表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2013年・2014年

この世の国のアリス

さよならは生きたカーテンへ

かつて深窓の見た世界

どれだけ嘘の夢を見ればいいの

拭えない過去の亡霊

見すえた罠をすりぬけて

時は貯水湖の奥底に爛れて

閉鎖に囲まれた

520㎡の鎮静なる町

終息していく夜の真ん中

ミュージック(未熟な宇宙)として

稠密なエーテル水に融けた

冬空を徐々に

殺して


さあ

絶えず踊ろう

恋愛感情のメロディで

子宮に帯びた魂の愛を

体温に落された

一滴の毒素を

そんな躰で過ごした

偽りの時間

撃ち落とされた

白鹿の代理

そう

あとは

ほっそりとした頸筋に

白刃を立てて

切断するだけ

必要となるのは

古い記憶の諸風景

憂鬱の欠片

白堊の純心

ためらいのない剃刀の傷

そして

甘いチョコレート

ああ

はやく私の骸を沈めて


百合の咲くこの土壌は

薔薇の乱れる廃園は

この館に佇む墓碑銘は

上下さかしまの光たちを

無条件に孕んで

あとはこの繰り返し

意識のない鳥たちへ

この歌を捧げてしまって

残ったのは

虚ろな空気

ただ壊れている

死の香り


Ah ah ah

震えた唇に

紡いだ言葉

果てなく投与される

静脈の中

どうしても

鈍らないナイフ

感受性ほど

自分を表すものはない

天使の散らした羽を

その傷だらけの両手に持って

死と祈りを

天に向けて

焼けおちた教会で

一緒に眠ろう

空の狭さに

私の永遠性が洩れている


ピグマリオンたちへの

静かな葬斂を

開こう

国破れて戦争あり

そっと揺らいだ遠い瓦礫に

塞がれた光線よ

不実の恋を

柔らかく包んで

贋物の城の中で

直径1cmの

円い糖衣錠

飲んでみて

浅い眠りを誘って

毀れ落ちる甘い昏睡


時間も空も東の方に

景色を切り取った術を

瓶詰めの約束ごとを

脆弱な喉奥に

放りこんで

クロスフェイドする

不安定な自分を取りとめて

あとは沸き立つ欲動を

凌いでいくだけ


ねえ

ここでは何も教えてくれないの?

ねえ

神罰があれば神にも罪はあるの?

この底の浅い

人工の海で

溺れてみたい

生き埋めにされる呼吸

永久に動く偽宇宙

深く時を刻む腕時計

何が楽しくて

いつまで続く

悪びれない銀河

まだ許してくれないの?


まほろばの案内者よ

私は自らの心臓を

喰った永遠の少女

連れていくのはいつになるの

もしもそれがまだなら

無彩色の華のために

手紙を書きます

記憶の一断面を

ポケットに入れて

ゆっくり歩きながら

あなたのことを

口うつしで

愛していたの

そっと来る明日を

待っている

そんな日を

待っている

痛む胸のこと

高鳴る胸のことを

知ってるのは

不思議の国だけ

私の

不思議の国だけ

すべてが許される

私のかわいい

不思議の国だけ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ