心配・看病・お見舞い
タイトルはオーズ風。
「ケホケホ」
「大丈夫?」
「大丈夫だって。だから正親さんは早く行って。遅刻しちゃうよ」
「なんかあったら連絡してね。中学校には連絡しておいたから、ゆっくり寝ててね」
「うん」
「じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい。ケホケホ」
2年生もあと少しで終わろうかという冬。
中学生になって初めて風邪をひいてしまって、学校を休んだ。
日曜日の昨日がピークだったんだけど、今日も大事をとって休むことにした。無理に行って悪化しても困るし。
そんなわけで学校を休むって言った私を過剰に心配して、自分も休むと言っていた正親さんをギリギリで出勤させた。心配してくれるのは嬉しいけど、正親さんが休んで生徒さんたちが困るじゃん。それに正親さんが休んでも私の風邪は治らないし。
ケホケホ。
もう軽い咳ぐらいだから寝てれば大丈夫だと思う。
とは思っていたのだが、昨日からずっと寝て起きて寝て起きてを繰り返していたので、全然眠れなかった。
ちょっと起きようと思ってテレビとかつけてみたけど、再放送のドラマとか通販とかニュースとかがやってた。ドラマを見てても途中からだから全然わけがわからないし、通販も健康食品とかで、今頼んでも届くのは風邪が治ってからだからあんまり意味がない。ニュースも政治の話ばっかりで何言ってるのかよくわかんない。
こんな時にDVDとかあれば退屈しないんだろうけど、正親さんも私もDVDは買わないからなー。
とりあえず掛け布団を持ってきて、ソファに横になって掛け布団にくるまり、BDレコーダーに入っていたドラマを見ることにした。
ふわっと垂れ流しにしていたとき、そばに置いていたケータイが鳴った。
「あ、キララちゃん」
メールの本文には、私の風邪の具合を心配する内容だった。
私は大事をとって寝てるということを返信した。
ってゆーか今、授業中だよね。授業聞かないと、テストの点数悪くておばさんに怒られちゃうのに。
ちゃらららーんちゃららーん。
いつの間にか寝てしまっていたみたいで、床に落ちたケータイが音を立てていた。
寝ぼけたままで慌てて拾うと、キララちゃんからの電話だったので、すぐに出た。
「もしもしっ」
『あ、瑠璃? 今下にいるんだけど、瑠璃いないの?』
「ごめん、寝てた」
『そうだったの? だからメールの返信なかったのね。お見舞いに来たんだけど…帰ったほうがいい?』
「大丈夫…ケホケホ」
『大丈夫? 私たちに移さないでね?』
「頑張る」
『ハハハ。じゃあ下開けてもらってもいい?』
「あ、ごめん。今開けるね」
急いでソファの上の掛け布団を自分の部屋にぶん投げた。
そして少しして、玄関のインターホンが鳴ったので鍵を開けてキララちゃんを出迎える。
「いらっしゃーい」
「急に休むんだもーん。びっくりしたわ。大丈夫?」
「瑠璃ちゃん大丈夫?」
出迎えた私に抱きついてきたキララちゃん。その後ろには亜里沙ちゃんと…
「武田さん、大丈夫?」
「大丈夫かー?」
怜央くんとヒロトくんもいた。
私は自分がパジャマを着ているのがなんか恥ずかしくて、キララちゃんをクルリと反転させて後ろに隠れた。
「瑠璃?」
「怜央くんとヒロトくんも来てたの?」
「そりゃ来るでしょ。…連れてこない方が良かった?」
「だって今パジャマだし…」
「病人が何言ってるのよ。ほら、部屋行くわよ」
キララちゃんにグイグイと押されて自分の部屋へと押しやられる。
「なにこれ!?」
「あっ」
部屋に入るなり一番最初に飛び込んできたのが、さっきぶん投げた布団だった。
「なんでこんなとこに布団が落ちてるのよ。あーもう。瑠璃、寝なさい。布団かけてあげるから」
「あ、うん」
私がベッドに寝転がると、キララちゃんが優しく布団をかけてくれた。やっぱりキララちゃんはなんだかんだ言っても優しい。
思わず『えへへ』と笑ってしまい、キララちゃんに変な顔をされた。
私たちに続いて入ってきた三人は床に直接座り込んだ。
「瑠璃ちゃんが風邪引くなんて珍しいよね」
「風邪引くっていうことはバカじゃないってことだろ」
「じゃあ風邪ひかないヒロトはバカってことだね」
「怜央。俺だって風邪ひくっての」
「最後にひいたのいつ?」
「……ノーコメントで」
みんなでアハハと笑った。
「とりあえずなんともなくて良かったわ。もっとひどいかと思ってた」
「昨日は一日中寝てたんだよ? 正親さんがつきっきりで看病してくれてた」
「さすが正親さんだ」
「インフルエンザとかにかかったら、手術とか受けさせそうだもんな」
「わかるわかる」
みんなでワイワイと話す。
時々咳は出るけど、このほうが早く治りそうだった。
「そういえばお腹減ってないの?」
「あ。減ってるかも」
「なんか作ってきてあげようか? 亜里沙が」
「私が作るの? いいけど、なにか食べたいものある?」
「キララは料理できないもんな」
「やればできるし。やらないだけだもん」
「ハハハ。でもガス台の上に正親さんがおじや作ってくれてるから…」
「じゃああっためて持ってくるね」
「おー。じゃあ俺も行くよ」
「じゃあ私も行っちゃおうかなー」
そう言って亜里沙ちゃん、ヒロトくん、キララちゃんの三人が立ち上がった。
「じゃあ僕も」
「何言ってるのよ。誰が瑠璃の面倒見るのよ」
「そうだそうだ。だから怜央は残ってろ」
「ちょっと!」
「病人の前で大きい声を出すなって。あとは任せたぞー」
そう言って怜央くんを残して部屋を出ていった三人。
そして私の部屋には怜央くんと私だけになった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
長くなってしまったので、次回もこの話が続きます。
先に言っておきます。
このチキン野郎はまだ告白しません。
次回もお楽しみに!




