初めての制服
正親さんを見送って、洗面所で髪を整えて、正親さんからもらったピンで前髪を留める。
ちょっと髪も伸びてきたかも。前までは肩に届くか届かないかくらいだったんだけど、今は肩よりちょっと下まで伸びてる。前髪も目が隠れるから、恭子ちゃんに教えてもらったように分けて、片方をピンで留めてる。
そして白いシャツ、黒いブレザー。首には赤いリボン。スカートは紺と白のチェック柄。
スカートは膝上10cmより上げないのが正しいみたい。
この制服を着始めてから、もうそろそろ2週間が経とうとしている。
来週からはゴールデンウィークが始まるけど、正親さんもサッカー部の大会で忙しいみたいだから、あまりどこかに行きたいとかは言いにくい。笹木さんとか玲央くん達に予定を聞いて、空いてたらいっしょに遊ぼう。もし空いてなかったら、家で正親さんの帰りを待ちながら勉強でもしてようかな。
そんなことを考えていると、あっという間に学校に着いてしまう。
前のおうちと同じくらいの距離なのに、今まで歩いたことのない道だから、いろいろ見ながら歩いているとあっという間だ。
中学校は小学校よりも大きくて、クラスも3クラスから6クラスに増えている。3年生も2年生も6クラスみたい。
玄関で上靴に履き替えて、3階の教室へと向かう。
私のクラスは6組で、階段を上った目の前にある3組の教室の前を通って、4組、5組の前も通って6組へと行く。
「瑠璃ー」
「あっ。おはよー」
「おはよー」
「おーす」
隣のクラスの笹木さんとヒロトくんが後ろから声をかけてきたので、私も振り返ってあいさつをした。
6年生までは同じクラスだったのに、2人とも別のクラスになっちゃったから、ちょっと寂しい。でも体育の時とかは同じだから、体育は楽しみ。
「あれ? 怜央くんは?」
「多分教室の中にいるんじゃね? こっちには来てない」
「そっか。見てみる」
私は2人にそう言って、6組の中に入った。
怜央くんとは同じクラスで、通路を挟んで隣に怜央くんが座っている。その席に怜央くんは座っていた。
私は自分の席にカバンを置きながら怜央くんにあいさつをした。
「おはよー」
「おはよう」
怜央くんは、カバンから教科書を出して机の中に入れていた。
「ヒロトくん達のとこ行かないの?」
「あっ、今行く」
残りを机の中に入れた怜央くんと一緒にまた廊下に出た。
笹木さんとヒロトくんが扉の横で話していた。
「おまたせー。何の話?」
「昨日のドラマの話」
「泥棒のドラマが始まったでしょー。それに出てくる人が私好きなのー」
笹木さんが腰をクネクネしながら顔を押さえてうっとりとする。
「瑠璃もカッコイイと思うでしょー?」
「んー、見てないからなぁ」
「見てないのー? もったいないって。見たほうがいいよー」
「じゃあ見てみよっかな」
「笹木はあーゆーのがタイプなのか?」
「タイプタイプ! カッコよくて背が高いなんて、それだけでカッコイイじゃない!」
「ヒロトも背が高い方じゃない?」
「ヒロトはダメよ。まだまだ子どもだもん」
「ふんっ」
「背が高い大人が好きなの?」
「大人ってゆーか、お兄ちゃんみたいなところがいいの。しかもカッコイイお兄ちゃん」
「もうそんな人いねぇよ」
「だからそれがドラマに出てた人なのー」
私にはよくわかんないけど、笹木さんは『背が高くてカッコイイお兄ちゃん』みたいな人が好きなタイプらしい。
「瑠璃はどんな人がタイプなの?」
「タイプ?」
「あんな人と付き合いたいーとかあるでしょ?」
「付き合うってあんまり考えたことないからよくわかんない」
「えー。もう中学生なんだから、そーゆーのも考えないとダメよー」
「ダメなの?」
「ダメなの。瑠璃だって可愛いんだからもったいないって」
そう言って私のほっぺをプニプニとする笹木さん。
「でも彼氏とか出来たら正親さんが怖そうだな」
「あーたしかに。『俺の娘は渡さーん!』とか言いそう」
「でも正親さんも恭子ちゃんと付き合ってるよ?」
「「マジで!?」」
笹木さんとヒロトくんが叫んだ。びっくりしたー。
3人とも恭子ちゃんと香恵ちゃんのとは会ったことないけど、私の友達ってことで話はしたことはある。
「えっ、恭子ちゃんって高校生の人でしょ?」
「今は保育士の専門学校行ってるよ」
「っていうことは、18歳か19歳だから…」
「正親さんっていくつだよ」
「28歳だったかな」
「10歳も離れてるんじゃん!」
「年の差カップルってやつね!」
「愛さえあれば年齢なんて関係ないんでしょ?」
私は笹木さんから聞いたことを言った。
「まぁそうだけど、ほんとうに年の差カップルを見ちゃうと、ビックリするじゃない」
「そうなのかなぁ?」
「俺もビックリしたし」
本当にビックリした様子の2人。怜央くんはどうなのかと思って顔を見てみると、ちょうど目が合ってしまった。
なんだろ。歯磨き粉でもついてたかな?
そう思って口元をこすっていると、ヒロトくんが笑っていた。
「怜央。もしかしてまだ瑠璃のこと呼ぶのに慣れてないから、話しかけづらいとか言ってんじゃないだろうなー?」
「そ、そんなことないよ」
『た、武田さん』と小さく言った怜央くん。
前まで『長谷川さん』って呼んでたから、怜央くんも呼びにくいんだと思う。
私も正親さんが『お父さん』になったけど、『お父さん』って呼ぶのはまだ恥ずかしい。それに正親さんは『お父さん』だけど正親さんだし。
「『武田さん』でもいいんだよ?」
「うーん…ごめんね」
「気にしないでよ」
「怜央ってばヘタレねぇ」
「ホントヘタレだな」
「そこ、うるさいっ。今まで『長谷川さん』って呼んでて、急に変えるってほうが難しいって」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ。なっ、笹木」
「ねー」
笹木さんとヒロトくんは、顔を見合わせて笑っていた。怜央くんも『ぐぬぬ』って言ってるし。
なんか私だけ仲間外れにされた気分。しょぼーん。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
どうしても瑠璃ちゃんの中学校生活を書きたい
↓
玲央くん目線だと物足りない
↓
新シリーズじゃん!
↓
瑠璃ちゃん目線解禁
ということでした。
夜中にぼっちデイズ更新してますー
次回もお楽しみに!