学校祭初日
賑やかな学校祭が始まった。
初めての学校祭は、1年生のほとんどがクラス展示で、当日は学校を回るのがメインになっていた。
今日も、キララちゃん、玲央くん、ヒロトくん、亜里沙ちゃん、そして私の5人で学校の中をブラブラと歩いていた。
「それにしてもあんまりダーンってした感じのはないもんだな」
「まぁこんなもんでしょ。派手なのは高校生からってお母さんも言ってた」
「ふーん。そんなもんか」
前を歩くキララちゃんとヒロトくんの後ろを、私を真ん中にして、玲央くんが左、亜里沙ちゃんが右と前後二列に並んで歩いている。
元々特に見たいところもなく、なんとなく雰囲気を味わってる感じがあった。
他のクラスの展示とか見たけど、それほど興味をそそられるものもなかった。日本の各都道府県の名産品とか、世界の有名なところとか、北海道限定商品の紹介とか、サラッと見ただけでほとんど素通りだった。
仕方なしに校内をブラブラ歩きながら、しゃべり続けていた。
そして一年生の教室がある3階の廊下を歩いている時だった。
ふと廊下の端を見ると、内海くんがつまらなさそうに壁に寄りかかっているのが見えた。
「あっ、内海くんだ」
私は駆け寄ろうとした。
でも一歩踏み出したところで、亜里沙ちゃんに腕をつかまれてしまった。
「瑠璃ちゃん、今日は私たちと一緒に回ろ?」
「亜里沙ちゃん…」
亜里沙ちゃんがそういうのは珍しいと思った。
そんなに内海くんと一緒は嫌なのかなぁ?
でも亜里沙ちゃんの顔を見てると、今は内海くんは誘わない方がいいような気がしてきた。
私はチラッと内海くんを見てから、亜里沙ちゃんを見て、怜央くんを見た。
玲央くんは小さく頷いて困ったように笑った。
「わかった。ごめんね」
「ううん。私こそ、その、ごめんなさい」
うつむく亜里沙ちゃんに、私は何も言えなかった。
そんなこともあって、学校祭の初日はあっという間に過ぎていった。
途中でみんなで入った三年生のお化け屋敷が、全然怖くなくて、笑いながら出てきたのは楽しかった。
5人で笑っていたはずなのに、怜央くんはなんか違うことを考えているふうにも見えた。
体育館に集まって、初日終了の集会みたいのをやってからの解散となった。
私は、ちょっと気になったから、玲央くんに聞いてみた。
「怜央くん」
「武田さん…」
「えっと…」
怜央くんに話を聞こうとしたとき、内海くんが横を通ったので、なんとなく内海くんには聞かれたくなかったので、怜央くんの手を引いて体育館を出た。途中で亜里沙ちゃんに、ヒロトくん達に先に帰っててもらうように伝言を言っておいた。
手を引いて向かったのは、玄関とは逆方向の西階段横の水のみ場。
そこで改めて怜央くんに話を聞いてみることにした。
「怜央くん」
怜央くんはななめ下を向いている。
私は構わず続けた。
「今日、楽しく無かった?」
「なんで、そう思うの? 楽しかったよ?」
「嘘つき。なんか違うこと考えてたくせに」
「…まぁちょっとだけ」
「もしかして私のせい?」
なんとなくそんな気はしてた。私が内海くんの話をし始めた時からなんか変だったから、そうじゃないかなーとは考えてた。
「武田さんは悪くないよ。僕が、考えすぎちゃってるのが悪いんだから」
「そんなこと言って、気にしてるんでしょ?」
「…気にしてないよ」
「やっぱり内海くんのこと嫌い?」
「嫌いって言うか……嫌いかな。武田さんにケガさせたからっていうのもあるけど…嫌いかな」
「内海くんの何が嫌いなの?」
「何って言われても、僕は全部嫌い。武田さんは内海くんのどこがいいの?」
「内海くんだっていいところあるよ? 優しいし」
「優しい? どこが?」
「どこがって、消しゴム拾ってくれたし」
「それなら僕だってヒロトだってするじゃん。内海くんに限ったことじゃないよ」
「……」
いつになく真剣な怜央くんに見られて、私が目をそらしてしまった。何も言い返せなかった。
内海くんと仲良くなろうとしてるのだって、『内海くんとは仲良くなれる』っていう私の勝手な思い込みで、内海くんが仲良くなりたいって思ってるわけじゃないし。
「もう内海くんに構うのはやめようよ。内海くんだってもうかまってほしくないって思ってるはずだよ」
「でも」
「武田さんは少しお節介すぎるんだよ」
「…お節介?」
「そこが武田さんのいいところかもしれないんだけど、それでも行き過ぎたらただのお節介だよ。余計なことしてたら仲良くなるものもならないって」
怜央くんは、そう言って私の横を通って去っていった。
私は何も言えず、あとも追えず、その場にしゃがみこんだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いてくれるとうれしいです。
なにやら不穏な空気。
筆が進むぜぇ!
次回もお楽しみに!




