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ら~めん

少し歩いたところにあるラーメン屋は、昼時ということもあり少し混んでいた。

しかしカウンター席が運良く空いていたので、スムーズに席に座ることができた。

キョロキョロと店内を見回す天野。

店内は、木造っぽい天井の高い内装で、暗めの木がたくさん使われていてラーメン屋とは思えないようなラーメン屋だった。


「なんかシャレたとこだね」

「ここ初めて?」

「うん。こっちのほう来ないもん」


天野の家とは反対側だもんな。


「ここ結構美味しいんだ。時々夜に瑠璃ちゃんと来るし」

「へぇー」


やってきた店員さんにそれぞれメニューを告げる。

俺は醤油ベースのみぞれらーめん。天野はオリジナルの醤油ラーメン。

店員さんが去っていき、さっそく天野に聞いてみる。


「んで、なした?」

「あー…言いにくいなぁ…」


困ったような顔で笑いながらそう言う天野。


「なんだよ。言いたいことは言えって言ったろ」

「まぁそうなんだけどさ…わかった。言うから、聞いてね」

「おう」

「実は、瑠璃ちゃんとケンカ…いや、ケンカっていうのかなぁ? まぁケンカっぽい感じになってるんだよね…」

「…ケンカ?」


あんな仲良く姉妹みたいだった天野と瑠璃ちゃんが?


「なんでまた」

「色々と事情はあるんだけどさ、簡単に言うと、瑠璃ちゃんが私に嫉妬しちゃったみたいで…」

「嫉妬?」

「うん…」


そう言う天野はしょんぼりしていた。

天野としては、瑠璃ちゃんとこうなってしまったのは不本意だったのだろう。

そしてきっと瑠璃ちゃんの機嫌がよろしくなかったのは、これが原因なのだろうと思った。


「まぁ何が…」

「お待たせしましたー」


俺が口を開いたところで、店員さんがラーメンを持って現れた。


「こちらがみぞれで、こちらが醤油ですー」


それぞれの前に置いて去っていく店員さん。

そして俺はさっきの言葉を言い直す。


「まぁ何があったかは知らないけど、とりあえず食べるか」

「…だね。いただきます」

「はい、いただきます」


ズズズズ。

一口すすって話しかけた。


「どう? 俺、結構好きなんだけど」

「んーおいし。あんまりラーメンの善し悪しってわかんないけど、美味しいと思う」

「それは良かった。今日はおごってやろう」

「えっ、おごってくれないつもりだったの?」

「美味しくないって言われたらおごらないつもりだった」

「あぶねー。美味しいって言っておいてよかったー」

「でも美味しいでしょ?」

「うん。素直に美味しい」


そう言って笑顔を見せる天野。

ここでようやく天野の素直な笑顔が見れた気がした。

半分ぐらい食べ終わり、天野がポツポツと話し始めた。


「海に行ったじゃん。あの時さ、瑠璃ちゃんのために武田が計画してくれたわけだけどさ、私も武田と海に行けるって思ったら嬉しくてさ。それでちょっとはしゃぎすぎちゃったってのもあるわけですよ」


ストレートな麺で、ほぐす必要の無い麺を箸でほぐしながら天野は話す。


「それで武田とまぁ…イチャコラしちゃったわけじゃん。香恵にも言われたんだけどさ、浮かれてたなぁって思ってさ。そんで、家帰ってから全然瑠璃ちゃんと遊ばなかったなぁって思って…。それを瑠璃ちゃんにメールしたわけですよ」


そこで一口麺をすする。

俺は食べ終わっていたので、なんとなくレンゲでスープを一口飲んだ。


「その時にさ、瑠璃ちゃんから『恭子ちゃん、楽しそうだったね』って返信が来たのよ。絵文字も顔文字も何もなくね。それで私は『あーこれ、私が武田を独り占めしたみたいに思ってるんだろうなぁ』っておもって、速攻で謝りましたよ。そしたら『別に怒ってないもん』ってメールを最後に、返信が返ってこなくてさ…」


そんなにか。

でも瑠璃ちゃんだって友達と楽しんでたように見えたんだけどなぁ。


「瑠璃ちゃんも友達と楽しんでたように見えたんだけど、香恵が見てた分には、こっちのことチラチラ見てたらしいし」

「マジで?」


うわー。全然気がつかなかった。少なからず俺も浮かれてたってことなのか?


「でも私楽しかったから、正直あんまり謝りたくないんだ。これって大人げないのかなって思っちゃってさ」

「それで今日瑠璃ちゃんと話しに来たのか」

「まぁそれもあるけど…一番は武田に会いたかったってのが一番の理由かな」

「俺?」

「うん。こう見えても結構ベタ惚れしてるんだからね。なんていうか気持ちの再確認をしたいと思いまして」

「それはどうも」


そう簡単に答えたけど、心の中では心臓がばくばくと音を立てていた。ズキュゥウウウンときたのだ。

可愛い彼女にこんなこと言われて、クラッとこない彼氏はいないだろう。

天野が座っている側の左手で頬杖をついて、ニヤけそうになった顔を押さえながら隠した。


「それで1週間も経っちゃったんだ。もう、仲直りするのが怖くてさ…」


ラーメンを食べ終わった天野が、レンゲをスープの中に入れてグルグルと回した。

飲むつもりはないのだろう。

グルグルと回している天野から続きが話されることはなかった。

とりあえず入口の近くで待っている他のお客さんもいたので、俺たちは席を立って、ラーメン屋を後にすることにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


近所のラーメン屋さんがモデルです。


次回もお楽しみに!

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