番外編 玲ver.
宗教的なものではありません。作者は神を否定してはいません。
どうしてこうなってしまったのだろう。それは最初に浮かんだ言葉―――。
初めはただ泣き叫んでいた。
「玲……?」
彼が私を呼ぶ。……ああ、良かった。
けれど彼が生きていることを確認した途端、不安が襲ってくる。
「鈴っ……!!」
彼は死んでしまうのか。文字にすれば、それはたったの11文字。その11文字は、私にとって薄っぺらい意味でしかなかった。人はいずれ死ぬ、それは当たり前のことだから。
だけど、こんなのってないよ。
「泣いているの? 玲……」
鈴は可笑しそうにクスっと笑った。その目は焦点が合っていなかった。彼はもう目が見えないのだと気付くのにどれだけの時間を用いたことか。
「泣いてなんか……!!」
心配をかけてはいけないのだと誰かが告げた。せめて、今この時だけでも―――。
「最後まで迷惑かけて、ごめん」
どうしてそんなことを言うの。どうして笑っているの。どうして君は。
「迷惑じゃない。迷惑じゃないよ、鈴」
「そっ……か」
ゆっくりと目を閉じる君。その表情はどこか幸せそうに見えた。
「ありがとう」
愛おしくて仕方ない私の片割れ。
神様、どうしてあなたは大切なものを奪ってしまうのですか。
神様、どうしてあなたは残酷なのですか。
神様、あなたは誰も助けない。
神様、あなたは誰も救わない。
あなたが全て仕向けたのでしょう? 神様。
私はあなたを憎みます。
私はあなたを赦さない。
例えそれが、あなたの思い通りだったとしても。