人気者
ヒロトくんは、みんなに人気がある。
運動は結構できる方だし、顔もかっこいい。
時々部活に入ってる人から誘われてるっていう話だけど、全部断ってるらしい。
「なんで部活入らないの?」
「だって部活入ったら遊べないじゃん。体動かすのは好きだけどさ、毎日あんなに汗だくになってまでやりたいと思わねぇもん。それにどのスポーツにするかとか、一つに絞れないし」
というのが理由らしい。
昼休みとか放課後に、部活の人たちに混ざって遊んでるのを見かけるけど、それはそれで楽しそうに見える。
そーゆーのを見ると、私たちのグループの中で運動が得意なのがヒロトくんだけっていうのが、なんか申し訳なく思う。
私は体を動かすのは好きなんだけど、あんまり得意ではない。好きと上手いは別だって小学校の時にも言われたし。
そして、そんなヒロトくんの親友である怜央くんも、人気者だ。
ヒロトくんとは違って運動はそこそこだけど、勉強ができて優しいっていうのは、キララちゃん曰くポイントが高いらしい。
時々、学校の中を一緒に歩いてて、私の知らない人とすれ違うときにも、ニコニコと挨拶を交わしてる時がある。
「誰?」
「さぁ? 挨拶されたから思わず挨拶しちゃった」
怜央くんのそーゆーところはちょっとわかんない。
でも怜央くんが優しいっていうのは、昔から知ってることだし、私と最初に仲良くなってくれたのも玲央くんだった。
私も大好き。
……大好きなんだけど、別に怜央くんとそーゆー…その、エッチなことをしたいとかっていうのは思わない。
キララちゃんが前に言ってたみたいには思わないけど、怜央くんのことは好きだ。
だからこれは恋愛感情ではない……のかな。
まともに恋とかしたことないからちょっとよくわかんない。
たまたま亜里沙ちゃんと二人で帰る時があったから、聞いてみた。
「亜里沙ちゃんは好きな人いる?」
「ええっ!? えっと、私はそーゆー人はいないかな。瑠璃ちゃんは?」
「私はよくわかんない」
「わかんないの?」
「うん」
「ふーん」
亜里沙ちゃんはキララちゃんと違って深くは聞いてこない。
何気ない会話ができて、キララちゃんと違った感じの会話が出来る亜里沙ちゃんのことが私は好きだ。もちろんキララちゃんも好きだけど。
キララちゃんは友達思いで、なにより面白い。
私も亜里沙ちゃんもそこまで行動派じゃないから、いっつも私たちを引っ張ってくれるのがキララちゃんだ。
「瑠璃は、いい加減に怜央とくっついちゃってもいいと思うのよ」
「くっつく?」
「付き合っちゃえばってこと」
「でも私、付き合うとかよくわかんないし」
「そんなの付き合ってから考えたらいいじゃない」
「うーん…キララちゃんはヒロトくんと付き合いたいの?」
「そりゃ付き合いたいわよ。あんな優良物件」
「じゃあ告白するの?」
「…まだその時じゃないわ」
キララちゃんはなんか大人っぽい時がある。
でもその時も顔を赤くしていたから、可愛いって思う。
とは言っても、キララちゃんが言うように私も怜央くんのことが好きなのかとも思う。
前に仲直りする時に抱きしめられてから、ちょっと意識するようになっちゃって、怜央くんに触れるのがちょっと怖い。いや、怖いっていうか、ちょっと恥ずかしいのかなって思う。
それに怜央くんにニコッて笑われると、こっちも笑顔になるし嬉しい。
これが恋なのかどうかはよくわかんないけど、みんなに対する『好き』と怜央くんに対する『好き』はちょっと種類が違う、かな?
でも今のままで十分だし、付き合いたいとも思わない。
「…うーん。難しいなぁ」
私は、正親さんがまだ帰ってこない家の中で、ソファに寝転がりながら呟いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とかうんぬん。
週刊化になりそうでしたがなんとか大丈夫でした。
そして遅くてごめんなさい。
次回もお楽しみに!




