連絡とれず
宏太と連絡が取れないまま、かれこれ1週間が経った。
何度もいろんな形で連絡を送ってはいるのだが、なかなか連絡が帰ってこない。
3日目には家に行ってみたが、鍵がかかっていて中までは確認できなかった。まさか部屋の中で死んでいるなんてことはないと思い、結局ただ帰るだけとなってしまった。
そして今日まで、悶々としながらの日々を過ごしていたのだが、俺は意を決して、元カノの友里江に連絡をとってみることにした。
とはいえ、連絡先を知っていたわけではないので、人伝いに聞いて、やっとこさの連絡となった。宏太がいればもっと早かったのだが、それは無理というものである。
『正親? どうしたの?』
「宏太に連絡がつかないんだ。なんか知ってるんだろ?」
『知ってるっていうか見ただけよ』
「見た?」
『そうそう。たしか11月に入ったばっかりだから…正親に会う4日前くらいかな。いつもみたいに地下道を歩いてたのよ。そしたら宏太くんがものすごいスピードで走ってたのよ。なんかあったのかなーって思って、連絡を入れたんだけど、何も返事がなかったの。で、正親も何も知らなさそうだったから、まぁいいやって思って今に至る』
ということは、誰も連絡を取れないってことか。
なんだ?
なんでだ?
考えられることは3つぐらい。
『連絡をできないくらい忙しい』
『事件に巻き込まれて連絡が出来ない(監禁的な)』
『もう連絡ができない状態にある』
こんなところだろう。
最悪、3つ目のは考えたくないな。
『…ちか。正親ー』
「あ、ごめん。何?」
『何、じゃないって。だから警察とかに連絡してみたほうがいいのかなぁ? さすがに私も心配だし』
「いやいや。宏太なら大丈夫だろ。もうちょっと待ってみたほうがいいって」
『何かあってからだと遅いのよ?』
そう言われると不安になるじゃん。
その後、他の人に連絡を取りまくって情報を集めてみて、それでもなにも分からなければ警察に連絡をするということで収まり、電話を切った。
そして大学の頃の友人、高校の頃の友人で、宏太のことを知っている人間で連絡が取れる人全員に連絡を取ってみた。
返事がこなかったり、ダイモンさんからメールが返ってきたりした人は除くと、ほとんど全員が知らないとのことだった。
一応恭子と中村にも聞いてみたが、知らないとのこと。
「瑠璃ちゃんは知ってる?」
「知ってたらもう言ってるよ。正親さん、大丈夫?」
「俺は大丈夫なんけど、宏太が心配だ」
「帰ってきてからずっとスマホいじりっぱなしだと疲れちゃうよ? 休んでご飯食べたら?」
「いや、もうちょっとだけ。先に食べてていいよ」
「いい。待ってる」
「そっか。ごめんね」
瑠璃ちゃんはリビングのテーブルで勉強をしている。
その姿を見ていると申し訳なくなってくるが、今は宏太の身の安全が第一である。
「あと宏太を知ってて連絡してないのは…」
連絡先の一覧をスクロールしていく。
「…母さんと父さんと兄ちゃんくらいか」
まさかとは思うが、一応聞いてみよう。何かわかるかもしれないし。
そう思い、母さんの携帯に電話をかけてみた。
『もしもし』
「もしもし。ちょっと聞きたいことあるんだけどいい?」
『ちょっと待ってね』
何か食べていたらしく、モグモグと飲み込んだらしい。
口に物を入れたまま電話にでるなよ。
『はい、どうしたの?』
「宏太と連絡が取れないんだけどなんか知らない?」
『知らないけど…何かあったの?』
「それがわからないからいろんな人に連絡とってるんだ」
『ちょっと待ってね』
そう言って、一緒にご飯を食べていたらしい父さんと兄ちゃんに聞いてくれていたが、知らなかったらしい。
『知らないって』
「そっか…」
『宏太くんのご実家にかけてみたら?』
「実家の電話番号なんて知らないっての」
『あら、じゃあ教えようか?』
「…なんで知ってんの?」
『宏太くんのご両親が、大阪に帰るときに教えてくれたのよ。てっきりあんたも知ってるのかと思ってたわ』
宏太の両親は、宏太が二十歳の時に大阪に帰っていった。当時、大学に通っていた宏太だけが北海道に残って一人暮らしをし、両親だけが大阪に帰っているので、実家は大阪にあることになる。
宏太とは俺が一番仲良かったし、宏太の両親にはお世話になったので、見送りをするという宏太についていこうとした。その頃はまだ実家だったために、その情報を耳に入れた母親が車で空港まで送ってくれたのだ。きっとその時に連絡先を聞いたのだろうと推測する。
「なんでそういうことをもっと早く教えてくれないのさ」
『今聞いたのにどうやって教えるのよ。じゃあ電話番号言うわよ』
「ちょっと待って、メモメモ…」
俺の声に、瑠璃ちゃんがノートとシャープペンを差し出してくれたので、それを借りて電話番号をメモした。
「ありがと。じゃあちょっと連絡してみる」
『何かわかったらこっちにも連絡ちょうだいね』
「了解。んじゃおやすみ」
電話を切ると、俺はすぐに教えてもらった番号に電話をかけた。
1コール…2コール…3コール…
「あれ、出ない」
『はい、もしもしー』
出ないかと思った瞬間に、電話の向こうから声が聞こえた。
しかも聞き覚えのあるあの声だ。
「宏太?」
『ん? 正親? どないしたん? ってゆーかなんでこの番号知ってるん?』
「……はぁ、疲れた」
『第一声がそれってひどくないか?』
色々と疲れた。
目の前で心配していた瑠璃ちゃんに口パクで『宏太、見つかった』と告げると、瑠璃ちゃんもホッとしたように笑って、ジェスチャーで『ご飯食べる?』と聞いてきたので、俺は頷いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
宏太の事情については次回。
最近、ここに書く事が無い。
どうしたもんか。
次回もお楽しみに!




