デートの終わり方
時刻は午後2時。
映画のあとということもあって、少し遅めの昼食だ。
食事と言っても、同じ建物内にある洋食屋での食事だ。別にどこか高いところを予約したわけでもなく、なんとなく二人で食べたいものを決めて入ったのがこの洋食屋だった。
「やっぱりすごかったね」
「まぁあの人は本人じゃないけどな」
「でもさすが跡継ぎってだけあるよね」
「本人が選んだんだからすごくて当たり前だろ。でもやっぱり初代には敵わない感は出てたよな」
「あーわかる。師には勝てないのかね」
「あの『あわわわわっ』ってのがないからじゃないか? 素で強そうだもん」
「それだ。ギャップが無いのか」
「そうそう。ってなに食べる?」
「デミグラスソースのオムライス」
「ちょっとはメニュー見ろよ。あるからいいものの…じゃあ俺はカルボナーラで」
「パスタにするの? じゃあ私もパスタにしようかなー」
「オムライスっつったじゃん」
「人のものは美味しく見えるときがあるのだよ」
「まだ見てないじゃねぇか」
そんなこんなで最初の宣言通りのメニューで決まり、俺がカルボナーラ、天野がオムライスを注文した。
そして注文したメニューが到着し、『いただきます』と言ってから食べ始めた。
「んーおいしー」
「うん。うまいうまい」
「あとで武田のも一口ちょうだいね」
「おーいいぞ。そっちのも一口くれよ」
「いいよ。はい、あーん」
そう言ってスプーンで一口分すくい、俺の口の高さまで上げる天野。
周りにも人がいるんだが…
しかし楽しそうな天野を見てると、食べないといけない衝動に駆られてしまい、俺は意を決してそのスプーンをパクリと食べた。
するとなぜか驚いたような顔の天野。
「なんかついてる?」
口元を手で触りながらモグモグと口を動かした。
「ホントに食べるとは思わなかった。何見せつけてんの?」
「いやいやいやいやいや。天野が誘ったんだろ」
「そうだけどさ」
「じゃあこれもあーんしてあげようか?」
「パスタは無理無理。口元ベタベタになるわ」
デートなのにいつも通りの会話な気がする。
まぁこれが俺たちなのかもな。だからと言って人前で『あーん』とかするようなことはしたことなかったけど。
パクパクと食べ終わり、店を出た。
時刻は3時過ぎ。
瑠璃ちゃんはちゃんとお昼食べたかなぁ。
「さてと。次はどこ行くか」
「あれ? 武田のデートプランはここで終わり?」
「このあとは自由時間って書いてある」
「どこに?」
「俺の脳内スケジュール帳に」
「はいはい。じゃあウィンドウショッピングしていい?」
「ウィンドウと言わずに何か欲しいモノがあったら買ってやるぞ」
「それは気分しだいかなー。さっ、行こっ!」
先を歩く天野に追いついて並ぶと、天野は俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
なんかデートっぽいな。いや、デートなんだけどね。
そして1時間ほど天野のウィンドウショッピングに付き合った。
あっちの店が見たい、こっちの店に行きたい、さっきの店もう一回見たい、どっちのほうがいい?など、女子の買い物に疲れるほど付き合った気がした。
そして一通り終わったのか、天野がどこかで休もうと提案してきたので、某スタバに入って休むことにした。
「いやー久しぶりにこんなに服屋さん見た気がするわー」
「俺、なんか疲れたわ」
「ごめんねー。でもおかげで楽しかったです」
「いえいえこちらこそ」
座ったままペコリとおじぎをする天野。それに続いて俺もお礼のお辞儀をする。
そして少し笑いあう。
「でもさ、こんなことしてて良かったのかなぁって思ってたんだよね」
「どゆこと?」
「いやー、なんてゆーかちょっと瑠璃ちゃんに申し訳なくて…。ほら、なんていうの? ちょっと言い方はアレかもしれないけどさ、瑠璃ちゃんが居ないからこうやってデートができてるわけで…いや、別にいつも邪魔だとかって思ってるわけじゃないよ? だからこうやってデートしてても、ちょーっと瑠璃ちゃんのこと気になっちゃったりするわけですよ」
「それはわからなくもないかな。俺だって瑠璃ちゃん抜きでこうやって出かけられるのってすごい久しぶりだもん。でも頭の隅っこには瑠璃ちゃんがいる感じ。今まで瑠璃ちゃん中心で生活してきたせいもあるからかもしれないけど」
「瑠璃ちゃんってば幸せ者だね」
「ホントにな」
「「ハハハハハ」」
そして目が合って、天野が小さく頷いた。
どうやら考えていることは同じだったみたいだ。
「帰るか」
「そだね。瑠璃ちゃんと夜ご飯食べても良い?」
「もちろん。二日続けてでよければ。あーでも何作るかなぁ」
「じゃあ外食しようよ。私お寿司が食べたいです!」
「よっしゃ! 回るところで良ければ連れていってあげよう!」
「やったー!」
「っと、その前に瑠璃ちゃんに連絡しておかないと」
瑠璃ちゃんに『天野と一緒に回転寿司行くよー』とメールを送った。
こうして俺と天野の初デートは終了となった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
こんなデートもアリなんじゃないかと。
次回もお楽しみに!




