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近頃の高校生

「先生って、正親って名前ですよね?」

「そうだけど、どうかしたか?」


一日の最後を締めくくるHRが終わり、他の生徒たちがガタガタと机を鳴らしながら帰る準備や駄弁る準備や部活の準備などを始めている中で、滝だけは俺のもとにスルスルとやってきてそう言った。


「なんかうちの妹の友達が、先生の娘さんと友達らしいんですよ。先生って、結婚してたんですか?」


そのセリフに、教室中の生徒達が手を止めた。静かになった教室内では、廊下から聞こえてくる誰かの声しか聞こえてこなかった。高校生とはスキャンダル好きである。そして噂も好きである。そしてそして広まるのも早い。今までの経験で得た情報だった。


「結婚ってゆーか…まぁ娘はいるよ」

「じゃあさじゃあさ! シングルマ…ファザーってこと!?」


クラスのお調子者の皆口(みなぐち)が話に入ってきた。

軽くかわす。


「まぁそんなとこ」

「でもうちの妹と同じ年ってことは、先生いくつ?」

「えっと、28」

「…いくつで産んだ子?」


滝と俺を囲むように何人かが輪を作った。

その中の一人が、滝に妹の年齢を聞いて、滝が『中一』と答えている。


「産んだってゆーか、養子かな。まぁいろいろと事情があるんだよ」

「大人の事情ですか?」

「そゆこと」

「さいですか」


そう言うと滝は納得したようで、踵を返して自分の席へと戻っていった。

その滝の行動に、ギャラリーも冷めてしまったかのように散らばっていき、またいつもの放課後の風景へと戻った。

…びっくりしたー。ってゆーか、滝が吉田みたいに突っ込んでくる感じの子じゃなくて良かったー。

ふと外を見ようと窓の方に視線を向けると、吉田がこちらを見て、笑っていない目で笑顔を見せていた。なんか怖い。

俺は何も見なかったかのように視線を泳がせて、そそくさと教室を出て、職員室へと向かった。

そして自分の机の椅子に座って小さくため息をついた。


「はぁ…」

「どうしたんですか? ため息なんかついて」


向かいの机の高津先生が声をかけてきた。

そこまで大きくなかったはずなのに、聞こえてしまったようだ。


「最近の高校生って怖いですね」

「なんかあったんですか?」

「僕と瑠璃ちゃんの関係を聞かれそうになったんですよ」

「あらま。で、なんて答えたんです?」

「養子って答えただけで、細かいことは何も。あんまり突っ込んでくるような生徒じゃなくて助かりました」

「それだと逆に気になりません? クイズ番組の正解発表の前のCMみたいな感じで」

「言われてみれば…でも生徒に細かいことは言えませんもん」

「まぁ私も教えてもらってないですからね。生徒はダメなら、私には教えてくれるんですか?」

「えぇー…」

「そんな気はしてました。私はそこまで気にする性格じゃないので、気にしないでください。実物にも合ってますし」

「実物って…」

「なんの話だ?」


俺と高津先生が机越しに喋っていると、秋山先生が乱入してきた。


「瑠璃ちゃんのお話です」

「まーたノロケか」

「ノロケじゃないですよ。さっきクラスの生徒にいろいろと聞かれて大変だったって話です」

「今は娘だっけか? 一から説明するとなると複雑だもんなー」

「あれ? 秋山先生は事情を知ってるんですか?」

「知らないけど。親戚の子が養子になったんだろ? それだけでも複雑だとしか考えられないっての」


さすが秋山先生。色々と違うんだけど察してくれる能力が高すぎる。

でもここの教員にはそんな感じで話を通してあって、秋山先生にしろ高津先生にしろ伊藤先生にしろ、そこまで深くは突っ込んでこない。プライベートな部分は深く立ち入らないようにするのが良い人間関係の築き方なのかもしれない。

とは言っても、人の告白シーンを立ち聞きするような人間がここに二人いるので、なんとも言えないのも確かだ。


「でも自慢の娘なんだから、もっと自信持ってもいいんじゃねぇの? ホントはもっと自慢したいんだろ? 写真とか見せびらかしたいんだろ? 天野とイチャイチャしてるところを見せびらかしたいんだろ!?」

「ちょ、近いですっ。落ち着いてください。誰もそんなこと言ってないじゃないですか。それに最後のは完全に私怨でしたよね?」

「羨ましいんだよ。可愛い娘に年下の可愛い彼女って、もう言うことなしじゃねぇか。あとは結婚して幸せな家庭を築くだけだろ。ケッ。バーカ」


何故か日頃の鬱憤をぶつけてくる秋山先生。高津先生の方を見ると、困ったような顔で肩をすくめられた。


「ほら、高津先生が呆れてますよ」

「おっと。大人げなかったかなー」

「すでにアウトですよ」


今さら発言を撤回しようとしたが、時すでに遅すぎし。

高津先生の耳にはバッチリ入ってしまっていた。

俺と高津先生は秋山先生の態度にアハハハと笑った。


そして帰りの地下鉄の中。

部活もサクサクっと終わり、いつものように坂本さんと軽く打ち合わせをし、いつも通りの時間の地下鉄に乗っていた。

するとトントンと肩を叩かれた。

誰かと思い、振り向いた先にいたのは、うちのクラスの吉田と滝の二人だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


※最近の高校生がこんなんなのかはわかりません。作者のイメージです。

とはいえ、今から3年後の世界の設定ですから、ちょっとは違っても許されるでしょうw


次回もお楽しみに!

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