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デデデデート

今日は天野とデートだ。

日曜日なのだが、瑠璃ちゃんはいつものメンツと遊ぶということなので、天野を誘ってみたら、OKしてくれた。これで断られてたらどうしようかと思った。

とにかくデートということなのだが、天野にどこか行きたいところがあるかと聞いたところ、『武田と一緒ならどこでもいい!』とのこと。これは俺にデートプランを任せるということだと判断し、色々と決めてみた。デートプランを考えるのなんて何年ぶりか…つーか、デート自体が何年ぶりだ?

大学の頃の彼女と行ったデートが最後だから…8年ぶり? うわー。

待ち合わせは、今俺が乗っている地下鉄に天野が乗り込んでくることになっている。乗る前に連絡をしてみたところ、ホームで待ってるところらしく、問題なく同じ地下鉄に乗れることだろう。

乗るのは一番後ろの車両の一番後ろ。そのへんの吊革に掴まって立っていると、隣の駅のホームで待っている天野が見えた。天野も俺に気がついたらしく、笑顔を浮かべて手を振っていた。俺も小さく手を振ると、扉が開くのと同時に天野が駆け寄ってきた。


「おはよっ!」

「おう。とりあえず同じ地下鉄に乗れて良かったな」

「出だし好調!」


そう言ってニシシと笑う天野は、やっぱりご機嫌だった。

天野と付き合い始めてからも何回か出かけたことはあったけど、それは瑠璃ちゃん付きでのことだった。こうやって瑠璃ちゃん無しで天野と出かけるのは初めてだった。

そう考えると半年付き合ってきて初めてデートってどうなんだろうか? 俺が天野なら愛想つかして別れてるかも…って俺最悪じゃん。


「今日はどこ行くの?」

「デートっぽく映画でも見に行こうかと。ほら、見たいって言ってたのあったじゃん」

「映画かー…」


あれ? あまりお気に召さない模様。


「映画はダメ?」

「そーゆーわけじゃないんだけど、武田とイチャイチャできないなぁって」

「やかましいっ。映画で良いか?」

「うんっ。えへへー。武田とデートなんて初めてだわー」

「あーその、ごめんな」

「何が?」

「いや、今日までデートとかできなかったからさ。悪かったと思って」

「別にいいって。お互いに時間取れなかったんだから仕方ないっしょ。とりあえず今日は楽しもう!」


さすが天野。俺は天野じゃなかったら恋愛なんてできなかったかも。天野で良かった。


「天野」

「はい?」


こちらを向いた天野の耳元に顔を寄せて言った。


「好きだ」

「なっ!?」


顔を赤くして驚く天野。

その顔を見た俺はすごい愛されてることを実感した。

そして目の前の座席に座っていた人が、ものすごい顔で俺たちのことを見ていたのには、気付かなかったことにしよう。


地下鉄を降りた俺たちは、札幌駅と繋がっているJRタワーの上の方にある、映画館へと向かった。

そこで目当てのアクション映画のチケットを買い、映画館と言えばポップコーンだろうということでポップコーンと飲み物を買った。


「映画館で映画見るのなんて何年ぶりだろうか」

「そんなに行ってなかったの?」

「教師って意外と忙しいんだぞ。だから見たいのがあってもDVDが出るまでは待ってたかな。それに一人で映画館に来てまで見たいのも無かったし」

「へー」

「天野はよく見に来るのか?」

「香恵とね。香恵とは見たい映画が結構かぶってたから、一緒に見に来ることがあったかなー。っていっても年に何回かだけどね」

「ほー」


そんなこんなで映画の上映時間が近づき、館内を歩いて上映場所へと移動した。

席は後ろから5列目のスクリーンに向かって一番左側の席。

日曜日ということもあって、空いているのが一番前か後ろの端のほうと言われて、二人で同時に『後ろの方で』と言ったときには笑った。

でも怪我の巧妙なのか、そこはちょうど2席しか無く、カップルシートのようになっていた。俺が通路側に座り、天野を奥に座らせた。


「なんか映画始まる前のこの暗さってワクワクするよね」

「うん。時間感覚が麻痺する」

「は? なにそれ?」

「こう薄暗いとさ、『今何時だっけ?』ってならない?」

「全然ならない」

「マジか」


二人の間に置いたポップコーンをパクパクと食べながら上映時間になるのを待っていると、ふわぁっと辺りが暗くなっていき、スクリーンに映画の予告ムービーが流れ始めた。


「この予告って長すぎると思わない?」

「でも予告だけでも見たくなるよな」

「たしかに。映画って、予告が一番面白いよね」

「わかるわかる。いざ見たら残念でしたーってなると、予告に釣られたーってなるもんな」

「予告一本釣りってね。ネットの怪しいサイトクリックしちゃう人の気持ちがよくわかるわ」

「わかるのかよ」

「いや、そんなことないかも」

「なんだそれ」


そしてポップコーンを半分ぐらい食べ終えたころに、映画が始まった。

映画は、某スタントマンを使わない香港のアクション俳優の2代目と称されている俳優の新作だった。跡継ぎが見つからないからずっと自分で主役兼監督をしていたのだが、ついに跡継ぎが見つかったということで、その俳優が監督を、そして跡継ぎが主役を、という作品の3作目だった。アクション界では神様的存在なその俳優と跡継ぎということもあって、日本では『アクション界の黄金ペア』とまで言われていた。

内容はいたってシンプルで、悪の組織が悪いことを企んでいるから、特殊訓練を受けていた主役がスパイとして送り込まれて、その組織を内部から壊していくというものだった。

ストーリーは単純だが、アクションシーンには鳥肌が立ちっぱなしだった。

そのへんにあるものを華麗に使って敵を倒していくのには、この監督の全盛期を思わせるものがあった。

そして俺が完全に見入ったままポップコーンを食べようとすると、天野に手を掴まれた。

何事かと思って天野の方を見た。


「ポップコーン食べ過ぎ」

「…すまぬ」


無意識のうちにポップコーンを食べる手が進みすぎていたらしい。猛省。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


初デート!

でもデートで映画ってあんまりよろしくないみたいですよ。

オシャレしてきたのに暗い中、長時間座りっぱなしで服がシワシワになってしまうとか。


後半へ続く。


次回もお楽しみに!

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