重い想い
「かくかくじかじか」
私は香恵ちゃんに、自分が思っていることを伝えた。
香恵ちゃんは驚いていたみたいだけど、何も言わないでずっと聞いてくれた。
その喋ってる間に、頼んでいたハンバーガーとポテトが来たけど、それに手をつけることはなかった。
「……で、そんなわけで、私はどうしたらいいと思う?」
「あー……う、うん。どうしたらいいんだろうね」
やっぱり香恵ちゃんでもわからないみたいで、頭をポリポリとかく。
「い、意外と重い話だったね」
「おもい?」
「あ、いや、なんでもない。あー恭子と武田って、そんなイチャついてんのか」
「でもイチャイチャするのは仲良しの証拠だって、キララちゃんも言ってたよ?」
「キララ? あのマセガキか。あいつだって、誰かと付き合ってるってわけじゃないでしょ。何を大人ぶった発言をしてるんだか」
「キララちゃんはね、ヒロトくんと付き合ってるよ」
「ヒロト……だと……? あんないい奴とあんなマセガキが付き合ってるのか! もったいないだろ! せめて瑠璃ちゃんにしろよ!」
ここにはいないヒロトくんに対して怒る香恵ちゃん。
「あーでも瑠璃ちゃんは怜央くんのものだから仕方ないかー」
「またそーやって言うー」
「あれ? 違うの?」
「……違わないけど」
「ほーらやっぱり」
下を向いてアイスティーのストローに口をつけると、香恵ちゃんはハンバーガーの包みをとって一口食べた。それを見て、私はポテトを一本食べた。
「瑠璃ちゃんはさ、自分の意見って言わないよね」
「そう?」
「そう思うかな。私はあれが欲しい。私はあそこに行きたい、ってやつ。まぁ武田の前ではあんまり言ってるの見たことないかな。そのほうが武田としては楽なんだろうけど、あたしから見ると自己主張が無いって思う」
「自己主張……」
「もっとさ、武田だって一応は父親なんだし、家族なんだから、わがままは言ってもいいと思うなー」
香恵ちゃんがハンバーガーをもう一口食べてから続ける。
「でも今回のことはさ、言ったらダメだと思うんだ」
「えっ? 今の話はなんだったの?」
「なんていうの。予防線的な? 先に『瑠璃ちゃんはこーゆー子だよー』っていうのを説明しておいて、『でもこれはやっちゃダメ』って言うと、効き目あるでしょ?」
「言えたらもう言ってるもん。でも恭子ちゃんも自分の子どもは欲しいだろうし、正親さんも同じこと思ってるかもって考えたら、余計に言えなくなっちゃって……このことは誰にも言ったらダメだよ?」
「言わないって。このジュースとポテトが証拠です」
「おごってもらったのに?」
「あたしがおごってあげたの。だから信用してくださいな」
そう言って、パクパクと残りのハンバーガーを食べきると、ポテトを一個つまんで食べた。私におごってくれたはずのポテトじゃなかったの?
「でもさ、それってちょっと難しいよね。私はまだ子どもがいないし、むしろこれから彼氏ができるかできないかの瀬戸際だからぶっちゃけ何とも言えないんだよね。しかも瑠璃ちゃんの場合って特殊じゃん。なおさら人生経験が豊富じゃないとわかんないよね」
「人生経験豊富かー」
「そーゆー人いないの? って、いないよねー」
「んー……あ、いる!」
「だよねー、っているんだ。てっきりいないのかと思ってた」
「正親さんのおじいさんなら人生経験豊富!」
「武田のじいさんって……大丈夫なの?」
「大丈夫!」
首をかしげる香恵ちゃん。
香恵ちゃんは会ったことがないからわかんないだろうけど、正親さんのおじいさんは私と正親さんを会わせてくれた人だ。だから何かいいアドバイスがもらえるかもしれない。
「よしっ。今度のお休みに会いに行ってくる!」
「まぁ瑠璃ちゃんがいいならそれでいいけどさ。まぁ頑張ってよ。あたしも頑張ってくるからさ」
「うん! 香恵ちゃんはその人と付き合うの?」
「んー……付き合う、かな。向こうの気が変わってなければだけど」
「変わってないから大丈夫だよ」
「どっからその自信が来るんだか」
「人は好きになった人を諦めるのには時間がかかるんだって」
「恭子の言葉だな」
「んふふ。正解ー」
「恭子を見てたら、諦めたら負けっていうのがわかるもんな。よし。今から会ってくるかな」
「おー! 積極的ー。頑張ってね」
「おう。これがあたしだ。またあとで連絡するね」
「いい返事を待ってるね」
そう約束した私と香恵ちゃんは、モスバーガーを出てすぐに手を振って別れ、違う道を歩いた。
私は家に帰り、あとから帰ってきた正親さんからおじいさんに連絡をしてもらって、今度の休みに会いにいく約束をした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
初モスバーガー。ロッテリア以外のハンバーガーショップの名前を初めて出した気がします。
正親の家の近所にロッテリアがなくて・・・おのれ邪気王!
次回もお楽しみに!




