受験
時間がぶっ飛びました。
なんやかんやあって、季節は冬真っ盛り。
今日は全校一斉高校受験の日である。
うちの学校も例外ではなく、学区内の生徒たちがあれよあれよと集まってきている。職員室で問題用紙を手にとって、試験官として準備をしている最中に、瑠璃ちゃんから一報あり『今席ついたよー。正親さんが試験官なら頑張る!』とのこと。俺は『残念ながら俺は試験官じゃありませーん。でも頑張ってね』と送っておいた。
瑠璃ちゃんのいないクラスに入り、顔も名前も見たことのない生徒たちに試験の概要と問題用紙を配り、俺の合図で試験を開始させる。
教卓横に置いておいた椅子に座って時間が経つのを待った。
数時間後、昼休憩を含めた全日程が終わり、明日の面接を残すだけとなった生徒たちは、各々友達と健闘をたたえ合ったり、早速答え合わせなんかをしている姿が見られた。
問題用紙を集め終わった俺は、職員室へと戻るために廊下へと出た。
その時だった。
「正親さん!」
聞きなれた声が後ろからパタパタという足音と共に聞こえてきた。
まぁ瑠璃ちゃんだろうなと思って振り返ると、中学校の制服を着た瑠璃ちゃんが目の前で止まった。
「廊下は走っちゃいけません」
「えへへ。正親さん、先生みたいー」
「先生だし。それに、学校では『先生』って言ってくれないと困るんだけど」
「はーい」
この顔はわかってない顔だ。
「そういえばテストどうだった? 受かりそう?」
その質問に、瑠璃ちゃんはピースと笑顔を見せた。
「バッチリ! 満点かもしれないよ!」
「それはないでしょ。ちゃんと俺が数学で三角付けておいてあげるからね」
「あー! 正親さんのイジワル! 職権乱用ー!」
ぷりぷりと怒る瑠璃ちゃん。
でも今までここに受かるために勉強してきたのを一番近くで見てきたのは、多分俺だと思う。
そんな意味も込めて、瑠璃ちゃんの頭の上に手を置くと、優しく撫でた。
「お疲れ様。受かるといいね」
「……ふふっ」
くすぐったそうに小さく笑う瑠璃ちゃんだった。
そして気がついたことが一つ。
「瑠璃ちゃん、大きくなったね」
「え? 今さら?」
「あんまり外で瑠璃ちゃんとこうやって向かい合う機会ってないから気がつかなかったけど、頭を撫でる位置が高くなった」
「背も伸びたよー。制服の袖とかちょっと短いもん」
両手を伸ばして袖の短さを見せてくれたのだが、最初は着られているような制服が、今では身体にピッタリピッチリしていた。普段から見てると全然変わっていく過程に気がつかないもんだ。
ついでにいうと、やっと朝に自分一人で起きれるようになった。高校生に上がる前にできてよかったと思っている。
「瑠璃ちゃんも高校生か。早いなー」
「早いかな?」
「ちょっと前まで小学校だったのにね」
「なんかおじさんくさーい」
そんな会話を交わし、続きは帰ってからということで、教室で待っていてもらっていた怜央くんの元へと瑠璃ちゃんは戻っていった。
そんな瑠璃ちゃんの後ろ姿を少し感慨深げに見て、時の早さを感じながら、俺も職員室へと戻った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
活動報告でもお伝えしましたが、時間をぶっ飛ばして、残り数話で完結となります。
詳細は活動報告をば。
申し訳ありませんがご了承ください。
次回もお楽しみに!




