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苦悩と無能

保健室に来て、笹木さんが保健室の先生に私の足のケガのことを説明してくれて、治療してもらった。

でも治療って言っても、膝が床にぶつかったせいで青くなっちゃってるみたいで、冷やすぐらいしかできないって言われたので、ベッドに腰をかけてアイスノンを膝に当てていた。

途中でチャイムが鳴ってしまったので、笹木さんには大丈夫だから、と伝えて教室に戻ってもらった。

だんだん痛みも引いてきて、保健室の先生が一回り小さいやつを出してくれて、それを足に巻いてもらい、私はベッドに横になることにした。

横になっても、さっきの光景が頭をよぎってしまっていた。

目をつぶっても目を開けていてもおんなじだった。

そんな私に先生は話しかけてきた。


「どうしたの? ケンカ?」

「椅子から落ちちゃって…」


なんとなく本当のことを言いたくなかった。

椅子から落ちたのは本当だし、私が手を離していれば私も落ちなかったし、内海くんもヒロトくんにあんなことされなかったのに…

そう考えると、みんなの言うとおりにして、内海くんに話しかけなければよかったと思う。

はぁ…後悔ばっかり。やってから後悔するっていうのは大変なんだと思った。


「まぁ少しゆっくりしていきなさい。先生には言っておくから」

「ありがとうございます」


そう言ってベッドの周りのカーテンを閉められると、一気に悲しくなってきて、布団を頭までかぶって泣いた。



いつの間にか寝てしまっていたみたいで、気がついたら布団が綺麗にかけられていた。


「いてっ…」


私は慌てて起き上がろうとすると、足が痛くて、膝をぶつけたのを思い出した。

仕方ないので、横になったまま今の時間を知ろうとしたけど、どこにも時計はなくてわからなかった。


「あれ? 起きた?」


カーテンの向こうで声がした。

保健室の先生の声じゃない。

この声は聞き間違えるはずもない。

カーテンが開いて、正親さんが顔をのぞかせた。


「おー起きてた。おはよ」

「お、おはよ。なんで?」

「そりゃ担任の先生から連絡もらって、飛んできたのだよー」

「だって学校は?」

「優秀な副担任に任せてきた。授業は自習だけどね。ケガしたんだって? 大丈夫?」


なんか正親さんの顔を見たらホッとしてしまって、近寄ってきた正親さんに抱きついてまた泣いてしまった。

急に泣いた私を正親さんは優しく抱きしめてくれた。


私は念のため病院に行くために早退をし、そのまま正親さんにおんぶをしてもらって、近くの病院に向かった。

病院に行く間でも、その待合室でも、正親さんはケガした理由も泣いた理由も聞かなかった。


『こうやっておんぶするのって初めてじゃない?』

『うわっ。平日の昼間にここにいるのって奇跡に近いっ』

『瑠璃ちゃんってやっぱり軽いね、いてっ! なんで叩くのさ! やめっ!』


そんな関係ない話ばっかりだった。

病院で見てもらった結果は、とくになにも異常は無く、ただの打ち身だと言うことで、そっとしておけば明日には治るとのことだった。私も正親さんもホッとした。

その帰り道。

私は正親さんにおんぶされながら、その背中に聞いてみた。


「どうしてなにも聞かないの?」

「ん? 聞いて欲しいの?」


そう聞かれても困る。

聞かれれば答えるけど、うまく答えられない気がする。


「…わかんない」

「なら俺も聞かない。瑠璃ちゃんも中学生なんだし、友達との揉め事もあるだろうし。それに瑠璃ちゃんなら自分で考えてなんとかできるでしょ。それでもダメなら俺に相談するでしょ?」


昨日相談したはずなんだけど…

でも昨日はまだ迷ってる状態だったからちゃんと答えてくれなかったのかなぁ?


「そりゃあ正直気にもなるし心配もしてるけど、ここで俺がでしゃばったらダメじゃん。だって瑠璃ちゃんの問題なんだし。それで失敗しちゃったら励ますけど、実際問題俺にはそのくらいしかできないし」


そう言ってハハハと笑う正親さん。

やっぱり正親さんも心配するよね。

みんなに迷惑かけてる気がする…


「ねぇ正親さん?」

「なに?」

「帰ったら話聞いてくれる?」

「もちろん」

「ふふっ。ありがと」


私は正親さんの背中に背負われたまま小さく笑った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


悩める瑠璃ちゃんと手出ししない正親。

そんな回でした。


次回もお楽しみに!

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