海水浴
車を走らせること30分。
俺の運転する車は海辺の駐車場に停車した。車から降りて伸びをすると、猛烈に暑い日差しが襲いかかってきた。
近くにあった温度計を見てみると、外は30度を超えているらしく、絶好の海日和だった。
「あちー。頭禿げそう」
「お疲れ様ー」
そんな俺に天野が声をかけてきた。
声の方を見ると、ビーチボールを持った白いビキニ姿の天野が笑顔で立っていた。健康そうなからだに白いビキニが映えていた。隣には中村が腰に手を当ててだるそうに立っていて、天野と色違いっぽい黒いビキニを着て、上から薄手の灰色のパーカーを羽織っていた。
ちなみに俺は車に乗り込む前から水着だ。上にはTシャツを着ている。
「もう着替えたのかよ。まだ駐車場だぞ」
「下に着てたんだよねー。一刻も早く武田に見せたくてさー」
「嘘つけ」
「あたしは暑いから脱いだ」
「天野もそんなんだろ?」
「まぁあながち間違いではない。それよりどう? 似合ってる?」
天野がその場でクルリと一回転。
「なんかエロい」
「ほら言ったじゃん」
「なんで二人とも同じ感想なのさ!」
「「だってそう思ったんだもん」」
「息ピッタリだし…」
ホントになんかエロかった。白いビキニのせいか、下着に見えなくもない。
急に脱がれてその水着着てたら、ドキドキするわ。まぁビキニ全般そう見えるか。
「可愛くない?」
「可愛いよ。可愛いんだけどエロい」
「なんだろね。恭子が着てるからエロく見えるのかもしんない。にじみ出るエロさ?」
「にじみ出てんの?」
「はみ出るエロさ?」
「脂肪みたいに言わないでくれます?」
「天野って意外と着やせするタイプ?」
「はぁ!?」
「えっ、何? 俺、なんか変なこと言った?」
急に驚いた声を出した中村。ちょっとビックリして謝りそうになった。
そして呆れたように言う。
「…もしかして、まだヤッてないの?」
「ちょっと香恵っ、瑠璃ちゃん達もいるんだからそんなに大きい声出さないでよっ」
通常トーンで話した中村に、天野が小声で素早く注意した。
そして小声で続ける。
「で、どうなの?」
「それは…ねぇ?」
「あー、うん」
「マジかよー!」
頭を抱えて空を見上げる中村を前に、俺と天野は顔を見合わせてなんとも言えない顔で笑いあった。ザ・苦笑い。
「正親さん。行かないの?」
と、そこへ素晴らしいタイミングで瑠璃ちゃんが割り込んできた。
他の四人は既に歩きだしていて、瑠璃ちゃんだけが残ってくれたみたいだ。
「あーごめんごめん。んじゃ行くか」
駐車場からはそこまで距離はないので、必要最低限のものを持って海へと向かう。
海は混んでいた。
いくら広大に広がっている海とは言えども、砂浜には限りがある。
そのへんの砂浜にテントを立てている1泊組も入れば、俺たちみたいに日帰りなために、シートを敷いている人たちもいる。
俺はシートを敷くと、4隅に砂をかぶせて固定させる。そしてそのシートの上に荷物を置いた。最後にパラソルを立てて完成。ここが今日の拠点だ。
「よっしゃ! じゃあ行ってよし!」
その声と共に、中学生組が海へと走って行った。
天野と中村はそこに立ったままだった。
「お前らは行かないのか?」
「いや、武田は?」
「俺? 荷物見てないといけないし」
「えー。大丈夫だって。荷物の見える範囲に入れば大丈夫だって。だから行こ?」
「恭子ってば、武田と海に行くの楽しみにしてたんだよ」
俺の腕をグイグイと引っ張る天野と中村。
ここまで言われて動かない俺ではない。可愛い彼女の願いも叶えてあげたいのが俺だ。
「よーし。それじゃあおじさん、泳いじゃうぞー!」
そう言ってTシャツをシートの上に投げ捨てて気合を入れた。
…あれ?
なんか二人の目線が冷たい。
「え? あれ?」
「武田、なんか老けたよね」
「うん。おっさん臭さを感じた」
「ちょっ、なんだよ。せっかくテンションあげたのに、その言い方はないんじゃないですか?」
「はいはい。わかったよ」
「さっ。行きますかー」
「何この温度差…」
そんなつぶやきが聞こえていたのかいなかったのか、二人は楽しそうに笑うと海へと駆けていった。
俺はやれやれと思いながら、二人の後を歩いて海へと向かった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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マイクラのハードコアでプレイしていたデータがプレイヤーの死亡と共に消滅しました。
せっかく牧場ができたのに・・・
これだから蜘蛛は嫌いなんです。
次回もお楽しみに!




