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彼女の友達と彼氏の母親

「ただいまー」

「「おかえりなさーい」」

「…何してんの?」


俺が鍵を開けて玄関の扉を開けると、そこで出迎えてくれたのは、瑠璃ちゃんと俺の母さんだった。


「何って、あんたがなかなか呼んでくれないから来ちゃった」

「誰の彼女だよ」

「すごい綺麗なところね。私だけここに住もうかしら」

「やめてくれ」

「…あら? お客さん?」

「あー」


母さんが俺の後ろにいた中村を見つけて言った。


「どうも初めまして。中村香恵です」

「あらあら。これはどうもご丁寧に。正親の母です。いつも正親がお世話になってるみたいで」

「いえいえ。こちらこそお世話になっちゃってます」

「…彼女さんかしら?」

「それは違います」


そこまでハッキリ即答するのもすごいな。

正解なんだけどなんか傷ついた。


「香恵ちゃんはね、私のお友達です」

「瑠璃ちゃんの?」

「俺の去年の生徒だったんだけど、なんやかんやで瑠璃ちゃんの面倒見てもらってたりしたら仲良くなっちゃってさ。今日はたまたま地下鉄で会ったから、ウチに誘ったんだ」


ペコリと頭を下げる中村。

俺は靴を脱ぎながら中に入っていく。それに続いて中村も『お邪魔します』と言いながら上がった。


「そうだったのー。そうよね。正親に彼女なんて居るはずないわよねー」

「おい」

「正親さん、彼女いるよ?」

「…えっ?」

「その驚き方はひどいだろ」


目を丸くして本気で驚いている。瑠璃ちゃんが冗談を言うような性格じゃないのは母さんも知っているので、一発で信じて驚いた。


「俺だって彼女いたことあっただろ」

「だって正親の彼女って、なんかこう…今だから言うけど、うるさい感じで、私もお父さんもそこまで好いてなかったのよ」

「なんでそれをここで言うんだよ。そこは墓まで持って行けよ。わざわざ言うことないだろ」

「だってまた彼女出来たって言うから…」

「でも恭子はうるさい系に入るんじゃないか?」

「…入るかもな」


昔から俺の趣味は変わってないってことなのか。


「それよりも出来たんなら早く言いなさいよ。ウチに連れてくればいいじゃないの」

「結婚のご挨拶ってやつだな。やったじゃん武田」

「正親さん、結婚するの!?」

「結婚っ!? 俺も天野のもまだそんなの全然考えてないっての」


付き合いたてだし、今はまだ二人の時間をどうやって増やしていくかってのが当面の課題だ。


「あらま。正親だっていい歳なんだから、そろそろ結婚とか考えてもいいのよ?」

「考えるだけな。まだ瑠璃ちゃんのお父さんとして頑張りたいし」


そう言いながら瑠璃ちゃんの頭を撫でると、瑠璃ちゃんはくすぐったそうに目を細めた。

今のまま結婚したとしても、瑠璃ちゃんのことを考えすぎて天野との結婚生活をおろそかにしそうで怖い。『瑠璃ちゃんが居なかったら…』と考えたこともあるが、瑠璃ちゃんを育てるのは俺が決めたことだし、後悔はしていない。

だからと言って、瑠璃ちゃんが居なかったら結婚するのかと言われれば、根本的に天野とも中村ともここまで親密な関係にはなっていなかっただろう。だから瑠璃ちゃんありきのこの関係なんだと思う。


「まぁ正親がそう言うならいいけど。私もお父さんも正親が連れてきた子なら、よっぽどのことがない限りは許すからね?」

「そのへんはおいおいな。まだ何も考えもしてないし」


せっかちな親だ。


「母さんも食べてくんだろ?」

「お客さんがいるみたいだから遠慮するわ」

「帰っちゃうんですか? あたしは気にしないので。ってゆーかむしろ帰るならあたしが帰りますよ。たまには親子でゆっくりしたほうがいいんじゃないですか?」

「いやいや。中村さんに悪いわよー。帰るなら私が」

「いやいやいやあたしが」

「いやいやいやいや私が」

「わかった。じゃあ二人とも残れ。これで丸く収まるだろ。瑠璃ちゃんも二人に残ってもらいたいみたいだし。ねっ」

「うん。みんなでご飯食べよー」

「瑠璃ちゃんがそう言うなら食べていこうかしら」

「瑠璃ちゃんには逆らえないしなー」


あれ? 引き止めたのって俺だよ?

俺の発言力はどこ行った?


「今日はカレーなんだよー」

「知ってるー。武田が言ってたー」

「私も知ってるわよー」

「お母さんは一緒に作ったでしょー」

「バレちゃったー」

「「「アハハハハー」」」


…俺、出ていったほうがいいのかな。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです


天野ちゃんよりも先に正親母に会ってしまった中村の話でした。


次回もお楽しみに!

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