汝、光之國へ還りたまへ
「鈴っ!!」
クリスたちが駆けこんできた。玲ははっとして顔を上げた。彼女の傍にはチャールズとフローラがいる。玲は再び俯いた。
「そんな……」
たったそれだけのことで彼らは悟った。レイチェルは耐えられないというように顔を背ける。クリスはチャールズとフローラに目もくれず鈴のところへ行き、心から祈った。
「君に、神の御加護を」
鈴の表情は安らかだった。眠っているのかもしれないと彼らは思いたかった。けれど、それは叶わない夢だ。現実はいつだって厳しい。
「フローラ」
クリスはフローラを睨みつけた。すでに仲間を失った悲しみだとか、こんなことをした『敵』への慈悲だとかの生易しいものは一切なかった。
何も考えないようにしたわけではない。そうしていたのが今までの自分だった。
自暴自棄になったわけでもない。そうなれるほど、僕は子供じゃなかった。
「僕はお前を許さない」
「ほう。光属性の力を失ったお前に何ができるというのじゃ?」
一人じゃ何もできない。この魔女を倒すことなどできやしない、だから。
もしも君がここにいたら何て言うだろう。……やっぱり、無茶なことは止めろと言うのかな。
平和な世界を築くために戦っているわけじゃない。これは無意味な戦いなのかもしれない。僕が今まさに行おうとしていることは、きっと正しくないのだろう。私利私欲のためなんだろうと罵られてもいい、偽善だと言われたって構わない。
彼女を倒すことでメグリヤ、君が救われるのなら。
『彼ら』を倒すことで『君たち』が救われるのなら、正しくても正しくなくてもどっちだっていい。
神様、あなたが残酷なのではない。あなたを残酷な神様に仕上げたのは僕自身だった。
僕に与えられた力が何のためにあったのか今更分かったんだ。そう、それは―――。
「何っ?!」
フローラは寸前で攻撃をかわした。僕は聖剣を両手で持ち直した。
「力を失っているわけではないんだよ、残念ながら」
「ふん。ならば、わしに油断させようとしたわけか?」
フローラは嘲笑いながら魔法弾を放った。僕はそれを剣で弾き返す。
何かを誤魔化すことはもう御免だ。だからこう言う。
「あんたを殺してやりたかったからだ!」
全ての始まりはこいつだ。こいつが元凶だったんだ―――。