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同棲報告

そんなこんなで半同棲という形で、我が家に恭子が住み始めて早3週間。

キチンと親にも説明はしたということなのだが、なんとか時間をとって俺の方からも挨拶に行きたいと思っていた。

そしてついにやってきたその時。

現在、俺は恭子の家のリビングにあるソファに座っている。隣には恭子。その対面にあるソファには、恭子の両親が座っている。恭子にはお兄さんもいたはずだが、もうすでに一人暮らしをしていて家にいないとのこと。

恭子のお義母さんには、三者面談の時に会っているから初対面ではない。今日も『この人どっかで見たことあるような……』的な顔をして出迎えられたし。お義父さんのほうは完全に初対面。恭子から『優しい人だよ』と聞かされてはいたものの、いざこうして向かい合ってみると、やはり父親としての威厳があるのを感じる。


「それで、恭子と暮らしているというのは本当なんですか?」


お茶を配り終えたお義母さんの方から切り出してきた。

俺は嘘偽りなく答える。


「はい。恭子さんとは誠実なお付き合いを」

「ふん。誠実って、あんた教師だろ。教師が生徒に手を出したのに誠実も何もないじゃないか」

「うっ……」


お義父さんからの的確なツッコミに思わずひるんでしまう。


「お父さん! 手を出したのは私だって!」

「恭子! ややこしくなるから黙ってなさい!」

「あなた! 声が大きい!」

「すまん……」


お義母さんに注意されたお義父さんが萎縮する。


「ごめんなさいね。この人、自分の娘が取られるからってちょっと意地張っちゃってるのよ」

「おいっ」

「お父さん、いつもこんなキャラじゃないんだよ」

「そうなんですよぉ。もっと恭子にはデレデレしちゃってて」

「そ、そうなんですか……」


俺も他人から見たら瑠璃ちゃんにはデレデレ甘やかしているように見えるのだろうか。

きっと見えるだろう。

その二人を黙らせるためなのか、お義父さんが咳払いをした。


「オホン。とにかく。正親くん、だったかな。君は恭子と結婚したいと思って同棲をしているのかな」


すごいストレートに聞いてくるな。

結婚か……。

俺は背筋を伸ばして姿勢を正して答える。


「今すぐにはお互いの事情もあるので何とも言えませんが、いずれは、と思ってます」


その答えに、恭子が小さく笑ったのが聞こえた。

恭子にもまだ言ってなかったから、嬉しかったのだろう。俺自身、少し恥ずかしい部分もある。


「こんな十歳も年下の恭子に本気になれるのかい?」

「はい」

「そうか。それは良かった」


そう言ってお義父さんは、少し頬を緩めた。

その顔が少しだけ恭子に似ているような気がした。やっぱり親子なんだな。


「ところで、娘さんがいるんですって? 前にうちに来たことあるんだけど、瑠璃ちゃんっていう」

「あ、はい。でも血は繋がってなくて、養子ですけど」

「養子? 失礼だったら答えなくてもいいんだけれど、教師ってそんなに儲かるのかしら? まだお若いのにそんな大きな子どもまで育てて」


あー……これは宝くじのことまでは話さないとダメか。

説明しないと教師の薄給は有名だから言い訳はできないだろう。


「実は宝くじ当てて、今二億ぐらい持ってるんです」

「え?」

「ま、正親くん。意外と冗談を言うんだね。はは」


ポカンと口を開けるお義母さんと、わけがわからないよと苦笑するお義父さん。


「これがまた事実で……。そのお金で瑠璃ちゃんを育ててるんです」

「事実……」


そう呟き、顔を合わせる両親。

そしてお義母さんがクワッと目を見開いて恭子の両肩に手をバシッと置いた。いや、叩いた。


「恭子! でかしたわよ! すごい玉の輿ね!」

「お母さん、痛いって。私、別に正親のお金を好きになったわけじゃないからね」

「……違うの?」

「違うよ! なにげに失礼だよ!」


恭子がお義母さんの両脇腹に手を伸ばすと、サッとそれをガードするために肩に乗せていた手をそちらに移動させてガードした。そしてそのままズルズルと後退りをして座っていたソファへと腰を下ろす。あのガードは熟練されたものだった。相当触られたくないのだろう。


「恭子」

「ん?」

「お前、もし結婚するとして、その子の母親になるんだぞ? その覚悟は出来てるのか?」


お義父さんの言葉に、俺は恭子を見た。

恭子はドキッとした顔を見せたが、すぐにフッと微笑んで答えた。


「もちろん。でも正親よりも瑠璃ちゃんとのほうが歳が近いから、姉妹みたいな感じになるかもしれないけど、ちゃんと覚悟はしてるよ」

「そうか」


そして小さく一言付け加えた。


「恭子も大きくなったな」


その言葉は全員に聞こえたのか、恭子とお義母さんは小さく微笑み、俺はお義父さんに自分の将来の姿を重ねた。俺も瑠璃ちゃんを送り出す日が来るのだろうか。そう考えると悲しいような誇らしいような。難しいな。

俺の方が父親としての自覚が足りないような気がしてならなかった。


とにもかくにも、恭子のご両親からは半同棲どころか、その後の同棲までも認めてもらい、今後結婚・婚約することがあれば、また挨拶に来てくれればいい返事を返すとまで言われてしまった。

それはまだ先のことかもしれないし、もしかしたらすごい近いのかもしれない。

それでも俺と恭子は、二人のペースで進んで行くことを約束した。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


コメディとはなんだったのか。


次回もお楽しみに!

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