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女子力とタイミング

「あっ」

「あっ」

「・・・?」


思わず声をあげてしまった。

そして言われた側もそれに気づいてこちらを見て声をあげる。

そしてそして瑠璃ちゃんは首を傾げて俺と高津先生を交互に見る。

ここは街中の牛丼で有名なチェーン店の前。早いの旨いの安いので有名な某チェーン店の前。

部活が休みだったので、瑠璃ちゃんと一緒に街中に出てきて、服とかを買いに来た帰りだった。

地下鉄までの道のりで、東豊線という路線は札幌駅の中でも辺鄙なところにあって、結構歩かないといけない。そこを歩いている途中のことだった。

なんか見たことあるなぁと思って横を通ろうとしたら、その人物がハッとこちらを見て、バッチリと目が合ってしまったのだ。

そして互いに声をあげてしまったのだ。


「こ、こんばんわ、武田先生」

「こ、こんばんわ、高津先生…」


思いっきりの作り笑顔で微笑む高津先生。冷や汗を書いているようにも見えなくもない。


「…晩ご飯ですか?」

「い、いえっ、別にこれはここで食べようとしていた、わけではなくて、なんというか、買い物して帰ろうと思ったら、美味しそうな匂いにつられてといいますか、今日の夜はこれでもいいかなーってゆーか、夜ごはん作るのめんどくさくなっちゃったといいますかなんというか……」

「えっと…なんか…すみません」

「いえ…こちらこそ…」


そして訪れる沈黙。

気まずい。これは気まずい。きっと高津先生的にも見られたくない光景だったのだろう。

どうしたもんか。

するとその時、俺の手を握っていた瑠璃ちゃんが、腕をクイクイと引っ張った。


「誰?」


あっ、そっか。まだ会ったことなかったんだっけ。


「えっと、同じ学校の先生で、高津先生」

「先生。初めまして、武田瑠璃です」


そう言ってペコリとおじぎをする瑠璃ちゃん。

その様子を見た高津先生が、慌てて我を取り戻しておじぎをする。


「武田先生と同じ学校の高津です。よろしくね」

「よろしくお願いします」

「ふーん…この子が瑠璃ちゃん…」

「……な、なんですか」


しゃがみこんで上から下まで舐めるように瑠璃ちゃんを見る高津先生。


「いえいえ。武田先生が溺愛している瑠璃ちゃんっていうのがどんな子なのか気になってたので、やっと見れて嬉しいなぁって思いまして」

「できあいって?」

「見方がダメなんですよ。なんかやらしいです」

「別に私は瑠璃ちゃんにはなんとも思ってませんよー」

「そういう言い方がダメなんじゃないですか?」

「そういう言い方ってなんですか。まるで私が悪いみたいじゃないですか」

「誰も悪いとは言ってませんって。ちょっと嫌味に聞こえただけじゃないですか」

「そう聞こえるっていうことは、ちょっとはそう感じてたってことじゃないですか?」

「なんですか? もしかして瑠璃ちゃんを紹介してなかったことを怒ってるんですか?」

「怒ってませんよ。ただたまたま見れて嬉しいなぁって思っただけです」

「言っときますけど、瑠璃ちゃんを紹介したのは、先生方の中でも高津先生が最初ですからね? だからって特別扱いはしませんけど」

「どういう意味ですか」

「ストップッ!」


間に割って入ってきたのは瑠璃ちゃんだった。


「ケンカはダメっ」


瑠璃ちゃんに止められて、ハッとした俺と高津先生は、互いに顔を見合わせて、謝罪の意を伝えた。


「ちょっとムッとしちゃいました。すみません」

「いえ。私のほうこそ恥ずかしかったのがこんなことに…すみません」

「むー…」


依然間に入って喧嘩が再開しないか睨みを利かせている瑠璃ちゃん。

そんな瑠璃ちゃんの頭を撫でる。


「ごめんね。もうケンカしてないから」

「ホント?」

「ホントよ。もともと私たち、仲良しだもん。ねっ、武田先生?」


そんなウインクされるほど仲良いか?

しかし瑠璃ちゃんの気を鎮めるには、ここで反論は許されない。


「そうですよねー。よく一緒に飲みに行きますし」

「よく飲みに行くの? 恭子ちゃんがいるのに?」

「いやっ、そういう意味じゃなくて…先生達で飲みに行く時の話ね? 二人っきりじゃないよ?」


瑠璃ちゃんが…鋭い…だと?

あの天然で鈍感でマイペースな瑠璃ちゃんがそんなところを突いてくるなんてビックリした。さすが瑠璃ちゃんと言わざるべきか。


「ならいいや」


あらあっさり。


「恭子ちゃんに正親さんが他の女の人と浮気してたら教えてねって言われてたから、ちょっとビックリしちゃった」


俺の方がビックリしたわ。天野の仕業だったか。心配せんでも浮気なんてしないっての。


「ってゆーか、高津先生は、結局ここでご飯食べるつもりだったんですか?」

「えっ、そこに話戻します? まぁそうですよ。どうせ一人暮らしなんで、帰ってもご飯があるわけじゃないですし、もうこの時間からだと作るのめんどくさくなっちゃいました」

「本音爆発じゃないですか」

「本当のことですもん。今更隠したってしかたないですもん」

「じゃあ一緒にご飯食べませんか?」

「「えっ?」」


まさかの瑠璃ちゃんからのご提案。


「一緒にってどこで食べるのさ」

「どこって…ウチ?」

「いやいや。高津先生は近所じゃないから」

「私カレー作るよ?」

「そーゆー問題じゃなくて…」

「今回はお断りします。私も今日はたくさん買い物して疲れましたし」

「そうですか?」

「それに武田先生の家に行くなんて、天野さんにも悪いですし」

「あはは…察していただいて恐縮です」

「じゃあまた明日。学校で」

「はい。食べすぎにはお気を付けて」

「そんなに食べませんっ」


俺と瑠璃ちゃんは、高津先生と別れて、地下鉄の改札を目指して歩きだした。

後ろをチラッと見てみると、そのまま牛丼屋に入っていく高津先生が見えた。なんとも…


「断られちゃったね」

「いいの。ウチにあんまり誘っちゃダメだよ? 俺が天野に怒られる」

「なんで?」

「なんでって…」

「なんで恭子ちゃん怒るの?」

「なんでって言われても…」


く、苦しい。


「こ、今度天野に聞いてごらん。きっと教えてくれるだろうから」

「教えてくれるの?」

「…多分」


あー。これを聞いた天野に、怒られそうな気がするー。

なんか上手い逃げ道作っとかないとなぁ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかあれば書いていただけると嬉しいです。


高津先生、ウチに来ませんか?

というよりも、僕を養ってくださぷげらっ!!


次回もお楽しみに!

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