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ジジを訪ねて30分

私は週末の土曜日、一人で正親さんのおじいさんの家へとやってきた。

おじいさんの家へは何度も来ているので、何の問題もなく来ることができた。

正親さんはサッカー部の練習があるから来れなかったんだけど、行くっていうことを話したときに『ついてく』とか『心配だし』とかって言ってた。じゃあちょっとは私の考えてることもわかってみてよって思った。でも正親さんが来ちゃったら、おじいさんの家に来た意味がなくなっちゃうから、来なくてよかったと思ってる。ごめんね、正親さん。


「いらっしゃい、瑠璃ちゃん」

「お邪魔します」


私が頭を下げると、おじいさんに招かれて家の中へと入った。挨拶もそこそこに、おじいさんの家の匂いがする廊下を進んでいく。時々お線香の匂いがするおじいさんの家は、ちょっと好きだ。

もちろん案内されたのはリビングで、いつものようにお茶とお茶請けのお菓子が置いてあった。


「さてとどっこいしょ」


そう言いながら私の向かいに腰を下ろすおじいさん。


「今日はどうしたんだい?」

「えっ」

「瑠璃ちゃんが一人で来るなんて初めてじゃろ。まぁ正親にも言えないことでもあるんじゃないかの?」


さすがおじいさん。


「えっと……いきなり言っていいんですか?」

「遠慮せんでええよ」

「な、なんか恥ずかしいな」

「ほほほ」


私はおじいさんに、今思っていることを全部話した。おじいさんは時々相槌をうったり、知らない子の名前が出てくると質問したりしながら聞いてくれた。

そして私が全部話終わると、お茶を一口飲んで、一呼吸おいてから口を開いた。


「ふむ。それで瑠璃ちゃんはどうしたいと思っているんじゃ?」

「どうって……」

「正親と彼女が結婚するじゃろ。それからもしかしたら子どもを産むかもしれない。まぁ産まないかもしれんが、それでも彼女はきっと子どもが好きなんだったらなおさら自分の子どもはほしいと思うじゃろ。その時、瑠璃ちゃんはどうしたいんじゃ?」

「だからそれがわからないからこうやって相談してるんです」

「いやいや」


おじいさんは首を横に振った。


「じゃあもしもじゃ。正親と彼女が結婚しなかったとしたらどうするんじゃ? 瑠璃ちゃんのことを気にして結婚しないとしたら?」

「それは……」


……わかんない。

正親さんと恭子ちゃんが結婚しないっていうことは、ずっと今の家で暮らしていくっていうことで、しかも私が原因で結婚しない?

そんなの……


「そんなの困る。私に気を使わないで、結婚して欲しいです」

「もしかしたら瑠璃ちゃんにはまだわからないかもしれんが、正親にとって、瑠璃ちゃんは一番なんじゃよ」

「一番?」

「そうじゃ。たとえ彼女がいても、ワシがいても、親友がいても、母親がいても、誰がいたって正親の一番は瑠璃ちゃんなんじゃよ」

「んー……」

「なんじゃ、その、瑠璃ちゃんのことが一番大好きなんじゃよ。だから瑠璃ちゃんのことを考えて行動してしまうんじゃ。正親の場合だと、多分自分のことよりも瑠璃ちゃん優先じゃろうからな」

「一番……」


嬉しいけど嬉しくない。


「難しい、です」

「ほほほ。瑠璃ちゃんは今、そういう悩みを持ってきておるんじゃ」

「おじいさんはどうしたらいいと思いますか?」

「ワシが決めてしまっていいのかい?」


おじいさんは笑顔で続けた。


「ワシが瑠璃ちゃんの人生を決めてしまうのは簡単じゃ。あーしてこーしてこうすれば丸く収まる、って言えばすぐに解決じゃ。ワシのほうが長く生きてるおるし、いろんなことを経験しておる。じゃがそれだと、瑠璃ちゃんが成長せんじゃろ。瑠璃ちゃんが解決して、丸く収まって、成長する。これが一番理想じゃが、人生は理想通りにはいかんのじゃ。そんな人生つまらんぞ? それでもワシが決めていいと言うなら決めても良いが、ワシは瑠璃ちゃんに、失敗するも成功するも、自分で決めた道を進んで欲しいと思っとる」


まっすぐに優しい目を向けてくるおじいさんの目をジッと見返すと、なんとなく答えが見えそうな気もしたけど、気がしただけで何もわからなかった。


「私…」

「ん?」

「私、もうちょっと考えてみる。どうなるかわかんないけど、自分で考えて、自分で決めた方法で頑張ってみます」

「そうかそうか。瑠璃ちゃんは頭が良い子じゃから、大丈夫じゃと思うけど、考えすぎも良くないからの。辛くなったらちゃんと友達に相談したり、正親に言えることなら言わないとダメじゃぞ?」

「はい。わかりました」


私が笑って頷くと、おじいさんも嬉しそうに笑みを作った。


「よし。せっかく来たんじゃし、今日は昼ご飯を食べていきなさい。まぁ簡単なものなら作ろうかの」

「私も手伝います!」

「おー。ひ孫と台所に立つ時が来るなんて、夢のようじゃのぅ。ほほほ」


それから私とおじいさんは、一緒に台所でお昼ご飯を作った。

おじいさんの言うとおり、私の人生なんだから、おうちょっと考えてみることにした。

結局おじいさんに相談しても答えは出なかったけど、正解に近づくことはできたと思ったそんな一日だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとテラ嬉しすww


傷ついてもなんでも自分で考えて行動した結果こそが、正解なのです。


次回もお楽しみに!

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