6話 始まりの風
「な、なななんで あなたがいるんですかー?」
椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がり、人差し指を向けられた
「いやそれこっちのセリフ なんでいんの?あと人の事指さすな」
とりあえず冷静ぶってはみてはみたが、胸の動悸が早くなっていた
「質問に質問で返さないでください。一問一答は常識ですよ一問一問してどうするんですか」
「どうするって?モンモンとする?」
「上手くもなんともないですっ」
「あらら案外良い答えできたと思ったけど駄目か」
「あのー 他の利用者の方もいらっしゃいますのでお静かにお願いします。」
図書館員のお姉さんが警告の。周りを見ると明らかに白い目を向けられていた
こりゃ間違いなくイエローカードだな
「ご、ごめんなさいっ!」「スンマセーン」
「でっけー声出すなって言われたばっかだろ 声でけーよ」
「う、うるさいです。これが誠意をもって謝るというものですよ あなたのは誠意こもってなさすぎ」
「いや別にそんな全力で謝んなくてよくね? 別に周りもそんな気にしてないと思うぜ?」
「ダメですよ!こういうのはちゃんと・・・あ」
「なんだよ・・・あ」
あきれたような顔で館員がメガネをくっとあげた
こりゃもうレッドカードだな
そそくさと荷物をまとめ出口へと歩き出した。
外に出ると、いつもは嫌になるこの冷たい空気が今日はちょうど
熱くなった頭を冷やしてくれてちょうどよかった。
だが頭が冷えることだけが何もいいことばかりではない
段々と昨日の夜のことが、ふつふつと頭の中によぎってくる
まずい…何とかして昨日の誤解を解かねば
「あ、あのさ」
「え、ええ、え、え、え、、えな、なななななんですきゃあ?」
俺よりも重症だこの子
ただ原因は俺にあるわけだし、年長者としてここは冷静に
「歌はいいね。歌は心を潤してくれる。 リリンの生み出した文化の極みだよ」
「はぁ…そ、そうですね」
俺はいったい何を言ってるんだろうか いつもはもっと冷静に…というか人に無関心なのにどうしてだろ
「あ、あの」
「へ?」
「私、神菜 友恵っていうんですあなたの名前は?」
「なんでこのタイミングで自己紹介?」
「い、いいから答えてください」
「なんか年下に主導権とられた…まぁいいや 俺は相良 圭だ」
「サワラ君ですかー美味しそうな名前ですね」
「サ・ガ・ラ・だ!」
「まぁまぁ落ち着いてください」
大体お前の性なんだがな
「年下のくせに君付けかよ。相良さんとか先輩って言おうよそこは」
「え?多分だけど相良君て高校生ですよね。昨日はセーフクっぽいの着てたし」
「そうだけど?そういうお前は中学生だろ。あの時間まで外ほっつき歩いて家族は何も言わないのかよ」
「家族は…」
あんなに元気そうだった声が今にも消えそうな細いものに変わった
「家族は?」
「そ、そんなことより サワラ君勘違いしてますよ 私は今年で二十歳の立派なお姉さんなんですよ」
「へぇー二十歳ねぇ…って二十歳!? どう考えてもそのちんちくりんさは小学生か中学生だろ!!」
「誰がちんちくりんですか!!謝ってください。そして さんとか先輩とかつけたらどうなんですか」
「うるせー何でちんちくりんを敬わなきゃならんのだ 絶対やだね」
「そのちんちくりんに愛の告白をしてきたのはどこの誰ですかー?」
「うっ」
このちんちくりん痛い所をついてきやがる
「あ、あれはだなぁ別に告白とかそういのじゃねーし」
「じゃああれはどう意味なんですか?答える前に逃げちゃうし。あ、今日は逃げないでくださいね」
「だからさ、その、文明は歌と共にあったんだよ。急に文明を感じたくなって。だから断じて告白じゃないぞ」
よしなんかよくわからんがそれっぽいこと言えた
「へーそうなんですか。でもそれ嘘ですよね?」
「はい嘘です。」
2秒でばれた
「正直に言ってください 大丈夫私はどんな答えも受けいれる器の大きなお姉さんですから」
胸をトンと叩いてアピールするどっからどうみても中学生そこらのその姿に
なんとなくイラっときたが うまい嘘も考え使いので正直に話すことにした
「はぁ…正直に言うよ。俺さ君の歌に会うまで何をしても感情が動かない感受性の低い男だったんだ。今でもそうだと思うけど。」
「ふむふむ」
腕を組み分かったかのように目を閉じうなずく ちんりくりんな姿にいらつきを覚えたが続ける
「だから俺が持ってない そういう人として持っている何かをお前の歌を聴けば取り戻せる気がすると思ったんだ。まぁ勝手な話だけどな」
「そうなんだー多感な時期だもんねー」
「うっせぇ」
「年上を敬ってください」
「だが断る」
友恵はひとつ溜息をつき
「頑固さんですね。でもま、そういう事なら私の歌のそばに置いてあげてもいいんですよ?」
「うっさい」
「最初にお願いをしたのは誰ですか?」
「うっ」
痛い
「また夜にあの場所に来てください。気が向いたら歌ってますから」
友恵は沈む陽のほうに駆け出し くるりと振り返り
「じゃあサワラくーん また夜にでもー」
もう一度走り出すと今度は振り返ることはなかった。
なんだったんだあいつは
そういや…ひとつ聞くの忘れてたな
何でちんちくりん…友恵はあんなに泣きながら歌ってたのか
夕日に向かっていく背中は小さくなっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
一か月ぶりの更新…その一カ月は文章力を上げる特訓に費やしていた…わけでもなく実生活がちょっとばたついただけでした。まだ常連さんもついてないので まだ上げないのーって催促がなかったのが良かったのやら悲しいのやら
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