クリスチアナの過去3
クリス(子供ver.)視点です。
兄ちゃんたちと離れ離れになってから四年経った。
「金髪で翡翠の瞳を持つ子はいる?」
「おんや、クラウディさんトコの嬢さんじゃねえか。金髪で翡翠の、どんな奴がいいんだ? 年齢は?」
「そうねぇ……」
ここには性根腐った金持ちばかりがやって来る。極稀に本当に親切な人が混じっているけれど、大概はロクでもないことを考えているヤツばかりだ。
「まったく、こんなことが平然と行われているなんて世も末だねえ」
「ブラウニーさん」
吐き捨てるように言ったのは隣にいる女の人だった。彼女も奴隷の烙印を押されていた。けれど、彼女は他の連中と違って『まとも』な感覚を持っている。
「あんたも大変だね、子供だってのに。まあ、それはあんただけじゃないけどさ。ここにはあんたと同じ境遇の子がうじゃうじゃいる。腐った奴らもね」
ブラウニーさんは『クラウディさんトコの嬢さん』と取引をしている商人を睨みつけた。ちょうどその時、商人がこちらへ向かってくる。
「出ろ」
商人はブラウニーさんを引っ張って行ってしまった。ブラウニーさんは一瞬だけ振り返り、「神の御加護を」と声を出さずに言った。彼女は―――たとえそれがハリボテのまがないものだったとしても―――自由を得たのだ。
悲しんではいけない。これは、喜ぶべきことなんだ。
―――ずいぶん後で知ったことだけど、ブラウニーさんはまだ12歳だった。ボクにはとてもそうには見えなかった。
「おい、知っているか?」
「ああ、知ってる知ってる。明日、お姫サマが来るんだろ?」
光の楽園からお姫さまがやってくる。ボクと同じ部屋―――牢屋、と言った方が合っているかも―――にいる連中がずっと噂していた。
「こんなところに来るなんて、物好きなお姫サマだな」
「ったりめーだ。何てったって、あの皇帝サマの愛娘だぜ? 慈愛なんかこれっぽちもねえよ。オレたちを見下すために貴族やら王族やらはここにやって来るのさ」
「息子も来るらしいぞ」
「あのクソ生意気なガキか。あいつがこの国を担うのか」
「分かんねえぞ。もしかしたら革命が起こるかもしれねえ」
「フン。お前の話が実現したとしたら、革命を起こしたそいつはヒーローか化け物のどちらかに違いねえな。ま、どちらにしろオレたちには関係ねえ話だが」
見張りに気付かれないよう声を抑えて話しているせいか、彼らはまるで悪だくみをしているように見える。ボクは彼らに背を向け、寝たふりをしていた。ボクと同い年の奴が些細なことで彼らに目をつけられ、溜まるばかりのストレスを発散する道具にされていたのをボクは知っている。その後、そいつがどうなったかなんて言うまでもない。
光の楽園から来るお姫さま。お姫さまが高貴なる存在だということを兄ちゃんから教えてもらったが、果たしてそいつが本当に高貴な奴かどうかは不明だった。
どちらにせよ、ここにいる連中はどうしようもない奴らばかりだ。