悩む中学生
夜ご飯を食べながら瑠璃ちゃんと世間話をしていた。
今日のメニューは、ナスとピーマンの味噌炒めとそうめんだ。
「瑠璃ちゃんのところは学校祭準備はどう? 順調?」
「『準備』は順調」
『準備』を強調して言う瑠璃ちゃん。
「ってことは何か問題でもあった?」
「内海くんと怜央くんと亜里沙ちゃんが仲良くならないの」
「また内海くんか…」
彼はもう放っておいたほうがいいよ、なんて瑠璃ちゃんには言えない。
頑固+負けず嫌い+おせっかい=瑠璃ちゃん。
こんな瑠璃ちゃんって、クラスの子達からはなんて思われてるんだろう?
すすったそうめんを飲み込んでから瑠璃ちゃんが話す。
「内海くんは悪い人じゃないのにさ、4人で固まって話そうとすると、みんな何も喋らなくなるの」
「んー…って言われてもなぁ…」
「みんな仲良くなってくれればいいのになぁ…」
もし内海くんと仲良くなって、みんなも瑠璃ちゃんのおかげで仲良くなれたなら、国はノーベル平和賞を瑠璃ちゃんに上げるべきだと思う。
人には合う合わない、って言うのがあるから、無理に仲良くならなくてもいいと思うんだけどな。
「正親さん。やっぱり私、内海くんに嫌われてるのかな?」
「えっ!? いや、そんなことないんじゃないかなー」
「まぁいいや。ごちそうさまー」
「はい、お粗末様でした」
二人で食器をかたずけてソファに座ってテレビを見始めたとき、テーブルの上に置いてあった瑠璃ちゃんのケータイが鳴り出した。
瑠璃ちゃんがケータイを見ると、『キララちゃんだ』と呟いてからケータイを開いた。どうやら電話らしい。
「もしもし」
そしてそのまま話しながら食事用の椅子へと腰を下ろした。
俺はテレビを見ながら瑠璃ちゃんのほうに耳を澄まして、会話の邪魔にならないようにと、テレビの音量を少し下げた。
「亜里沙ちゃんがそう言ってたの?」
キララちゃんの声は俺のところまでは聞こえてこない。
「うん。だって仲良くなりたいんだもん」
あー、これ内海くんのことか。
「だってキララちゃんとも仲良くなれたんだから…そうだけど、キララちゃんだって最初私にイジワルしてたじゃん」
『キャーーーー!』
キララちゃんの叫び声が聞こえてきた。
急に発せられたであろう奇声に、瑠璃ちゃんはケータイを耳から少し離していた。
「ビックリした。急にどうしたの?」
さすがの瑠璃ちゃんもビックリした模様。
「…うん。…うん。考えとく…うん、おやすみ」
そう言って電話を切ってケータイを閉じる瑠璃ちゃん。
そして俺の横に寄りかかるように座った。
「どうかしたの?」
「ちょっとだけ」
「そっか。がんばれー」
もう中学生なんだから、悩むのは当然だ。そうやって大きくなっていくんだし。
瑠璃ちゃんが助けて欲しいって言わない限りは何もしない。
話は聞くけど、それだけだ。相談には乗るけど、解決はしない。
子育てって大変だ。
だって本当は助けてあげたいし、介入してバババっと解決したい。
でもそれをしてしまうと瑠璃ちゃんが成長しないと思うから何も出来ない。そう考えると、親ってば無力だなぁって思う。
俺はそんなことを考えながら、横でへこんでいる瑠璃ちゃんの頭を撫でた。
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なにやらサイトの調子が悪い模様です。
運営が動くまでは辛抱するしかないですね。
次回もお楽しみに!




