表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/89

見回りと監視

今日は高校の学校祭の2日目。


俺は学校の中をグルグルと回りながら見回り兼監視を続けていた。

恭子達が来るとか言ってたけど、教師である以上校内でイチャイチャするわけにもいかないため、会っても一言二言話して終わりだろう。

そう思っていた時期が俺にもありました。


「えー。じゃあ先生って教え子に手出したってことですか?」

「そうなんだよ。だから君も気を付けなよ」

「ちょっと香恵、変なこと言わないでよ」

「だって事実じゃん」

「君が瑠璃ちゃんかー。いつも亜里沙と仲良くしてくれてありがとね」

「亜里沙ちゃんのお兄さん。私のほうこそ仲良くしてくれてありがとうございます」

「もー。恥ずかしいからやめてよー。早く違うとこ行こうよー」

「おー。天野と中村じゃないかー。久しぶりだな。元気か?」

「秋山先生。相変わらずですね」

「高津先生落とせました?」

「難攻不落どころか振り向いてもくれん」


自分のクラスの前に来たとき、クラスの中から聞いたことある声が聞こえるなーって思って覗いてみたら、知った顔ばっかりあった。

しかも何気に秋山先生が恭子と中村を見つけて、廊下から教室に入って行くのが見えた。

『先生方の見回りと監視が学校祭を成功させる秘訣です』って伊藤先生が言っていたのを忘れたんですか、秋山先生。これを見たらきっと伊藤先生は泣いてるな。

あんまり騒ぐのもアレだから、クールに立ち去ろうと思ったとき、教室の中にいた中村が俺のことをちゃんと見つけてくれた。


「恭子! 武田発見!」

「なにっ!?」

「武田先生。せっかく彼女さんが来てるのにどこに行くんですか?」

「正親さーん」

「武田ー。天野と中村来てるぞー」


わー俺ってばもてもてー。

こうなっては仕方ない。俺は半ば諦めて教室内に入ることにした。

入るなり、瑠璃ちゃんと恭子がやんやーと近づいてくる。


「いたなら声かけてくれれば良かったのにー」

「正親さん、探してたんだよー」

「いや、ちょっと伊藤先生に悪くて声かけらんなかった」


二人に向かってそう言うと、その後ろでニヤニヤしている滝と吉田が視界に入った。吉田は依然無表情だが、オーラがそう語っていた。俺にはわかる。


「なんか吉田ちゃんが私のこと知ってるんだけど、話したの?」

「私のことも知ってたよ?」

「うっ…」


俺は思わず顔をそらした。

二人の可愛さに後光が見えたのではなく、視線に耐え切れなくなったのと吉田のニヤニヤが一段階上がったからだ。口元が歪んだ。間違いない。


「武田先生のケータイの待受を見せてもらったんですよ」


吉田! 余計なことを言うなと念を送っただろうが!

全員の視線が吉田に集まった。


「ケータイの待受?」

「どういうこと?」


二人の視線が俺に突き刺さる。これじゃノロケだ。公開処刑だ。

秋山先生の視線が痛い。


「見せてくれるよね?」


恭子に言われて、俺はポケットからスマホを取り出して大人しく渡した。


「ちょっとロック解除してよー」

「誰がするもんか」

「あっ、これねー。こうやって、こうっ」

「おー! さすが瑠璃ちゃん! でかした!」

「oh…」


瑠璃ちゃんが俺のスマホのロックをサラっと解除。

なんで知ってるの? 横で見てたからか?

そして現れる待受を見る恭子と瑠璃ちゃん。


「あっ! これ前に撮ったやつだ!」

「これ待受にしてたのかー。てか生徒に見せるとか、ノロケすぎじゃない? 恥ずかしいからあんまり自慢しないで欲しいなー」

「恭子! あたしにも見せて!」

「ダメだ! 中村だけはダメだ!」

「行けっ! 秋山!」

「合点!」


中村の声に反応した秋山先生が、俺の背後に回って羽交い締めにしてくる。


「ちょっ、離してくださいよ!」

「中村、俺にも見せろよ?」

「任せとけ。ってどれどれ…こいつは酷いな。恭子も瑠璃ちゃんも愛されすぎだろ。逆に恥ずかしいわ」

「私は嬉しいけどなぁ」

「ほれ」


そう言って秋山先生にスマホを差し出してくる中村。

ゆっくりと腕をほどく秋山先生。代わりに肩を組んで集団から少し離れる。

そして小声で一言。


「あんまりイチャイチャすんなよ?」

「いやいやいや。その発想はおかしいですって。どこにも俺写ってなかったじゃないですか」

「なんだ? 嫌味か? 自分が幸せだからっていう嫌味か?」

「もう勘弁してください!」

「オッホン!!」


なんやかんやとしていると、廊下から大きな咳払いが聞こえた。

俺と秋山先生がそっちを見ると、そこには伊藤先生が立っていた。


「秋山先生、武田先生。何をしているんですか?」

「いや、その、これはですね」

「見なかったことにしますから、見回りお願いしますよ?」

「「…はい」」


そう注意してスタスタと去っていく伊藤先生。

俺と秋山先生は、瑠璃ちゃん達に向き直ると襟を正した。


「そーゆーわけだから、俺たちは見回りに戻る」

「あんまりはしゃぐなよ?」

「プププ。怒られてやんの」

「うん。正親もはしゃがないようにね」

「お仕事頑張ってね」


俺と秋山先生は廊下に出て見回りと監視のために校内を巡回することにした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


亜里沙「どんな画像だったの?」

瑠璃「これ」

そう言って自分のケータイを開く瑠璃であった。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ