寂しかったり会いたかったり
ねぇねぇ、TARITARIが始まると思った? TARITARIが始まると思った?
残念。シュウさんでした。
午後11時。
瑠璃ちゃんが寝て、パソコンで明日から始まる学校で使うプリントの準備を黙々としていた。
キリがいいところまで進み、休憩がてらコーヒーでも飲もうかと立ち上がったときに、パソコンの横に置いてある携帯がブルブルと震えた。家では基本マナーモードで、バイブだけがブーブーとなっている。
「こんな時間に誰だ?」
そう思って携帯を見てみると、天野からの着信だった。
「もしもし。どうした?」
『あ、起きてた?』
「明日授業で使うプリント作ってた」
『あっ。そしたら邪魔しちゃった的な? 切ろうか?』
「いや、大丈夫。気にすんな。んで、どうした?」
『えっと…ちょっと武田の声が聞きたいなぁって思って』
「なんだそんなことか。心配して損したわ」
何かあったのかと思って心配して電話にでたため、ちょっと肩透かしをくらった気分だった。
でも何もなくてホッとしたのも事実だ。
「前はありがとな。瑠璃ちゃんの面倒みてくれて」
『ううん。全然。いつでも言ってよ。私も香恵も瑠璃ちゃん好きだし』
「そう言ってくれると助かるよ」
『でも遠慮はしてよ?』
「はいはい」
小さく笑う天野。
電話越しに聞く天野の声は、どこか懐かしく聞こえた。
まぁ天野が高校生の時はほぼ毎日聞いてた声だもんな。そう考えたら天野の声を聞く頻度はすごい下がったんだと思う。
「こーやってゆっくり話すの久しぶりか?」
『そう? それこそ合宿から帰ってきたとき会ったじゃん』
「ゆっくりは話してないだろ。なんか引継ぎされてる気分だった」
『そう…いえばそうかも』
二人で揃って小さく笑う。
『高校時代は毎日のように会ってたもんねー。もしかしてちょっと寂しくなったんじゃない?』
「そんなことないって。こう見えても大人だからな」
『ふん。強がっちゃってー』
「お前こそ寂しくて電話してきたくせに。まだまだお子ちゃまだな」
『そんなことないしー。立派な大人だしー』
「うるせーって。俺からすればまだまだ子どもじゃい」
『うわー。ひどーい。恭子ちゃんは傷つきましたー』
「そーゆーところが子どもなんだよ。大人な対応をしてみろっての」
『……』
「天野? どうした?」
急に黙り込む天野。
そして鼻をすする音が聞こえて、天野の声が聞こえる。
『……会いたい』
「なに?」
『武田に会いたい。寂しいよ。子どもでもなんでもいいから会いたいよぉ』
突然、電話越しの天野は少し寂しそうな声でそう言った。
そう言えば最近全然会ってなかった。サッカー部の合宿の打ち合わせとか、それこそ大会も近かったり、新しいクラスのこととかで頭がいっぱいで、しかも瑠璃ちゃん優先で考えすぎていたせいか、天野のことをおろそかにしていたかもしれない。時々メールやら電話やらでやりとりはするけど、おろそかにしていたのは事実だ。
最近、自分のダメなところが浮き彫りになってきて、心に響く。
「わかった。外出てこれるか?」
『…うん。でも今プリント作ってるんでしょ? まだ途中なら違う日でも』
「それこそ気にすんな。じゃあお前の家の近くのコンビニで待ってろ」
『…ありがと』
俺は電話を切って、長袖の上からパーカーを羽織って外に出た。
そしてエレベーターで下に降りると、玄関に向かって小走りになり、外へ出た時にはそのペースはさらに上がっていた。
俺は何をしていたんだろう。
瑠璃ちゃんのことを手伝ってもらっているとはいえ、天野だって女の子だ。
俺ぐらいの年齢なら『互いのために会うのを我慢』とかは出来るのかもしれないけど、天野の場合は『俺のために我慢』っていう感じだったのかもしれない。
まだまだ子どもだと思っていたのは嘘じゃないけど、天野のことを信用しきっていて、心のどこかで『天野なら大丈夫』と思っていた部分もある。
それが今回、天野を悲しませる結果になってしまったのかもしれない。
俺は地下鉄1駅分の距離を走り続けて、天野が待っているであろうコンビニへと走った。
コンビニに着くと、天野が入口の横で立っていた。
「走ってきたの?」
「はぁはぁ。あんな泣きそうな声聞いたら、誰だって、急ぐっての…ゲホゲホッ」
「…大丈夫?」
何年ぶりかの長距離走で荒くなった呼吸を整えて、コンビニで家で飲みそこねた代わりの缶コーヒーを2つ買い、1つを天野に渡して、二人で飲みながら歩くことにした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
長くなったので、二つに分けちゃいましたごめんなさい。
投稿遅れてごめんなさい。
最近ストーリーが進まずに時間だけ進んでてごめんなさい。
百合ゲー買ってごめんなさい。
次回もお楽しみに!