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いたずらごころ

「私間違ってたのかなぁ?」


瑠璃ちゃんは最初こそ泣きそうな声で話していたが、途中からは話しながら自分の考えがまとまってきたみたいで、ちょっとずつ落ち着いてきていた。

中学校に着いて、起きた瑠璃ちゃんにいきなり泣かれたときはどうしようかと思った。内心ビックリもしたし、ここまで泣いている瑠璃ちゃんも久しぶりだった。ちょっと懐かしさも感じながら、辛いことがあったんだろうと思い、優しく抱きしめた。

病院に連れていっているときも、瑠璃ちゃんは大人しくおんぶされてたし、俺から聞くのもちょっと違うかと思って、泣いた理由も怪我した理由も瑠璃ちゃんが言い出すまでは待つことにしていた。

家に帰ってきてもまだ昼前だったので、牛乳でココアを作り、ソファに並んで座って飲みながら話を聞いた。

内海くんに友達になってって言った結果、怪我してしまったことも、そのあとヒロトくんと内海くんが揉めてしまい、そのことを自分のせいだと思って責任を感じて泣いてしまったことも話してくれた。


「みんなはやっぱりおせっかいだって言うんだ。でもなんか違う気がしてて…」

「違うって何が?」

「内海くんは優しい、んだと思う」

「どうしてそう思うの?」

「わかんないけど…なんとなく」


俺はいつでも瑠璃ちゃんの味方でいたいし、瑠璃ちゃんがそう思うのであればそうなんだと信じたい。

でも親として、瑠璃ちゃんが踏み込みすぎたりするときには、止めてあげるのも俺の役目だと思っている。

昨日相談された時だって、いろんなタイプの人間がいるこの世の中で、みんなと仲良くすることはできないし、瑠璃ちゃんが好意を寄せていても、それが裏目に出ることだってある。そういうことを遠回しに伝えてつもりだったのだが、頑固な瑠璃ちゃんにはあまり効果はなかったんだろう。


「瑠璃ちゃんはさ、みんなと友達になりたいの?」

「みんなと友達になれたら嬉しいけど、それは無理だっていうのはわかってるもん。でも内海くんとは仲良くなりたい」


コップに入ったココアを見ながら、瑠璃ちゃんはハッキリとそう言った。


「そしたらさ、いきなり友達になるのは難しいんだから、もうちょっと時間をかけてみたら?」

「んー…」


お気に召さない模様。


「また内海くんに言ったところで、嫌がられて終わりじゃない?」

「やっぱり嫌われてるのかなぁ…」


瑠璃ちゃんはそこまで嫌われたことがないのか?

…っていうよりも、嫌われたくないのか?

もう吹っ切れたと思ってるけど、昔のこととか色々考えちゃったりするのかなぁ。


「どうしてそこまで内海くんと仲良くなりたいの?」


ちょっと気になったから聞いてみた。ただ隣の席に座ってるっていうだけで友達になりたいなら、6年生までにもっと仲良しの友達は出来てたはずだ。

なのに怜央くんとヒロトくんと笹木さんの3人としか遊んでないように見える。

もしかしたら俺の知らないところで他の子とも遊んでるのかもしれないけど、その3人が一番仲いいんだろう。

だったらなんで今になって内海くん?


「内海くんね、チラチラ私のこと見てくるの」


…………はい?


「授業中とか、休み時間とか。だから仲良くなりたいのかと思って、声かけてたんだけど、私の勘違いなのかなぁ……はぁ」


そう言って小さくため息をつく瑠璃ちゃん。

え? 今瑠璃ちゃん、なんて言った? 『チラチラ見てくる』?

なんかそこまで難しい話じゃなかった的な?

これって好きな子に意地悪しちゃうってやつじゃないの?

もしそうなら『内海くん』なんて呼ばずに『内海の野郎』って呼ばざるを得ないんだが。

うちの瑠璃ちゃんに怪我させおって……

そんなことは微塵も顔に出さず、依然落ち込んでいる瑠璃ちゃんを見た。


「前も消しゴム落としたときに拾ってくれて、お礼を言ったんだけど『ふんっ』って言われちゃったし。これで嫌われてなかったらおかしいもんね…」


さっきまでと同じような言葉なのに、全然違った風に聞こえてくる。内海くんのイメージが乱れる。

そう考えても、照れ隠しでそっぽ向いたようにしか聞こえない。

ダメだダメだ。俺はいつでも瑠璃ちゃんの味方に……って無理だ!


「瑠璃ちゃん!」

「えっ? 何?」

「瑠璃ちゃんは内海くんに嫌われてない! これは俺が保証する!」

「ホント?」

「ホント!」


嫌ってるならチラチラ見ないし。

俺の言葉で元気が出てきた瑠璃ちゃんに言う。


「だからしつこくない程度に話しかけてもいいと思う」

「しつこくない程度?」

「まずは挨拶を返してもらうことからかな」


挨拶もできない奴に瑠璃ちゃんと仲良くする権利なんてないし。


「それができるようになってから世間話。そのあと遊びに誘ったりしたらいいよ」

「おぉ!」


目を輝かせる瑠璃ちゃん。

もう実は最初から単純なことだったんだけど、これを瑠璃ちゃんに言っちゃうと、内海くんに悪いからこれは内緒。


「それにしても瑠璃ちゃんって女の子の友達はいないの? 男の子ばっかりな気がするんだけど」

「笹木さん」

「他は?」

「同じクラスの子だと、田村さんとか村瀬さんとか滝さんとか上条さんとかと仲いいよー」


さ、さすが瑠璃ちゃん。友達100人とか夢じゃなさそうだ。


「まぁとりあえず明日から内海くんには挨拶を返してもらえるように言ってみなさい」

「んふふー。わかったー」


なんて楽しそうなんだ。

さっきまで落ち込んでいたのが嘘みたいだ。


「それと、ヒロトくんと怜央くんとも仲良くしなよ?」

「うんっ。それは明日謝る。あっ! メール送っとく!」


そう言ってポチポチとメールを打つ瑠璃ちゃんを見ながら俺は思った。

瑠璃ちゃんも鈍感か……子は親に似るって言うし、仕方ないのかもな。ははは。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


シリアスブレイカー


次回もお楽しみに!

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