相談と決裂
その日の夜、帰ってきた正親さんと一緒に夜ごはんを食べていた私は、内海くんのことを話してみた。
今日の夜ごはんはコロッケと玉子スープとサラダ。油で揚げるのはまだ危ないので、正親さんが帰ってきてから揚げてくれた。
正親さんは私の話を聞いて、コロッケを食べてから答えた。
「んー。でもうちのクラスにもそーゆー子いるし、そーゆー子は無理に話しかけない方がいいと思うよ? 一人が好きって子もいるわけだし」
「正親さんもみんなと同じこと言うー」
「じゃあ瑠璃ちゃんだって、鬼ごっこしてる時に家に帰ってゲームしようよーって言われたらイヤじゃない?」
「うーん…イヤだけど…」
「それとおんなじだと思うけどなぁ」
そう言って正親さんは、半分残っていたコロッケをパクリと口の中に入れた。
そして次の日。
「あっ、武田さん。おはよ」
「おはよー…」
「どうしたの? 元気ないね?」
「実は…」
朝学校の玄関で玲央くんに会ったので、怜央くんに昨日正親さんに言われたことを話してみた。
「まぁ武田さんの言うこともわかるけど、正親さんが言ってることもわかるなー」
「はぁ…怜央くんもおんなじ?」
「でも武田さんは放って置けないんでしょ?」
「そうなのかも…」
「じゃあ武田さんがやりたいようにすればいいんじゃないかな」
「えっ?」
「やらないで後悔するよりも、やってから後悔するべきだ。後悔は後からするから後悔なんだ。先に後悔するのは後悔じゃなくて、ただ勇気が無いだけだ。って、ヒロトがよく言ってるんだけどね」
そう言って怜央くんはエヘヘと照れくさそうに笑った。
「そっか…」
今の怜央くんの言葉を聞いて私は決めた。
「わかった。私頑張る! 内海くんと友達になる!」
「元気出た?」
「うんっ!」
「それはよかった。元気のない武田さんは見たくないしね」
「じゃあ私行ってくるね!」
内海くんと友達になるために私は教室に向かって走り出した。
おっと、お礼忘れてた。
「怜央くんありがとっ! 大好きだよー!」
「だっ…えぇっ!?」
私は怜央くんに手を振って、廊下を走った。先生に見つかったら謝ろう。
先生に見つからないで教室にたどり着くと、自分の席に向かい、カバンを置く。
そして隣に座ってる内海くんに話しかける。
「内海くん!」
「…なに?」
「私と友達になろう!」
「…いいよ」
今の言い方は否定の『いいよ』だった。
「どうして友達になってくれないの?」
「……」
「私のことキライ?」
「…別に」
そう言って内海くんは立ち上がった。また廊下に出ていこうとしたので、私は内海くんの手首を掴んで引き止めた。
「どうして?」
「…離してよ」
「理由を聞くまでは離さない」
「……」
離そうとして手をちょっと振っている内海君。絶対離してあげないんだから。
「どうして僕にそんなにかまうのさ。放っておいてよ」
「ただ友達になりたいだけじゃん。その何が悪いのさ」
「悪いよ…もういいから離してって!」
「きゃっ」
内海くんが思いっきり手を振り払ったので、私は勢いで手を離してしまって、椅子から落ちて床に足をぶつけてしまった。
そんな私を内海くんは唇を噛み締めて見下ろしていた。
「僕に構わないで…」
そう言って廊下に出ていった。
その直後。
「てめえっ! 瑠璃に何してんだ!!」
廊下からドンッという音と共に、ヒロトくんの声が聞こえた。
私は慌てて立ち上がって、足の痛みに耐えて廊下に出た。
そこではヒロトくんが内海くんに掴みかかって、壁に押し付けていた。怜央くんもいたけど、ヒロトくんの後ろで見てるだけだった。
私は抱きつくようにしてヒロトくんを止めに入った。
「やめてって!」
「でも今瑠璃がやられたんだろ! こいつが悪いんだろうがっ!」
「いいのっ! 私が勝手にやったんだから気にしないで!」
「なんでそいつのことかばうんだよ!」
そんなの私だってわかんない…でも止めなきゃ。
私はヒロトくんを内海くんから離そうとして、精一杯の力でヒロトくんを押した。
そしてヒロトくんの手が内海くんから離れた隙に、内海くんは走って去っていってしまった。
ヒロトくんはそんな内海くんの後ろ姿を見て、小さく舌打ちをした。
「なんであんなやつのことなんかかばったんだよ。意味わかんね」
そう言ってヒロトくんは自分の教室に入っていた。
他の教室の人も何事かと思って、廊下に出てきたみたいで、みんなに見られてるのがわかった。
私は力が抜けたのと足の痛みで、その場にペタリと座ってしまった。
そんな私に怜央くんが近寄ってきた。
「ごめんね。僕のせいだね…ごめん」
「……」
そう言って私が何も言えないでいると、怜央くんも教室に入っていった。
ヒロトくんと入れ違いに出てきた笹木さんが私のもとに来て、隣にしゃがみこんだ。
「どうしたの? ってゆーか何があったの? ヒロトもめっちゃ怒ってたし…うわっ! どうしたのその足! 早く保健室行こっ!」
私は笹木さんに連れられて一緒に保健室に向かった。
その間、泣くのを我慢していたせいで何も答えられなかった。
にっこにっこにー♪
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
なんだか穏やかじゃない雰囲気になってきました。
次の話を考えていたのですが、ちょっとシリアスになりすぎたので、まさかのお蔵入りになりそうな予感です。
でもその話を挟まないと今後のストーリーに影響が…
でもこの流れを続けたい…
ま、いっかw
次回もお楽しみに!




