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娘と彼女と、帰ってきた俺

瑠璃ちゃんが通う中学校から徒歩10分。

地下鉄の出口から徒歩5分。

あーでもないこーでもないとはならずに、『瑠璃ちゃんの部屋があるところ』『綺麗なところ』『地下鉄の駅の出口から近いところ』の3点を重点においた結果、今の我が家に決まった。

何を隠そう、今までは1Kという素晴らしい間取りのアパートに住んでいたため、瑠璃ちゃんの部屋が無かったのだ。というよりも、元々俺が住んでいたところに、瑠璃ちゃんも住むことになってしまったため、完全に狭い中で2年半も暮らしていたのだ。そう考えると結構長く暮らしたもんだ。

そしてこの新居へは、春休みの期間中に引越しを済ませ、瑠璃ちゃんにとって念願だった『マイルーム』が出来てはしゃいでいた。

新居とは言ってもマンションで、間取りは3LDKとなっていて、一部屋一部屋がそれなりの広さを誇っている。ちょっと贅沢かとも思ったのだが、購入となると一生物だし、ケチる理由も無いための決定だった。

そして色々と家具や家電を買い直したり買い直さなかったり新しく買ったりして、あっという間に春休みが終わってしまったため、家の中にはダンボールが残っていたりする。特に俺の。

そんな新居に帰ってきた俺を出迎えてくれたのは、可愛い娘と彼女だった。


「ってなんで天野がいる?」

「私は明日からだもん。今日は暇なのー」

「恭子ちゃん、さっきのやらないの?」

「あっ、忘れるところだった!」


さっきの?


「おかえりなさい。今日はどうしますー? 瑠璃ちゃんにする? 私にする? それとも、りょ・う・ほ・う?」

「正親さんのよくばりー」

「「アハハハハー!」」


楽しそうに笑う瑠璃ちゃんと天野。

もうよくわからん。つっこむ気も失せた。

とにかく二人が楽しそうで何よりです。

ここで瑠璃ちゃんとゲラゲラ笑っているのが俺の彼女の天野恭子。今年保育士の専門学校へと進学した18歳。天野からの猛烈アピールに俺の心が崩壊したわけで、今こうしてお付き合いしてます。

瑠璃ちゃんとは年齢こそ離れてるけど、結構仲良し。


「今日はどうしたんだ?」

「どうしたってゆーか、瑠璃ちゃんの入学祝いしようかと思って」

「今日は片付けもしなきゃだし、いろいろ予定があるんだけどなぁ」

「えー。じゃあ手伝う」

「そうしてくれると助かる」


今日はいろいろと大変なのだ。

あとでテレビとパソコンが届くし、そのまま一緒にインターネットの接続工事も来る。さらに通販で注文していた電子レンジも届くのだ。大きい家電なら配送から設置までいろいろしてくれるけど、電子レンジとかの中途半端なやつは、店頭で見て、通販で見て、そのまま通販で買ってしまうことが多い。店頭だとちょっと迷うけど、通販で見直すとやっぱり欲しくなっちゃうんだよな。それに電子レンジもちょっと壊れ気味だったし。買い換えるには丁度いいんじゃないかと思ってたんだ。うん。そういうことにしよう。衝動買いなんかじゃないことにしよう。うん。


「それにしても良いところだよねー」

「このへんで一番いいマンションだからな」

「ぽいぽい。めっちゃ綺麗だったし、下の玄関もオートロックだったし」

「オートロックかっこいいよねー」


なぜか瑠璃ちゃんはこのマンションの玄関のオートロックがお気に入りだ。よくわかんないけど。


「でも二人で住むには広すぎるんじゃない?」

「まぁ……広いところがよかったんだもんねー?」

「うん。でもちょっと大きすぎたよねー」

「でも大は小を兼ねるしね」

「そうそう。小さいより大きいほうがいいもんね。前のところせまかったしー」

「それは言っちゃダメですー」

「んふふー」


引っ越してきてからの瑠璃ちゃんの気分は上々絶好調みたいで、ときどきこういう会話の中で楽しそうに笑う。出会った最初に比べると大した進歩だ。

一番最初なんか泣くわ泣くわで大変だったしな。俺も接し方がよくわかんなかったし。

そう考えると、今の瑠璃ちゃんは生き生きしてる。


「こら! 勝手に俺の部屋に入らないの! ってゆーかベッドの下をのぞくな! 何もねぇよ」

「無いのかよー」

「何かあるときがあるの?」

「あのね、大人になったら、彼氏のベッドの下覗いてみ。絶対になんかあるから」

「ねぇよ。まだ瑠璃ちゃんにそういう話すんな。18禁だろうが」


見られたくないものは誰にもわからないところに置く。それが基本だ。そんなベッタベタなところに置くのは、中学生までだ。


「こっちが瑠璃ちゃんの部屋でしょー。……じゃあここは?」


そう言って天野が見ているのは、何も置かれていない和室。


「あーそこは客間にでもしようかと思って」

「客間? 綺麗なリビングがあるのに客間?」

「お部屋余っちゃったんだもんねー」


瑠璃ちゃんが言うように、部屋が余っちゃったのだ。

最初はなんかテンション上がってて、二人で『部屋いっぱいだー』的な感じで興奮してたんだけど、いざ越してみると、『この部屋どうしよう』的な。冷静に考えてバカとしか思えない。


「ちょっと贅沢した代償ってやつだ」

「贅沢の仕方が方向音痴すぎるでしょ」

「天野が泊まりに来たときにでも使うか? 布団あるし」

「……ないわー」

「ん?」

「だってー、私たち恋人同士だよ? 同じベッドで寝るのが普通じゃない?」

「二人で寝るのー? 私も一緒に寝たい!」


わー。俺ってばモテモテー。


「じゃあ三人で寝るときはここを使おう」

「なんでだよ。ここは客間なの。お客さんが来たらここに通すんだ。ちょっとかっこいいじゃん。ねっ、瑠璃ちゃん」

「ちょっとわかんない」

「なんてこったい」


このあと、天野の手伝いもあってかスムーズに作業が終わり、お礼とお祝いをかねて、俺が新しいレンジで作ったグラタンを三人で食べた。

さすが新しいレンジ。美味しくできました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


瑠璃ちゃんのせいでちょっと目覚めました。

何に目覚めたかはご想像にお任せします。


次回もお楽しみに!

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