れの会話を終えた瑠璃ちゃんが、廊下から中を見ていた俺たちの元へとやってきた。


「もういいの?」

「うん。亜里沙ちゃんもキララちゃんも家族でお出かけするんだって」

「そっか」

「だから私もお出かけしたいなー」


周りに感化される子になってきたな。いいんだか悪いんだか。

俺は小さく笑って『卒業祝いでも買いに行くか!』と言おうとしたとき、恭子が俺の肩を叩いた。なにかと思って見ると、指をさしており、その指の先にはこっちを見ている怜央くんとヒロトくんの姿があった。

この二人も瑠璃ちゃんにすんごい影響を与えた二人だ。

もちろんさっき女の子三人で集まる前に話していたのを見たので、別れの挨拶とかではないのだろう。となれば、アレだろうか。

そして俺と恭子が見ている視線を追ったらしい瑠璃ちゃんも、その先にいた怜央くんを見つけた。さすがの瑠璃ちゃんも何か察したのだろう。


「ちょっと行ってきてもいい?」

「もちろん。頑張ってね」

「そういうんじゃないよ!」


口ではそう言ってるが、そういう話だろうと思った。















正親さんたちから離れて怜央くんたちのところへ来ると、ヒロトくんが怜央くんの背中をバシッと叩いてどっかへ行ってしまった。

廊下だけど、二人だけの空間が出来上がった。


「えっと、武田さん。話があるんだけど、いいかな?」

「う、うん」


心臓がドキドキいってるのが聞こえる。

そう言った怜央くんは、大きく深呼吸をして『よしっ』と言って切り出した。


「僕、武田さんのことが好きです!」


そう言われて、顔が赤くなるのが自分でも分かった。


「その、いつから好きだったかとかはわからないんだけど、卒業するまでには伝えておこうと思って。あ、でももう卒業しちゃってるか」


アハハ、と笑って頭をかく怜央くんの顔も真っ赤だった。

怜央くんが言ってくれたんだから、私も返事をしなくちゃ!


「わ、私も怜央くんのこと、好き、です」


も、もじもじしちゃったけど、怜央くんの顔を見て言えた。すごい緊張した。きっと試験の時より面接の時より緊張したと思う。


「じゃ、じゃあ! 僕と、付き合ってください」

「……はい!」


私は怜央くんの差し出した手を握った。そして互いを見て、ニコっと笑いあった。


「そら見ろ! もっと早く告っておけばよかったんだよ」

「ヘタレヘタレー」

「瑠璃ちゃん! おめでとー!」


と、怜央くんの後ろ側の廊下の角から、みんなが出てきて言った。


「えっ、あれ? みんな帰ったんじゃないの?」

「ヘタ怜央がちゃんと告白するかどうか見てたのよ」

「こいつヘタレだからな」

「ヘタレヘタレ言わないでよ!」


ヒロトくんとキララちゃんが怜央くんにいろいろ言ってる。ずっと見てたのか。ちょっと恥ずかしいかも。

私のほうには、亜里沙ちゃんが笑顔でやってきた。


「おめでと」

「うん。ありがと」

「瑠璃ー! オメデトー!」

「あはは。ありがとー」


キララちゃんが抱きついてきて、ほっぺをふにふにしながら話しかけてきた。


「わざわざ怜央のために瑠璃に嘘ついてまでお膳立てしてやったのよー! 瑠璃に嘘つくなんて心が傷んだんだからね! ごめんねぇ!」

「ううん。キララちゃんも亜里沙ちゃんもありがとね」


あれ?


「っていうことは、家族でどっか行くんじゃないの?」

「行かないわよ?」

「あー……」


どうしようかと思って、後ろの方にいた正親さんを見ると、恭子ちゃんと一緒に笑って手を振っていた。

行ってもいいってことだ。


「じゃあみんなで遊びに行こ!」

「あれ? 怜央と二人でイチャイチャしなくていいの?」

「「しないよ!」」


思わず怜央くんとハモってしまって、二人して真っ赤な顔して目を合わせて、小さく笑った。


「なんだよ。もうラブラブモードか? 見せつけてくれるなよ」

「もともと両想いだったんだしいいじゃない?」

「フフッ」


何か言おうと思ったけど、何を言えばいいのかわかんなかったので何も言わなかった。

代わりにキララちゃんと亜里沙ちゃんの手を握った。

二人も手を握り返してくれた。

私たちの卒業式は、まだまだこれからだ!



ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いてもらえると嬉しいです。


オチナカッタ。


次回もお楽しみに!

次回、最終回予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ