テストの採点
夏休みを前に行われる定期テスト。
俺が作った問題を生徒たちは目の前で解いている。
ちゃんと授業で『出るぞー』っていったところは出したし、俺が作った範囲は大丈夫だろう。もう一人の1年の数学の担当の亀井先生が難しい問題を出してたから、そっちで手間取っているはずだ。
今日はこれで最後だし、気合入れてテストに望んでいることだろう。
教卓から教室全体を見回すと、何人か寝ている生徒もいた。
もし徹夜で寝てしまっているならかわいそうなので、一応起こしに行く。
「ほれ、寝るな。テスト中だぞ」
「んん…もういいんだ。全然わかんないから寝て補習に備える」
「そうか。おやすみ」
「ん」
なんて素直なやつなんだ。
受け持ってないクラスだから名前は知らないけど、ここまで素直ならもうテスト受けにこなければいいのにとか思ってしまう。まぁ出ることに意味があるんだろうな。
わざわざ髪を金に近い色にまで染めても学校に来て寝てるって、どうなんだろうか。グレてるのか、真面目な奴なのか。ホントにグレてるなら学校とか来ないもんな。真面目なんだろ。
そんなことを考えながらクラスのことを見ていると、チャイムが鳴って終了の合図を告げる。
「はいそこまでー」
「やっと終わったー!」
「やべー! 全然わかんなかった!」
「ちょっとだけ待って!」
「んじゃ、後ろから集めてきてー」
「どこ行くー?」
「帰りマックいこうぜー」
俺の話聞いてー。
まぁ一番後ろの席の人はちゃんと集めてくれてるみたいだし、それでいいや。
テスト休みということで、今日は部活も休み。
家に帰っても瑠璃ちゃんは遊んでから帰ってくるだろうから、職員室でテストの採点を少しだけしてから帰ることにした。
昼食はいつものように店屋物を食べた。気分的にそば一択だった。
他の先生たちは『早く帰れるなら帰る』という思考の人は帰っていたが、同じようにテストの採点をしている先生もいた。
採点中に話しかけると、間違えてしまうこともありけりなので、なるべく話しかけないようにしていると、自然と職員室内は静まり返っていた。
9クラスあるうちの半分の5クラスを受け持っている。その半分の3クラス分の採点を終えたら帰ろうと思っている。今は2クラス分が終わった。
「…よし。帰るか」
3クラス分やって帰ろうかと思ったのだが、なんかちょっと飽きたし帰ることにした。
家に帰ったが、瑠璃ちゃんのカバンがソファの上に置いてあるだけで、姿はなかった。
なんかこういうの珍しいな。いつもは俺が帰ってきたら、瑠璃ちゃんが『おかえり』って言ってくれるんだけど、今日は逆になりそうだ。
俺は着替えてから、テーブルに未採点のテストを置いて、採点の続きを終わらせることにした。
サクサクと残りを片付け、全部の採点が終わったテストをファイルに挟んでカバンにしまった。
「さてと」
夕方になったのだが、瑠璃ちゃんが返ってくる気配はなかった。
いつも帰ってくる時間はまちまちみたいだしな。
「じゃあ久々にご飯でも作るかな」
というわけで、キッチンに立った。
一人でキッチンに立つのなんていつ振りだ?
ってか、何作ろうか。たまには家庭的なものでも作ってみるか。
冷蔵庫にはそれなりに色々と入っている。野菜室にもそれなりのものは揃っている。
これはいつも瑠璃ちゃんがご飯を作ってくれるから、なるべくたくさん種類と量を揃えていたのが幸いだった。これならなんでも作れるな。さすが俺。
今日のメニューは肉じゃがと豚汁にすることにした。豚汁の読み方は『ぶたじる』。異論は認めない。
肉をハイテクレンジで解凍してる間に米を炊いたり、野菜を切ったりしておく。
解凍が終わって、一気に調理開始。
炒めて煮て味噌入れたりして完成。たまに料理すると楽しいな。
なんか不思議な爽快感と達成感が満ち溢れて、とても満足した。味もそれなりに美味しい。さすが俺。
あとは瑠璃ちゃんが帰ってくるだけだな。
暇だし、風呂掃除でもするかな。
足をまくって風呂場にレッツゴー。ここもそこまで汚れてはいないんだけど、普段掃除しない排水溝とか掃除しちゃう。
溜まっていた髪の毛を袋に入れてゴミ箱に入れる。
…抜け毛、多くなってきたか? まぁいい年だもんな。ちょっと気を付けてみるか。
そして洗い終わったピカピカの風呂にお湯を貯める。
どばどばどばーと貯まっていくお湯。
そんな音に混じって、『ただいまー』という声がかすかに聞こえた気がした。
俺は足を拭いて玄関へ向かうと、その途中の廊下で瑠璃ちゃんを見つけた。
そして俺は瑠璃ちゃんを出迎えた。
「おかえりなさい」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
現在『うろな町計画』というものを進めております。
発展展開途上ですが、参加者を募集しております。
詳細はhttp://kyodo765.jimdo.com/をご覧ください。
メッセージでも参加者を募っておりますので、ご一報いただければ声かけに行っちゃいますよー
たまには正親ののんびり回も書きたかったのです。
次回もお楽しみに!




