3話 錯誤
「圭?」
はっと我に返る
「あぁ ごめんなんだっけ?」
「最近ずっと考えことしてるみたいだけど受験の事?」
「うん そんなとこ」嘘だ
「そう受験生にこういうこともなんだけどたまには息抜きしてね 母さん圭が壊れないか心配で」
「大丈夫だよ ちゃんと息抜きもしてるし元気だよ」息抜きって何だっけ
「本当に?」
「ホントホント そろそろ予備校行くよ」
「え?こんな早くから?」
壁時計の針は7時半を指していた
「今から行かないとちゃんと座れなくなるんだ 今日から冬季講習で人も増えるしね」
「後ろの席は見づらいんだよ」
「そうなの 気をつけて行ってね 母さん応援してるから はいこれお弁当」
「ありがとう母さん行ってくる」
「行ってらっしゃい」
走って商店街まで駆け抜けていった
どうしても確かめたかった事があったのだ
クリスマスムード一色の商店街の昨日と同じ脇道を縫っていく
(もう少し あそこだ)
たどり着いた外装が古いラーメン屋の脇には その影は無く青いダストボックスだけがそこにはいた
「はぁはぁ・・・そりゃ・・・はぁはぁ・・いるはず無いよな・・・」
逆に自分はどうして彼女がいるのかと思ったのかが不思議に思った
いつのまにか息が上がっていた どうやらいつのまにか全速力になってたようだ
空を見上げると
荒れた呼吸のせいで、いつもより多くの白い吐息が空に消えていった
「何やってんだろうな 勉強しなきゃ」
もやもやとした感情を抱いたまま、ラーメン屋に背を向け駅に向けて歩き出した
「で、あるからにして ここの式は~」
入試1ヶ月前に控えた予備校の
薄いクリーム色の教室内にはシャープペンシルの筆跡音だけが静かに響いた
春に聞こえていた、教室内の小さな喋り声も今では聞こえなくなり
休憩時間でさえ、誰もがギスギスとしていた
そんな中 圭は一人受験以外のことを考えていた
どんなに、好きなテレビ 漫画 友人との語らいをしてもどこか心の隙間を感じていた圭は
クラスで友人と話していて、笑い話になった時も 本当は笑えないのに
めんどくさい関係になりたくがない為に作り笑いをした
高校二年生の時、いきなり名前も知らない後輩に告白された
気まずい関係になりたくがない為に好きでもない相手の告白を受けた
もしかしたら彼女ができればこの穴が埋められるかもしれないと考えたからだ
だが現実は
『先輩もう・・・終わりにしませんか?』
『どうして?』
『分かるんです・・・先輩ホントは私の事好きじゃないんだって・・・それが辛いんです』
『そんなことは・・・』
『もう・・・いいんです さようなら』
(どうしてばれたんだろ・・・デートだってした 手もつないだ・・・大事にしてたはずなのに・・・女ってのはめんどくさいんだな)
たった3ヶ月の恋愛だった 隙間は埋まるどころが広がっていった
「何度も言ってるがこの公式はもっとも効率のいい解き方だから 絶対に覚えておくように」
授業中は常に考えことをしていたため内容はまったく頭に入ってこなかった
数学講師はちらりと時計を見た 短針は9で止まっていた
「よし 今日はここまで 日報カードを書いて帰宅してくれ」
受験で覚えることだけを詰め込んだ薄いテキストをかばんに詰め予備校を後にした
自然と駅までの道のりを早足で歩いていた
いつも英単語を覚えるのに費やしていた4つ分の駅移動もずっと今朝のニュースのことを考えていた
(何でだろな、彼女も分かってもらえなかったのか)
電車から降り 一目散に走り 再びあの場所を目指す
どうしても諦めきれなかったのだ
信じたくなかったのだ
全力で走った
風景が早く通り過ぎていく
(まだ衰えてないみたいだな)
荒い呼吸で小さく笑った
「♪・・・」
商店街も3/4進んだ辺りから小さく歌が聞こえた
「!!」
自然と顔がにやけるのがわかった
路地をスピードを殺さず走る
そして
(いてくれた・・・んだ)
一昨日の夜のようにそこには彼女がいた
圭はそれを確認するとほっとしたが
すぐさまその感情は消えた
彼女はダストボックスにもたれ ただただ冬の空に向かい
泣きながら歌っていたのだ
(どうして・・・?)
月光にその涙が光っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。作者のAHIMOです。
書いていて中々主人公が安堵する場面って書けないなーってぼんやり思いけり 早く楽しい思いさせてやりたい
まだまだ序盤だしね これからこれからって思うようにしておこう
この話全行程を10だとするなら 1 5 9 10は考えてるけど
その他の部分がすっかすかなのでちゃんと設定を考えてからあげればよかったといまさら後悔・・・まぁ 今からでも頑張ります