豊平峡ダム
夏休みもそろそろ終わりかけというところで、俺と瑠璃ちゃんと恭子の休みが見事に重なったので、三人で出かけることにした。
レンタカーを借りて、晴天の中を軽快に走り抜けた。
向かう先は豊平峡ダム。どうやら紅葉が綺麗らしいのだが、まだ夏だからさすがに色づいてはいないはずだけど、海とかに行っても混んでるだろうし、恭子が実習続きだったことも考慮して、のんびりと観光することに決めたのだ。
助手席に座った恭子と後部座席に座った瑠璃ちゃんは、車の中に流れている曲に合わせてルンルン気分で歌を口ずさんでいる。俺はニヤけている。
「ダムっていうぐらいだからおっきいのかな?」
「どういうのを想像してるかわかんないけど、おっきいみたいだよ。ダムの上から放水してるとことか見えるんだって」
「おー。写真撮ってみんなに送ろーっと」
「私もダムなんて行くの初めてかも」
「俺も初めて。定山渓のホテルには泊まったことはあるけどな。家族で」
「家族、ね」
恭子がクスッと笑った。何を言わんとしているかは測りかねたが、この三人が家族として見えるかってことなのか、それとも単に彼女と宿泊したことがないってことを馬鹿にしているのか。前者であることを願いたい。
街中を抜けて登り下りが多くなり、やがて広い道を走り、そして山中を通って、定山渓温泉街へと入った。この辺は本当に変わらない気がする。旅館へと向かう観光バスや車を交わしながら温泉街を抜けて少し走ると、『豊平峡ダム』と書かれた看板が見えたので、その方へと曲がる。山道を走って、駐車場に入るまでに少し並んで、やっと駐車できた頃には11時になろうかというところだった。
「んー! いい天気!」
「空気が美味しい!」
「瑠璃ちゃん、わかるの?」
「え? わかんない。言ってみただけ」
「アハハ。なにそれー」
俺が車の鍵を閉めて伸びをしている横で、瑠璃ちゃんと恭子が楽しげに喋っていた。
てててーっと小走りで先へと行く瑠璃ちゃんを恭子が同じく小走りで追いかけ、その後ろを俺がのんびりと追いかけた。
ダムまでは徒歩でも行けるのだが、特にケチる必要もないので、乗車券を買ってダムと駐車場をつないでいるバスに乗って向かった。
「おー!」
「でっか!」
バスを降りた二人がそれぞれ声を上げた。
ダム自体はとても大きく、そこに溜まっている水の量ももはや湖と言っても過言ではなかった。
ダムの水を塞き止めている場所の上へと行ける道と、湖側を見に行ける道があったので、先に塞き止めている場所の上に行ってみた。ちょうど放水していたみたいで、コンクリートでできた大きな壁の真ん中辺りから決壊するかのように水が吹き出ているのが見えた。
「写真撮りたい!」
そう言う瑠璃ちゃんと俺と恭子が並んで交互にスマホで写真を取った。さすがに放水している場所と並んで取るのは無理だったので、背景は山と山の間から見える景色だった。
その後、移動して湖側へとやってきた。
こっちはこっちで、さっきまでいた場所を離れたところから見ることができて良い眺めだった。
そこにあった資料館にも入ってみたのだが、歴史がわかる資料しかなかったのでそそくさと出てきた。
そして出たところで、山を背景に写真を撮ることにした。
「合図したら撮ってね!」
瑠璃ちゃんを単体で取ろうとしたらそう言われたので、すぐに撮れるようにスマホを構えていた。すると瑠璃ちゃんがその場で大きくジャンプし、空中で『撮って!』と言われたので、慌ててシャッターボタンを押した。
横では恭子が楽しそうに笑っていた。
「どうだった?」
「あー、ダメだわ。着地しちゃってる」
「えー。正親さんのへたっぴ」
「正親のへたっぴー」
「あんなのいきなり言われたってうまく撮れないっての。ラグだってあるし」
「じゃあ次は二人で撮ろっか」
ということで、恭子と瑠璃ちゃんコンビでリベンジ。カメラマンは俺。
二回目ということで、なんとか撮影には成功した。
「撮れたー?」
画面には満面の笑みで空中に浮いている二人がバッチリと写っていた。
「おー。浮いてるっていうか、ジャンプしてるように見えるね」
「そのまんまじゃんか」
「テレビで見たふうには撮れないね」
「テレビ?」
「テレビだとあぐらかいたりしてた」
「瑠璃ちゃんもあぐらかいてみれば?」
「お尻から落ちて痛そうだからいい」
俺と恭子が揃って笑った。
そこは現実的なのね。
ダムを堪能した俺たちは、駐車場へのバス乗り、行きの時にわからなかった滝を目を凝らして見つけ、駐車場へと戻ってきた。
帰りに豊平峡名物の豊平峡温泉のカレーを食べて帰ることにした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいですしおすし。
秋ならレンタカーで行くことをオススメしたい。
今年の秋に行きましたが結構綺麗でした。
次回もお楽しみに!




