断ち切れぬ連鎖
「それほどまでにわしを倒したいか?」
「今までに色々なものを見てきた。どうしようもないことがあることを知った。お前を倒せば何とかなるかもしれないことだって沢山あるんだ!」
その時、フローラはぴたりと攻撃の手を止めた。クリスもまた、警戒こそしているものの攻撃をするのは止める。
「『運命』というものを知っておるかの、クリス?」
「運命?」
「そう、これは運命じゃ。わしとお主がこうして戦うのは元から決められていることだったのじゃよ」
「決められている、だって……?」
僕は自分の耳を疑った。
「時の流れは未来だけに向かっているわけではない。―――川の水が蒸発し、雨となり我らの元へ来る。わしらの元へ来た水はまた、川へと戻って行く。それと同じことじゃ」
「意味が分からない!!」
僕は剣を振り上げた。彼女はひらりと攻撃をかわす。
「陸上競技のトラックを思い浮かべてみればよい。ひたすら走って、走った先にあるのは何だ? 答えは至極簡単、目の前にあるのはゴールじゃ。じゃが、そのゴールはスタートでもある」
「何が言いたい……?!」
この戦いは何百年も―――いや、何千年も前から繰リ返エサレテイルのじゃよ。
「終わらない戦い。終わらない世界。これこそ究極の美だと思わぬかね?」
「あんたは何を望んでいるんだ。こんな馬鹿げたことをしていて楽しいのか?」
「楽しいとも。もはや死など恐ろしいものではない。わしにとって、死は一時的な眠りのようなもの。わしは不滅を望む! この身体に記憶が留まる限り、わしは不滅なのじゃ!!」
僕たちはかつての記憶を失ったまま戦い続ける。何も思い出せないまま戦う。僕は何のために戦っているんだ。繰り返される戦いをわざわざ続ける必要など、どこにあるのだろう。これこそが、不変というものなのだろうか。繰り返し同じ世界を、同じ時代を生きることが楽しいと思ったことのない僕にとって、それは理解し難いものだった。
「さあクリス、わしを倒すがいい! 終わりなき世界の美しさを再びわしに見せてくれ!!」
その時、僕がとった行動は―――。